上 下
32 / 48
2章 Queen ANT (アリの女王編)

33. MILKY GUYS

しおりを挟む
『自爆まであと120秒…総員退避!総員退避!』

 室内の警告音が尚一層激しくなる。

『その少年とはどうやら時空を超えた非言語的コミュニケーション能力で共感していたらしい。』

「時空を超えた非言語的コミュニケーション能力?」

『ああ、その少年の持つ魔法アニマの性質は知っているか?彼の魔法アニマは自分以外の全てのモノの時の流れを緩やかにすると言う能力。』

「駿以外の全てのモノ?」

『ああ…その通り!そして我々アリの思念波による会話能力によりこの少年と娘は一瞬のうちに相手の本質を理解し、共感して心を通わせた。』

「⁈駿と女王アリ2が…駿は素早く動けるのでは無く我々の動きがゆっくりになってるって事か?」と堂島が聞き返す。

『ああ、だが決して我々の時が止まってる訳では無く彼の目から見た体感として我々の動きが見えていると言うことだ。』

「つまり…駿自身の動きは普通でも周りの時間が見えていると言う事か?」

『ああ、その通りだ。その少年は魔法あにまの発動によって全てのモノの動きを10000分の1、もしくはそれ以下に抑える事が出来る。それはもう時間が止まってるのと何(なん)ら変わらんよ!』

「それが本当だとしたらいわばAVの時間を止めるストップウォッチなる物を使わずに出来るって事で間違い無いんだな?」

『ああ、AVの時間を止めるストップウォッチなる物が何か知らんけど、童貞野郎の考えそうな事だな…その通りだ!』

「すごいな!童貞に手厳しいな!しかしそれが本当なら色々やり放題じゃ無いか!」

『ああ、彼が魔法アニマを発動させてる時の彼の動きは常人には決して捉えられまい。』

「LINEに一瞬で長文を打ち込めたり大量のスタンプを送ったり出来たのもこの魔法アニマによる能力か?」

『LINEやスタンプてのが何か知らんけど!その通りだ!』

「駿は元々LINEの打ち込みが早かったが更にこの魔法アニマを使う事でこんなにも大量の文字が一瞬で打てるということか…」

『ああLINEってのは知らんけど…その通りだ。』

「なるほど!LINEの内容ってのはコレだ。駿とこのアンタの娘との2人の会話の内容が俺たちに一斉に送られて来たんだ。その内容を見て俺たちは今、ここに来た。囚われの身のアンタを助ける為に…な」

 そう言って堂島 海里はスマホの駿とアリの女王2との会話が議事録の様にビッシリと打ち込まれた画面をアリの女王1に見せた。

『自爆まであと120秒…総員退避!総員退避!』

 室内の警告音が尚一層激しくなる。

「時間が無いぞ!早くここから出ないと!」
――――――――――――――――――――――――
スマホの画面にLINEの内容が映し出されている。
――――――――――――――――――――――――
※駿とアリの女王2とのやり取り

『ウチのオカンがね!』

「エッ、さっきまでママって言ってたのに急に?ってコレもオレの脳が勝手に変換してるってヤツなのかな…」

『エエ、その通りよ!ウチのオカンがね、コロニー内のアリ達から女王アリロボについて色々と言われるらしくって!』

「フムフム…きみとこのオカンて言うたらこのコロニーの女王アリの事やね?で?一体どう言う事を言われるの?」
 ※この独特の関西なまりも脳内で勝手に変換されているものと思われる。

『オカンが言うには働きアリ達から女王アリロボは無駄にデカイって言われるって!』

「そうなん?ソレは完全にディスられてるね!いくら大きいって言うても無駄か無駄じゃないかは人にとやかく言われるものでも無いしね!で?どれくらいなのよ、実際の大きさは?」

『実際の女王アリロボの大きさは身長が57メートルあるらしくてね。』

「フムフム、身長が57メートル。モビルスーツの平均の大きさが18メートル、ウルトラマンの大きさが40メートル、吹田市の万博公園にある太陽の塔が70メートル、新聞紙を100回折りたたむと134億光年!ってもう長さの単位でも何でも無くなってるけど、実際ロボの大きさが身長57メートルやとしたら、まぁロボットとしてはそれくらい無いと迫力が無いからそれくらいあった方がいいんと違う?コレはディスられるほどの事でも無いんとちがう?」

『うん、そうなんよ。ソレはわたくしもそう思うんやけどね。ただオカンが言うには大きさの割には女王アリロボの機能がショボ過ぎるって働きアリ達からめっちゃ言われるって!』

「フムフム、大きさの割にはってことは、身長が57メートルもあるんやから色々とその大きさを活かした機能があって当然やけど一体どんな機能があるの?」

『それがオカンが言うには、今何匹くらいの働きアリがいてあとどれくらい産めばいいか計算するのにすごい便利や!って言うてた』

「ほう!57メートルの大きさがあるのに計算するだけしか機能が無いんやったらそりゃディスられてもしょうがないよ!それくらいの計算やったら100均の電卓で充分なんよ!それはディスられてもおかしく無いよ!」

『そうなんよね、わたくしもそう思うんやけど、オカンが言うには簡単に円グラフとか棒グラフなんかも出せて便利やって言うてるんよ!』

「うーん、確かに100均の電卓では円グラフや棒グラフを出すのは荷が重いか!いくら100均の品揃えが凄いって言っても表計算が出来るソフトは流石に100円では買えないからそれはディスられるのはおかしいか!」

『そうなんよね!わたくしもそう思うんやけど、オカンが言うには特にあの大きさを活かした特技ってのは他に何にも無いってところを働きアリ達からとやかく言われるって!』

「あの大きさを活かしたモノが他に一つも無いんやったらそりゃ一生懸命に働く働きアリ達からあれこれとやかく言われても当然よ!あの大きさで機能が表計算しか無いとしたらどれだけ円グラフや棒グラフに特化しててもそれはもうノートパソコンで充分なんよ!むしろ持ち運びもしないならデスクトップパソコンで充分なんよ!それは働きアリ達から文句を言われても仕方がないわ!」

『そうなんよねー、それにオカンが言うにはこの女王アリロボは身長の割に体重がやけに軽過ぎるって働きアリ達から言われるって!』

「そうなの?体重?仮にロボットであったとしても女性が体重の事を言われるって触れられたく無い事の上位にランキングするのよ!年齢と体重は少なく言うっていうのは女性に対してのマナーなんよ!それをとやかく言われるって事は完全にディスられてるよ!実際は体重はどれくらいなの?」

『オカンが言うには女王アリロボの体重は550トンくらいやって言うてた。』

「エエっと、女王アリロボの身長が57メートル。実際の体重が550トンって事は人間の大きさに換算するならば、身長170センチの人の体重が14キロって事になるんよ!こんなもん栄養失調で動けないレベルでガリガリって言葉で片付けられる様な問題では無いよ!こんなの児童福祉施設なんかに相談したら一発で入所のレベルよ!ちゃんと食事を与えてましたか?って言うレベルなんよ!コレはディスられてるって言うよりもむしろ心配されてるんじゃ無い?」

『エエ、わたくしもそう思うんやけどオカンが言うには女王アリロボはロボットやから食事とかの必要は無いって、完成した時からずっとあの体重のままやって言うんよね』

「完成した時からあのままやったら別に栄養失調って訳でも無いか!」

『そうなんよね、オカンが言うには設計図と完成したロボとでは随分見た目が違うって言うてたんよね』

「設計図と完成形がずいぶん違ったらそれは完全に手抜き工事が原因やないの?きちんと設計図通りに施工してもらわんとその強度に達してないとしたらそれが原因で軽いんや無いの?それは女王アリロボの事を責めるよりも施工業者を責めないとアカンのちゃうの?」

『そうなんよね、わたくしもそう思うんやけど、オカンが言うには設計図と完成形ではボディの色が全く違うって言うてるんよ』

「見た目が随分違うって言うのは色の事なの?材質が違うので強度が違うとか重量が違うとかの問題じゃ無くて色だけの事なの?それは施工業者と言うよりも塗装業者の問題じゃ無いの?」

『そうなんよね、でもオカンが言うには設計から施工まで自社でやってるって言うてたんよね!』

「設計から施工まで一貫施工管理いっかんせこうかんりなの?それやったら外注業者のせいじゃないか!むしろ自社施工なんやったら自社の設計士か現場監督の問題なんじゃ無いの?」

『そうなんよね、わたくしもそう思うんやけど、オカンが言うには設計から施工管理まですべてオカンがやったって言うてるんよ!』

「エッ、設計から施工管理まで女王アリであるオカンみずからやってんの?オカンすごいけど!それやったらむしろオカンが悪いんやからそれはオカン自身の設計、施工ミスなんでロボと言うよりもオカンがディスられても仕方が無いよ!むしろ何をしとんオカンコラー!」

『そうなんよねー、わたくしもそう思うんやけどオカンが言うには設計士の免許を持って無いって言うてるんよね』

「設計士の免許を持って無いんやったら仕方無いかー。ってそもそも設計士でも何でも無いのに図面が引けたとしたらオカンすごいな!ていうかロボットの設計施工に免許いるって何やねん!」

『そうなんよねー、わたくしもそう思うんやけどオカンが言うには女王アリロボは単なる思い付きやって言うてるんよね』

「単なる思いつきって!それ女王アリロボがどうこうじゃなくて女王としてのオカンがどうなの?」

『そうなんよねー、わたくしもそう思うんやけど、オカンが言うには女王アリロボの維持費も凄いって言うてるんよね』

「無駄にデカくて場所を取るうえに維持費まで凄いかかるって一体どうなってるのよオカンの経営方針は?で一体いくらくらい掛かってるのよ?」

『それがわからんのよ。オカンが言うには女王アリロボをフル稼働させるとコロニーの経済が傾くって言うんよね!』

「一体どうなってんの?たかだか表計算ソフトの機能しか持たない馬鹿デカイロボットにどんだけ維持費が掛かってるんよ?それこそ女王アリロボがどうこうと言うよりも女王アリとしてのオカンの資質が問われるよ!」

『そうなんよねー、わたくしもそう思うんやけどオカンが言うには働きアリ達は女王アリロボには風当たりがキツイけど私には優しいって言うてるんよね』

「そうなの?今までの内容を考えていくと全ての元凶は女王アリであるオカンの様に思えるけども、意思を持たない女王アリロボに悪意の矛先が向いてるんやね?もし仮にロボに意思があったらとんでもない仕返しをオカンにしそうやけど!」

『そうなんよねわたくしもそう思うんやけどオカンが言うには女王アリロボはどうやら意思を持ち始めてるらしいんよね』

「どう言う事?女性アリロボには意思があるの?」

『そうなんよねーわたくしもどうかな?って思ってるんやけどオカンが言うには女王アリロボには高性能のAIが搭載されてるみたいなんよねー』

「どう言う事?高性能のAI搭載の表計算ソフトってオカンの思考どうなってんの?」

『そうなんよねーオカンが言うには女王アリロボがオカンに仕返しの為に反乱を起こし始めてるらしいんよねー』

「高性能AIを搭載した巨大女王アリロボの反乱って!非常にマズイんじゃ無いの?」

『そうなんよねー、オカンが言うには女王アリロボが怒って操縦席コクピットのドアを開けてくれへんらしいんよねー』

「???」

『オカンが言うには外から鍵を掛けられて中から出られへんらしいんよねー』

「???」

『そうなんよねー、オカンが言うには早く操縦席コクピットから出して欲しいらしいんよねー』

『オカンが言うにはロボが自爆スイッチを押したらしいんよねー』

――――――――――――――――――――――――
『自爆まであと59秒……総員退避!総員退避!』
……40……30……20……10…9…8…7…6…5…4…3…2…1…
『ゼロだ!』

to be continued on Formica ex machina(機械仕掛けのアリは電気羊の夢を見るか?)
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。

猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。 そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。 あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは? そこで彼は思った――もっと欲しい! 欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。 神様とゲームをすることになった悠斗はその結果―― ※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。

キャンピングカーで往く異世界徒然紀行

タジリユウ
ファンタジー
《第4回次世代ファンタジーカップ 面白スキル賞》 【書籍化!】 コツコツとお金を貯めて念願のキャンピングカーを手に入れた主人公。 早速キャンピングカーで初めてのキャンプをしたのだが、次の日目が覚めるとそこは異世界であった。 そしていつの間にかキャンピングカーにはナビゲーション機能、自動修復機能、燃料補給機能など様々な機能を拡張できるようになっていた。 道中で出会ったもふもふの魔物やちょっと残念なエルフを仲間に加えて、キャンピングカーで異世界をのんびりと旅したいのだが… ※旧題)チートなキャンピングカーで旅する異世界徒然紀行〜もふもふと愉快な仲間を添えて〜 ※カクヨム様でも投稿をしております

あなたの子ですが、内緒で育てます

椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」  突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。  夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。  私は強くなることを決意する。 「この子は私が育てます!」  お腹にいる子供は王の子。  王の子だけが不思議な力を持つ。  私は育った子供を連れて王宮へ戻る。  ――そして、私を追い出したことを後悔してください。 ※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ ※他サイト様でも掲載しております。 ※hotランキング1位&エールありがとうございます!

処理中です...