虐げられた僕は、ライバルの最強王子のパーティになんて入りません! 僕たちは敵同士です。溺愛されても困ります。執着なんてしないでください。

迷路を跳ぶ狐

文字の大きさ
上 下
83 / 117

83.並んで

しおりを挟む

 使い魔の竜は、僕らを乗せて、遥か下の城門の方に降りていく。
 突然城門の前に現れた僕らを見て、門番たちがすぐに身構えた。

「なんだ、貴様らはっ………………ギャロルイト様?」
「あ、ああ……君たちかーー。た、た、ただいまーー」

 少し引きつった笑顔で言う彼に、門番たちはますます身構える。

「あの人がただいまだなんて……」
「ただいまだってよ……気持ち悪い……」
「普段嫌味しか言わないくせに……」
「何か企んでるんじゃないか?」

 少しの間コソコソ話してから、門番の一人が、ギャロルイトに振り向いた。

「ギャロルイト様……今日はこちらには帰られないのではなかったのですか?」
「そ、それは、とっ……突然帰ることになったんだ!! 門を開けろ!!」
「……」

 高圧的に言われても、門番たちは「やっぱりあいつおかしい」とコソコソ話してから、一人がギャロルイトに振り向く。

「その後ろの方々は……警備隊の方ですよね? 警備隊は通すなと言われています」
「い、いいから早く門を開けろっっ!! 全員処罰されたいか!!」
「……ですが、門は開けるなとのご命令です。ランギュヌ子爵の」
「な、なんだと!? ランギュヌ子爵様が来ているのか!!??」

 ギャロルイトは、顔色を変えた。伯爵に対しては、かなり見下したようなことも言うのに、やっぱり子爵のことは恐ろしいらしい。

 門番たちも、彼が子爵を恐れていることを知っているようだ。一人には「そういうわけなので、お引き取りください」って断られ、もう一人には小声で「ざまーみろ」って言われてる。普段めちゃくちゃ恨まれているな……あれ……
 二人とも、もう頑として門を開けてくれそうにない。

 だけど、門が開かないと困るのはこちらも同じ。

 せっかく帰ってきたのに門すら開けてもらえないことに本気で落ち込んでいるギャロルイトを背後に追いやり、ロヴァウク殿下が前に出た。

「門を開けろ。伯爵には、先に連絡をしておいたはずだ。何も聞いていないのか?」
「……は? ……お、おいっ……!」

 門番の一人は、ロヴァウク殿下に気づいたようで、真っ青になってしまう。もう一人も震え上がっていた。

「な、な、なんで第五王子がこんなところに……」

 どうやら二人とも、伯爵からは何も聞かされていないらしい。夜の間に、エンディエフと結界維持のための道具について話を聞きたいと連絡してあるはずなのに。

 呆れたような顔をするロヴァウク殿下に、門番たちは、周りをキョロキョロ見渡してから駆け寄っていく。

 何かする気かと思った。

 僕は、いつのまにか、ロヴァウク殿下と門番の男の間に入っていた。

「……なんなんですか……一体……彼は、本当に、ロヴァウク殿下です。無礼は許しません」

 握った魔力の剣は、いつもより大きくなっていた。無意識のうちに、強い魔力をこめていたらしい。

 僕、こんなに感情的だっけ……

 二人に剣を向ける僕に、いつのまにかニュアシュとクロウデライが並んでいた。ギャロルイトのそばには、コティトオン隊長がいる。

 クロウデライが、僕に振り向いて余裕すら感じる笑みを浮かべて言った。

「落ち着けよ。先に突っ走んな」
「いいではありませんか。王子殿下の前に、一番早く立ったのは彼です」

 ニュアシュがそう言うと、クロウデライが「次は負けねー」って呟いていた。

 けれど門番二人には僕らを害する気なんてないらしい。門番の一人が剣を捨てて、両手を上げた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい

空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。 孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。 竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。 火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜? いやいや、ないでしょ……。 【お知らせ】2018/2/27 完結しました。 ◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

平民男子と騎士団長の行く末

きわ
BL
 平民のエリオットは貴族で騎士団長でもあるジェラルドと体だけの関係を持っていた。  ある日ジェラルドの見合い話を聞き、彼のためにも離れたほうがいいと決意する。  好きだという気持ちを隠したまま。  過去の出来事から貴族などの権力者が実は嫌いなエリオットと、エリオットのことが好きすぎて表からでは分からないように手を回す隠れ執着ジェラルドのお話です。  第十一回BL大賞参加作品です。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます

ふくやまぴーす
BL
旧題:平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます〜利害一致の契約結婚じゃなかったの?〜 名前も見た目もザ・平凡な19歳佐藤翔はある日突然初対面の美形双子御曹司に「自分たちを助けると思って結婚して欲しい」と頼まれる。 愛のない形だけの結婚だと高を括ってOKしたら思ってたのと違う展開に… 「二人は別に俺のこと好きじゃないですよねっ?なんでいきなりこんなこと……!」 美形双子御曹司×健気、お人好し、ちょっぴり貧乏な愛され主人公のラブコメBLです。 🐶2024.2.15 アンダルシュノベルズ様より書籍発売🐶 応援していただいたみなさまのおかげです。 本当にありがとうございました!

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

処理中です...