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埋蔵金(1)伝説の山
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宝探し、埋蔵金。ワクワクする響きの言葉で、子供の頃は自分も見つけられないかと思った人も多いだろう。徳川埋蔵金伝説や旧日本軍の隠し財産なども、何度もテレビで、探して掘ってみるという企画があった。
その山にも、埋蔵金伝説はあった。ただし、そんなに大した額ではない。戦国時代、ここを治めていた城主は、落ち延びる際に、なけなしの金品をこの山に隠したという記述が残っていたのだ。
ロマンに燃える人達が調査し、掘り出したのは、戦後間もなくの事だったらしい。
出て来たのは、貧乏城主に相応しく微々たるもので、箱から出て来たものの大半は、手紙や本の類だったという。
掘り出した者達はガッカリしただろうが、貴重な文献であることには間違いがない。確かにそれはお宝であり、市がキッチリと保管している。
その大学の探検部と名乗るレクリエーション部は、本気でお宝がまだ眠っていると考えてその山へ来たのではない。そういう山にハイキングに来たというのが実情だった。
だから、無念のうちに死に絶えた城主一家と家来達を弔う慰霊碑の前で写真を撮った後、行方不明になった部員が、一心不乱に穴を掘っている所を発見された時は、喜びといぶかしさが半々だったという。
「埋蔵金か。ロマンはあるがなあ」
御崎 怜。元々、感情が表情に出難いというのと、世界でも数人の、週に3時間程度しか睡眠を必要としない無眠者という体質があるのに、高校入学直前、突然、霊が見え、会話ができる体質になった。その上、神殺し、神喰い、神生み等の新体質までもが加わった霊能師であり、キャリア警察官でもある。面倒臭い事はなるべく避け、安全な毎日を送りたいのに、危ない、どうかすれば死にそうな目に、何度も遭っている。
「その手のテレビも、最近見なくなったよねえ」
町田 直、幼稚園からの親友だ。要領が良くて人懐っこく、脅威の人脈を持っている。高1の夏以降、直も、霊が見え、会話ができる体質になったので本当に心強い。だがその前から、僕の事情にも精通し、いつも無条件で助けてくれた大切な相棒だ。霊能師としては、祓えないが、屈指の札使いであり、インコ使いである。そして、キャリア警察官でもある。
「まあ、見付からないまま終わるので、いつも結末は一緒だしね」
徳川一行。飄々として少々変わってはいるが、警察庁キャリアで警視長。なかなかやり手で、必要とあらば冷酷な判断も下す。陰陽課の生みの親兼責任者で、兄の上司になった時からよくウチにも遊びに来ていたのだが、すっかり、兄とは元上司と部下というより、友人という感じになっている。
「その山は、一応はもう見付けた後でしょう?もう無いと思うだろうに」
「いや、怜。本当にあったから、分けてもっと埋めてある筈とか思ったのかもねえ」
考えていたが、徳川さんが、
「まあ、様子がおかしいらしい。衰弱が酷いのに、それでもまだ掘ろうとしていたそうだし、今もそんな感じらしいよ。まるで何かに憑りつかれたかのように」
と言う。
「ふうん。何があったんだろう。
とにかく、入院中のその部員に会って来ます」
「そうと決まれば、下調べだねえ」
僕と直は、早速準備を始めた。
病室は彼らだけに1室を当てられていて、残りの4つは空いたままだった。入院患者がいないせいではないらしいというのは、入ってすぐにわかった。
部員はどちらも2年生男子で、磯貝文明と、大島洋行だ。2人共痩せこけて、顔色も土気色で、虚ろな目を見開いて宙を見つめ、
「掘らないと。掘らないと。掘らないと」
と繰り返している。
それはとても正気とは思えず、誰もが同室になるのを嫌がったとしか思えない不気味さがあった。
「磯貝さん、大島さん」
呼びかけても反応はない。
そばに立つ白衣の主治医は、難しい顔で溜め息をついた。
「ずっとこうです。名前も言えず、捜索に来ていた人の中に山に入る前に彼らが立ち寄った食堂の御主人がいて、そうだとわかったんです。
衰弱が激しく、指先の爪は剥がれ、肉もそげているのに、痛がる様子もない。精神に異常をきたしているとしか思えませんね」
彼らはその声も耳に入っていないのか、呟き続けているだけだった。
その山にも、埋蔵金伝説はあった。ただし、そんなに大した額ではない。戦国時代、ここを治めていた城主は、落ち延びる際に、なけなしの金品をこの山に隠したという記述が残っていたのだ。
ロマンに燃える人達が調査し、掘り出したのは、戦後間もなくの事だったらしい。
出て来たのは、貧乏城主に相応しく微々たるもので、箱から出て来たものの大半は、手紙や本の類だったという。
掘り出した者達はガッカリしただろうが、貴重な文献であることには間違いがない。確かにそれはお宝であり、市がキッチリと保管している。
その大学の探検部と名乗るレクリエーション部は、本気でお宝がまだ眠っていると考えてその山へ来たのではない。そういう山にハイキングに来たというのが実情だった。
だから、無念のうちに死に絶えた城主一家と家来達を弔う慰霊碑の前で写真を撮った後、行方不明になった部員が、一心不乱に穴を掘っている所を発見された時は、喜びといぶかしさが半々だったという。
「埋蔵金か。ロマンはあるがなあ」
御崎 怜。元々、感情が表情に出難いというのと、世界でも数人の、週に3時間程度しか睡眠を必要としない無眠者という体質があるのに、高校入学直前、突然、霊が見え、会話ができる体質になった。その上、神殺し、神喰い、神生み等の新体質までもが加わった霊能師であり、キャリア警察官でもある。面倒臭い事はなるべく避け、安全な毎日を送りたいのに、危ない、どうかすれば死にそうな目に、何度も遭っている。
「その手のテレビも、最近見なくなったよねえ」
町田 直、幼稚園からの親友だ。要領が良くて人懐っこく、脅威の人脈を持っている。高1の夏以降、直も、霊が見え、会話ができる体質になったので本当に心強い。だがその前から、僕の事情にも精通し、いつも無条件で助けてくれた大切な相棒だ。霊能師としては、祓えないが、屈指の札使いであり、インコ使いである。そして、キャリア警察官でもある。
「まあ、見付からないまま終わるので、いつも結末は一緒だしね」
徳川一行。飄々として少々変わってはいるが、警察庁キャリアで警視長。なかなかやり手で、必要とあらば冷酷な判断も下す。陰陽課の生みの親兼責任者で、兄の上司になった時からよくウチにも遊びに来ていたのだが、すっかり、兄とは元上司と部下というより、友人という感じになっている。
「その山は、一応はもう見付けた後でしょう?もう無いと思うだろうに」
「いや、怜。本当にあったから、分けてもっと埋めてある筈とか思ったのかもねえ」
考えていたが、徳川さんが、
「まあ、様子がおかしいらしい。衰弱が酷いのに、それでもまだ掘ろうとしていたそうだし、今もそんな感じらしいよ。まるで何かに憑りつかれたかのように」
と言う。
「ふうん。何があったんだろう。
とにかく、入院中のその部員に会って来ます」
「そうと決まれば、下調べだねえ」
僕と直は、早速準備を始めた。
病室は彼らだけに1室を当てられていて、残りの4つは空いたままだった。入院患者がいないせいではないらしいというのは、入ってすぐにわかった。
部員はどちらも2年生男子で、磯貝文明と、大島洋行だ。2人共痩せこけて、顔色も土気色で、虚ろな目を見開いて宙を見つめ、
「掘らないと。掘らないと。掘らないと」
と繰り返している。
それはとても正気とは思えず、誰もが同室になるのを嫌がったとしか思えない不気味さがあった。
「磯貝さん、大島さん」
呼びかけても反応はない。
そばに立つ白衣の主治医は、難しい顔で溜め息をついた。
「ずっとこうです。名前も言えず、捜索に来ていた人の中に山に入る前に彼らが立ち寄った食堂の御主人がいて、そうだとわかったんです。
衰弱が激しく、指先の爪は剥がれ、肉もそげているのに、痛がる様子もない。精神に異常をきたしているとしか思えませんね」
彼らはその声も耳に入っていないのか、呟き続けているだけだった。
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