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夏休みのキャンプ場(3)川
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ジッパー付きの袋に牛乳、砂糖、バニラエッセンスを入れ、大きいジッパー付き袋に氷と塩を入れ、そこに埋まるように材料を入れた方の袋を入れ、タオルで巻いて丸いボール状にした。
「じゃあ、これを今度は投げたり転がしたりしてくれるか?美味しいものが出来上がるぞ」
敬と康介は目を輝かせた。
「何?」
「何なの?」
「お楽しみ。
じゃあ、頼んだよ」
兄と京香さんに合図をして、僕と直は、川沿いに上流に歩いて行く。さっき橋から見たら、飛び込んだ人や落ちた人の霊が、数体残っていたのだ。
「じゃあ、爆弾ごっこだな。しりとりをして、言ったら次の人に転がす。5秒以上持ってたら、爆発だぞ」
「きゃあ、爆発!」
きゃっきゃと笑って、兄の提案で、輪になってしりとりを始めた。
自殺者も、先に祓った霊によって落とされた人も、皆、頭が割れ、体が変な方にねじ曲がったりしていている。
「もう、逝きましょうか」
「ここにいても、仕方がないですからねえ」
彼らをきれいに祓う。
「意外とたくさんいるな、ここ」
「よくこれで、キャンプ場が繁盛してるねえ」
言いながら、戻って行く。
「ゴリラ!」
「ラ、ラ、ランドセル!」
「ルビーは言ったし、ルービックキューブ!」
「ぶりかま!」
康介、渋すぎる。
そろそろどうかな。
「あ、怜!あのね、ぼく、1回爆発したの」
「でも、いっぱい転がしたよ?できた?」
「どうかな」
タオルを開くと、ちゃんと固まっている。
「ん?これは何?」
「何でしょう。敬も康介も、大好きなものだねえ」
「じゃあ、おやつにしよう。コテージに戻ろうか」
皆でコテージに向かう。
「美里。大丈夫か?日焼けしてないか?」
「大丈夫よ。日焼け止めは塗ってあるし。楽しいわあ。いい夏休みになった!」
「千穂ちゃんも、大丈夫かねえ?」
「大丈夫!美里様――いえ、美里ちゃんがこんなに気さくとは知らなかったけど、嬉しいです」
様を禁止してあるのだ。
「一応、あんまり外には触れ回らないでねえ?」
「勿論!」
2人も、すっかりと仲良くなったようで安心した。
コテージでは敬と康介が各々父親に手をつながれて、
「怜、直、早く早く!」
と催促している。
袋から出したそれを器に盛り、缶詰のフルーツ、自家製黒蜜、黄粉、自家製カラメルソース、砕いたナッツをトッピングとして並べる。
「はい。皆で作ったのは、アイスクリームでした」
「アイスクリーム!?」
「うわあ!」
敬と康介が、自分で作ったというアイスに目を輝かせる。
「好きなのをかけてどうぞ」
冴子姉と京香さんが、敬と康介のものにフルーツを添え、
「パイナップルいっぱいちょうだい、お母さん」
だの、
「さくらんぼ!」
だのというリクエストに応えている。
「美味しーい!」
「黒蜜黄粉、いいわ!」
「うん。カラメルソースとナッツ、いいな」
「お父さん、一口!」
ワイワイとおやつを食べながら、京香さんに、橋から落ちて死んだ人の霊は祓った事を伝えておく。
「さあ、川に行こうか。敬、康介、着替えに行くぞ」
「はあい!」
兄と康二さんに連れられて、2人は部屋へ走って行く。
「怜と直はどうするの?」
美里が訊く。
「僕は晩御飯の下準備」
楽しくてしょうがない。
「ボクがいても手伝うことが無いし、川辺にいようかねえ」
「千穂さんと釣りに行ってもいいぞ。200メートル程下流に管理釣り場があるらしいし。
そうだ。コテージの中に結界を一応張っておいてくれないか」
「了解だねえ」
「美里ちゃんは怜君を手伝っててもらおうかしら」
冴子姉と京香さんは、
「ご飯が楽しみねえ」
「今夜はバーベキューね。ビールね」
と浮き輪を膨らませ始めた。
決戦は今夜。浮き立つ空気の中、僕と直と京香さんは、密かにそう、気を引き締めた。
「じゃあ、これを今度は投げたり転がしたりしてくれるか?美味しいものが出来上がるぞ」
敬と康介は目を輝かせた。
「何?」
「何なの?」
「お楽しみ。
じゃあ、頼んだよ」
兄と京香さんに合図をして、僕と直は、川沿いに上流に歩いて行く。さっき橋から見たら、飛び込んだ人や落ちた人の霊が、数体残っていたのだ。
「じゃあ、爆弾ごっこだな。しりとりをして、言ったら次の人に転がす。5秒以上持ってたら、爆発だぞ」
「きゃあ、爆発!」
きゃっきゃと笑って、兄の提案で、輪になってしりとりを始めた。
自殺者も、先に祓った霊によって落とされた人も、皆、頭が割れ、体が変な方にねじ曲がったりしていている。
「もう、逝きましょうか」
「ここにいても、仕方がないですからねえ」
彼らをきれいに祓う。
「意外とたくさんいるな、ここ」
「よくこれで、キャンプ場が繁盛してるねえ」
言いながら、戻って行く。
「ゴリラ!」
「ラ、ラ、ランドセル!」
「ルビーは言ったし、ルービックキューブ!」
「ぶりかま!」
康介、渋すぎる。
そろそろどうかな。
「あ、怜!あのね、ぼく、1回爆発したの」
「でも、いっぱい転がしたよ?できた?」
「どうかな」
タオルを開くと、ちゃんと固まっている。
「ん?これは何?」
「何でしょう。敬も康介も、大好きなものだねえ」
「じゃあ、おやつにしよう。コテージに戻ろうか」
皆でコテージに向かう。
「美里。大丈夫か?日焼けしてないか?」
「大丈夫よ。日焼け止めは塗ってあるし。楽しいわあ。いい夏休みになった!」
「千穂ちゃんも、大丈夫かねえ?」
「大丈夫!美里様――いえ、美里ちゃんがこんなに気さくとは知らなかったけど、嬉しいです」
様を禁止してあるのだ。
「一応、あんまり外には触れ回らないでねえ?」
「勿論!」
2人も、すっかりと仲良くなったようで安心した。
コテージでは敬と康介が各々父親に手をつながれて、
「怜、直、早く早く!」
と催促している。
袋から出したそれを器に盛り、缶詰のフルーツ、自家製黒蜜、黄粉、自家製カラメルソース、砕いたナッツをトッピングとして並べる。
「はい。皆で作ったのは、アイスクリームでした」
「アイスクリーム!?」
「うわあ!」
敬と康介が、自分で作ったというアイスに目を輝かせる。
「好きなのをかけてどうぞ」
冴子姉と京香さんが、敬と康介のものにフルーツを添え、
「パイナップルいっぱいちょうだい、お母さん」
だの、
「さくらんぼ!」
だのというリクエストに応えている。
「美味しーい!」
「黒蜜黄粉、いいわ!」
「うん。カラメルソースとナッツ、いいな」
「お父さん、一口!」
ワイワイとおやつを食べながら、京香さんに、橋から落ちて死んだ人の霊は祓った事を伝えておく。
「さあ、川に行こうか。敬、康介、着替えに行くぞ」
「はあい!」
兄と康二さんに連れられて、2人は部屋へ走って行く。
「怜と直はどうするの?」
美里が訊く。
「僕は晩御飯の下準備」
楽しくてしょうがない。
「ボクがいても手伝うことが無いし、川辺にいようかねえ」
「千穂さんと釣りに行ってもいいぞ。200メートル程下流に管理釣り場があるらしいし。
そうだ。コテージの中に結界を一応張っておいてくれないか」
「了解だねえ」
「美里ちゃんは怜君を手伝っててもらおうかしら」
冴子姉と京香さんは、
「ご飯が楽しみねえ」
「今夜はバーベキューね。ビールね」
と浮き輪を膨らませ始めた。
決戦は今夜。浮き立つ空気の中、僕と直と京香さんは、密かにそう、気を引き締めた。
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