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夏休みのキャンプ場(2)これは、仕事です
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天気は上々。いい、出張日和だ。
食料品などはこれから買うが、仕込んでいく材料はクーラーボックスに詰めて来たし、色々なグッズも抜かりはない。
「忘れ物はないな?」
訊くと、甥の敬、隣の康介が、揃って元気よく手を挙げて返事をする。
「はあーい!」
「おやつと水筒、ハンカチもあるか?」
「あるぅ!」
「じゃあ、もう1回。注意する事は?」
「勝手に走り出して迷子にならない!」
「よし。じゃあ、出発!」
「出発!!」
新幹線から降りた僕達は、ぞろぞろと歩き出した。
僕と直以外にも、兄、冴子姉、敬、千穂さん、京香さん、康二さん、康介、それに美里もいる。
美里は話をしてみると「絶対に行く!スケジュールは何としても空ける!」と言い、その通りにした。そして敬も、大好きな美里ちゃんが一緒で、尚機嫌がいい。
レンタカーはワゴンとセダンで、セダンには打ち合わせの都合もあり、僕、直、兄、京香さんが乗る。
「何か、本当にいいの?」
双龍院京香。僕と直の師匠で、隣に住んでいる。大雑把でアルコール好きな残念な美人だが、面倒見のいい、頼れる存在だ。
「上の許可も出てますしね」
「家族連れのところにしか出ないみたいなんですよねえ」
「京香さんは、僕と直が離れる時に、皆のガードをお願いします」
僕と直が言うと、京香さんは
「OK、わかったわ」
と、霊能師の顔で頷いた。
「俺まで出張扱いになったが、いいんだろうか」
御崎 司。頭脳明晰でスポーツも得意。クールなハンサムで、弟から見てもカッコいい、ひと回り年上の頼れる自慢の兄である。両親が事故死してからは親代わりとして僕を育ててくれ、感謝してもしきれない。警察庁キャリアで、警視正だ。
兄はそう言うが、僕と直は、キッパリと言う。
「問題ないよ」
「そうそう。家族連れにしか調査できないんだしねえ。捜査協力だねえ」
「兄ちゃんには時々、何か誘導を頼むかも知れない。そっちに近付くなとか、あっちに行こうとか、皆と離れて僕と直だけ何かをするかも知れない。そういう時、上手く誘導して欲しい」
「わかった」
「それ以外は、普通にキャンプを楽しんでて、2人共」
「もう、ご飯が待ち遠しいねえ」
買い物をし、途中で弁当を買い、キャンプ場に着いたのは、ちょうど昼頃だった。
今のところ、不穏なものは感じられない。コテージも、一番最後に訴えのあった家族が泊ったもので、念の為に良く視てみたが、異常はない。
「さあ、荷物を運ぶわよ。敬と康介君は、お弁当を運んでちょうだいね」
御崎冴子。姉御肌のさっぱりとした気性の兄嫁だ。母子家庭で育つが母親は既に亡く、兄と結婚した。
「これ、冷蔵庫に入れたらいいのね」
霜月美里、若手ナンバーワンのトップ女優だ。演技力のある美人で気が強く、遠慮をしない発言から、美里様と呼ばれている。
美里がクーラーボックスを持つと、
「あ、これもですね」
と千穂さんも野菜の袋を手にする。
町田千穂、旧姓舞坂。交通課の警察官だ。仕事ではミニパトで安全且つ大人しい運転をしなければいけないストレスからなのか、オフでハンドルを握ると別人のようになってしまうスピード狂だ。直よりも1つ年上だ。
「あ、重いからこっちを。それはぼくが持ちますよ」
康二さんが言い、軽い荷物を頼む。京香さんの夫だ。
皆でまずは片付け、ご飯を食べ、早速探検に出掛ける。
吊り橋は、落ちないようにネットがかけてあるが、揺れるし、下が見える。敬も康介も怖がるかと思いきや、大喜びだ。千穂さんと美里は手を取り合ってへっぴり腰で、京香さんと冴子姉は、流石の肝っ玉ぶりだ。兄と康二さんは、はしゃぐ敬と康介に、あんまり揺らすのも走るのも危ないと、適当にやめさせるのに大変だった。
僕と直はさりげなく先行し、吊り橋のへりに捕まって足首を捕まえようと狙っている霊を祓って歩いた。
トンネルでは地元の人の霊がいたが、ただ歩いているだけなので、放っておく。
ここでも、足音や声が響くのを面白がって、敬と康介は、
「わっ」
「わああーっ」
と声を出したり、手を叩いたりしてはしゃいでいた。
トンネルを出たところには慰霊碑があり、数年前の大雨でここにあった村が流されて全滅した際の被害者のために建てられたものだった。
その先は細い道があったが、少し先は崖で行き止まりになっていた。大雨の前は、この先に集落があったと資料で読んだ。
「大丈夫そうだな」
「だねえ」
村のあった方を見透かすようにして、僕と直は小声で言い合う。
「村の犠牲者というわけじゃないのかしら」
京香さんも隣に来て小声で言う。
「橋の所で引きずり込もうとしていたのは祓ったけど、あれがやったのかな?」
「晩に何も出なかったら、あれってことかねえ」
「要、観察ってところね」
言い合って、戻る事にした。
まだ、油断はできない。
食料品などはこれから買うが、仕込んでいく材料はクーラーボックスに詰めて来たし、色々なグッズも抜かりはない。
「忘れ物はないな?」
訊くと、甥の敬、隣の康介が、揃って元気よく手を挙げて返事をする。
「はあーい!」
「おやつと水筒、ハンカチもあるか?」
「あるぅ!」
「じゃあ、もう1回。注意する事は?」
「勝手に走り出して迷子にならない!」
「よし。じゃあ、出発!」
「出発!!」
新幹線から降りた僕達は、ぞろぞろと歩き出した。
僕と直以外にも、兄、冴子姉、敬、千穂さん、京香さん、康二さん、康介、それに美里もいる。
美里は話をしてみると「絶対に行く!スケジュールは何としても空ける!」と言い、その通りにした。そして敬も、大好きな美里ちゃんが一緒で、尚機嫌がいい。
レンタカーはワゴンとセダンで、セダンには打ち合わせの都合もあり、僕、直、兄、京香さんが乗る。
「何か、本当にいいの?」
双龍院京香。僕と直の師匠で、隣に住んでいる。大雑把でアルコール好きな残念な美人だが、面倒見のいい、頼れる存在だ。
「上の許可も出てますしね」
「家族連れのところにしか出ないみたいなんですよねえ」
「京香さんは、僕と直が離れる時に、皆のガードをお願いします」
僕と直が言うと、京香さんは
「OK、わかったわ」
と、霊能師の顔で頷いた。
「俺まで出張扱いになったが、いいんだろうか」
御崎 司。頭脳明晰でスポーツも得意。クールなハンサムで、弟から見てもカッコいい、ひと回り年上の頼れる自慢の兄である。両親が事故死してからは親代わりとして僕を育ててくれ、感謝してもしきれない。警察庁キャリアで、警視正だ。
兄はそう言うが、僕と直は、キッパリと言う。
「問題ないよ」
「そうそう。家族連れにしか調査できないんだしねえ。捜査協力だねえ」
「兄ちゃんには時々、何か誘導を頼むかも知れない。そっちに近付くなとか、あっちに行こうとか、皆と離れて僕と直だけ何かをするかも知れない。そういう時、上手く誘導して欲しい」
「わかった」
「それ以外は、普通にキャンプを楽しんでて、2人共」
「もう、ご飯が待ち遠しいねえ」
買い物をし、途中で弁当を買い、キャンプ場に着いたのは、ちょうど昼頃だった。
今のところ、不穏なものは感じられない。コテージも、一番最後に訴えのあった家族が泊ったもので、念の為に良く視てみたが、異常はない。
「さあ、荷物を運ぶわよ。敬と康介君は、お弁当を運んでちょうだいね」
御崎冴子。姉御肌のさっぱりとした気性の兄嫁だ。母子家庭で育つが母親は既に亡く、兄と結婚した。
「これ、冷蔵庫に入れたらいいのね」
霜月美里、若手ナンバーワンのトップ女優だ。演技力のある美人で気が強く、遠慮をしない発言から、美里様と呼ばれている。
美里がクーラーボックスを持つと、
「あ、これもですね」
と千穂さんも野菜の袋を手にする。
町田千穂、旧姓舞坂。交通課の警察官だ。仕事ではミニパトで安全且つ大人しい運転をしなければいけないストレスからなのか、オフでハンドルを握ると別人のようになってしまうスピード狂だ。直よりも1つ年上だ。
「あ、重いからこっちを。それはぼくが持ちますよ」
康二さんが言い、軽い荷物を頼む。京香さんの夫だ。
皆でまずは片付け、ご飯を食べ、早速探検に出掛ける。
吊り橋は、落ちないようにネットがかけてあるが、揺れるし、下が見える。敬も康介も怖がるかと思いきや、大喜びだ。千穂さんと美里は手を取り合ってへっぴり腰で、京香さんと冴子姉は、流石の肝っ玉ぶりだ。兄と康二さんは、はしゃぐ敬と康介に、あんまり揺らすのも走るのも危ないと、適当にやめさせるのに大変だった。
僕と直はさりげなく先行し、吊り橋のへりに捕まって足首を捕まえようと狙っている霊を祓って歩いた。
トンネルでは地元の人の霊がいたが、ただ歩いているだけなので、放っておく。
ここでも、足音や声が響くのを面白がって、敬と康介は、
「わっ」
「わああーっ」
と声を出したり、手を叩いたりしてはしゃいでいた。
トンネルを出たところには慰霊碑があり、数年前の大雨でここにあった村が流されて全滅した際の被害者のために建てられたものだった。
その先は細い道があったが、少し先は崖で行き止まりになっていた。大雨の前は、この先に集落があったと資料で読んだ。
「大丈夫そうだな」
「だねえ」
村のあった方を見透かすようにして、僕と直は小声で言い合う。
「村の犠牲者というわけじゃないのかしら」
京香さんも隣に来て小声で言う。
「橋の所で引きずり込もうとしていたのは祓ったけど、あれがやったのかな?」
「晩に何も出なかったら、あれってことかねえ」
「要、観察ってところね」
言い合って、戻る事にした。
まだ、油断はできない。
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