虐げられた僕は、ライバルの最強王子のパーティになんて入りません! 僕たちは敵同士です。溺愛されても困ります。執着なんてしないでください。

迷路を跳ぶ狐

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83.並んで

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 使い魔の竜は、僕らを乗せて、遥か下の城門の方に降りていく。
 突然城門の前に現れた僕らを見て、門番たちがすぐに身構えた。

「なんだ、貴様らはっ………………ギャロルイト様?」
「あ、ああ……君たちかーー。た、た、ただいまーー」

 少し引きつった笑顔で言う彼に、門番たちはますます身構える。

「あの人がただいまだなんて……」
「ただいまだってよ……気持ち悪い……」
「普段嫌味しか言わないくせに……」
「何か企んでるんじゃないか?」

 少しの間コソコソ話してから、門番の一人が、ギャロルイトに振り向いた。

「ギャロルイト様……今日はこちらには帰られないのではなかったのですか?」
「そ、それは、とっ……突然帰ることになったんだ!! 門を開けろ!!」
「……」

 高圧的に言われても、門番たちは「やっぱりあいつおかしい」とコソコソ話してから、一人がギャロルイトに振り向く。

「その後ろの方々は……警備隊の方ですよね? 警備隊は通すなと言われています」
「い、いいから早く門を開けろっっ!! 全員処罰されたいか!!」
「……ですが、門は開けるなとのご命令です。ランギュヌ子爵の」
「な、なんだと!? ランギュヌ子爵様が来ているのか!!??」

 ギャロルイトは、顔色を変えた。伯爵に対しては、かなり見下したようなことも言うのに、やっぱり子爵のことは恐ろしいらしい。

 門番たちも、彼が子爵を恐れていることを知っているようだ。一人には「そういうわけなので、お引き取りください」って断られ、もう一人には小声で「ざまーみろ」って言われてる。普段めちゃくちゃ恨まれているな……あれ……
 二人とも、もう頑として門を開けてくれそうにない。

 だけど、門が開かないと困るのはこちらも同じ。

 せっかく帰ってきたのに門すら開けてもらえないことに本気で落ち込んでいるギャロルイトを背後に追いやり、ロヴァウク殿下が前に出た。

「門を開けろ。伯爵には、先に連絡をしておいたはずだ。何も聞いていないのか?」
「……は? ……お、おいっ……!」

 門番の一人は、ロヴァウク殿下に気づいたようで、真っ青になってしまう。もう一人も震え上がっていた。

「な、な、なんで第五王子がこんなところに……」

 どうやら二人とも、伯爵からは何も聞かされていないらしい。夜の間に、エンディエフと結界維持のための道具について話を聞きたいと連絡してあるはずなのに。

 呆れたような顔をするロヴァウク殿下に、門番たちは、周りをキョロキョロ見渡してから駆け寄っていく。

 何かする気かと思った。

 僕は、いつのまにか、ロヴァウク殿下と門番の男の間に入っていた。

「……なんなんですか……一体……彼は、本当に、ロヴァウク殿下です。無礼は許しません」

 握った魔力の剣は、いつもより大きくなっていた。無意識のうちに、強い魔力をこめていたらしい。

 僕、こんなに感情的だっけ……

 二人に剣を向ける僕に、いつのまにかニュアシュとクロウデライが並んでいた。ギャロルイトのそばには、コティトオン隊長がいる。

 クロウデライが、僕に振り向いて余裕すら感じる笑みを浮かべて言った。

「落ち着けよ。先に突っ走んな」
「いいではありませんか。王子殿下の前に、一番早く立ったのは彼です」

 ニュアシュがそう言うと、クロウデライが「次は負けねー」って呟いていた。

 けれど門番二人には僕らを害する気なんてないらしい。門番の一人が剣を捨てて、両手を上げた。
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