ディメンション・アクシデント

JUN

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次元が違えど

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 戦争。それがどういうものかわからない者はいないだろう。なのに、どれだけ文明が成熟しようとも、戦争が起こるものらしい。
 そこにヒトがいる限り。
「ダイガとミンサがとうとう開戦に踏み切ったか」
 セレエが端末を消して言った。
「ダイガがザイネの次元移送技術を発展させて――と言うのもどうかと思うが、宣戦布告後にミンサ上空に爆弾を送り込んだらしいな」
「やり方がどうにもえげつないであるな」
「同じ事をミンサもできるとは思わないのかねえ。ミンサはこのアクシルと共同で宇宙次元移送を研究してたってのに」
「泥沼の予感しかしないわよ、私」
「世界中がそれをやりだしたらどうなるの」
「地球の核兵器みたいなものだな。
 使えば大打撃を与えられるが、報復で使われたらこっちも大打撃。持っているぞ、使うぞってチラつかせて政治に使うようになるだろう。近いうちに禁止条約でも世界中で結んで」
「地球って、そんなところなのかあ」
 喋っているうちに、次元震観測のサイレンだ。
「その前に、こっちが忙しくなるわねえ」
「たまらんであるな」
 溜め息をつきながら、皆は車に駆け込んだ。

 今日の相手はカニもどきだった。ロブスターに足が8本生えている。
「カニ?ロブスター?どっちも美味しいのに、合体すると気持ち悪い」
 篁文が嫌そうに言った。
「でかいな」
「その上硬いである!」
 スティックですらもどうにかこうにかという硬さだ。銃は、甲羅に弾かれた。
「少ないのが救いだな。
 パセは後ろから、ビロビロでてくる昆布みたいなやつを銃で頼む」
「わかったわ」
「わああ!カニのくせに縦に歩くよ篁文!」
「ロブなら縦だしな」
 言いながら、各々カニもどきと昆布にとりかかる。
 今日は雄叫びを上げるやつがいないので、警官も離れた所から見ていた。
 どうにか出て来たものは始末し、次元の裂け目も閉じる。
「疲れる……」
 セレエも紗希も、今回は単なる力勝負みたいなものだったので、カニもどきを刺しまくっていた。ひっくり返して腹側を狙えば柔らかいと気付いたのは紗希だ。
「紗希、お手柄だったわねえ」
「えへへ」
「さすが、フードファイター志望」
「違うって言ってるでしょうが!」
 言っていると、車に乗り込もうとしたところで、新たな次元震の報告だ。
「忙しいであるな」
「気を入れ直して行こうか」
 皆は慌ただしく次の現場に向かった。

 檻の向こうは、まだ安定していなかった。
「これ、1つじゃないよね」
 歪んで見える景色が、3種類ある。
「何が出て来るんだ?」
「お楽しみに」
「楽しみにできねえぞ、篁文」
 やがて、太さが太ももくらいの蛇が這い出して来た。
 別の所からは、猫くらいのネズミが出て来る。
「ギャアアアア!!」
 紗希とパセが仲良く抱き合って悲鳴を上げた。
「ああ、くそ!銃は効くだろ。お前らは外に出てろ」
 セレエが銃を構えながら青い顔で言った。
「大丈夫か」
「ま、まあな。ドルメ、平気そうだな」
「うむ。こういうのは向こうにもいて、よく退治に行ったものであるよ」
「へえ。心強いな」
「後で、ヘビはスープに、ネズミは焼肉にしたであるが、なかなかヘビはうまかったであるよ」
「へ、へえ。そうなのか。今回は、食べないからな」
「残念である」
 そして、掃討に移った。
 柵にネズミや蛇の体がぶつかるので、叫びながら紗希が刺し、パセも涙目で切る。
 そしてその合間に、蛇が
「シャアア!!」
と威嚇し、警戒している警官が倒れる。
 狭い檻の中は、大騒ぎだ。
 その時、やっと3つ目の景色が安定して定着した。高いビルが向こうに林立した都市の、公園だろうか。こちらに入って来るものはいない。
 それをチラッと見て安心したが、セレエが棒立ちになっていた。
「セレエ?」
「デルザ……デルザの、公園だ」
 信じられないというように、セレエが呟く。
 全員、そちらに気を取られた。
 と、蛇の尾がブンと振られる。
「危ない!」
 篁文はセレエを次元の急け目の方へ蹴り飛ばし、蛇に銃を向けた。
 膨張する蛇の体の向こうに、顔面から芝生のような地面に突っ込んで行くセレエが見え、バンと蛇が弾けた後には、もう、デルザは揺らいで消えて行くところだった。
 残った蛇の上半身とネズミを片付けながら、ドルメが楽しそうに笑う。
「危なかったであるな!」
「いやあ、とっさに蹴り飛ばしてしまったなあ」
 笑いながら残りを片付け、檻を解除した。

 報告をし、4人で夕食のテーブルを囲む。
「今日もお疲れ様。それと、セレエに」
「セレエに」
「セレエに」
「セレエに」
 紅茶の入ったグラスをぶつけ合ったのだった。





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