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44.不本意だから
しおりを挟む「俺の方がよくできているだろう」
そう言っているロヴァウク殿下は、少しむっとしているみたい。殿下のこんな顔を見るのは初めてだ。
な、なんだか……可愛い……
だけど、僕だって引き下がる気はない。
「そんなことありません。僕の方が、可愛いんです」
「確かに可愛いが……」
「え!?」
殿下は、僕が渡したものを光にかざして、まじまじと見つめている。
「よくできている。子爵と同じものを材料にしたのではないな?」
「……たまたま、魔物退治でいい素材が手に入ったので、それを売って、この街で買ったものを使って作りました。あまり性能の良いものではありませんが……」
「謙遜するな。よくできている」
「は!??」
む、無意識に褒めてるのかな……
ロヴァウク殿下は、全く照れもなく話しているけど、僕の方は、自覚してしまうくらいに顔が赤くなっている。
殿下はなんで平気なんだっ……!
「貴様の位置も、手に取るようにわかった。材料に使ったのは魔物の魔力を使ったものか……」
「……違います。魔力をためるための道具を使ったんです」
「そんな事ができるのか……だが、それではこんなに安定しないだろう」
「そんなことありません。使う素材を変えるんです。殿下のものは、何を……」
「俺のこれは、森で見つけた素材で作った。魔物の魔力に晒された素材なら、多少乱暴に魔力を注いでも壊れない」
「そんな方法が……は、初めて聞きました!」
僕は、王城へ赴きライイーレ殿下のところで魔法を学ぶ間や、警備隊にいる時、特に何も渡してもらえなかったから、必要な魔法の道具は、自分で用意するしかなかった。その間、こんなことを誰かと話すことはなかったけど、ロヴァウク殿下と話すのは楽しい。僕が知らなかったことを聞けるし、彼の意見も、僕だけでは思いつかなかったようなことだ。僕も試してみよう……
すっかり状況を忘れて話し込んでしまいそうな僕らに、リュックの中から、ライイーレ殿下が声をかけてきた。
「レクレット……ロヴァウクー。今はそんな話をしている場合じゃないだろ?」
「あ……」
そうだった。
大事なことを忘れていた。
僕とロヴァウク殿下は、同時に駅長に振り向いた。
「あの……ぼ、僕の、可愛いと思いますよね……?」
「よく見てみろ。俺の方が、よくできている」
僕ら二人に、同時に意見を求められて、駅長は震え上がっている。だけど、大事なことなんだから、第三者の意見が聞きたい。
それなのに、ついに我慢できなくなったのか、リュックから出てきたライイーレ殿下が、駅長の頭の上に乗って、僕らを止める。
「駅長さんも、そんなこと言われても選べないし怖いよ」
ライイーレ殿下に、駅長はなんでも頷いて同意していた。そ、そんなに追い詰めるように聞いていたのか?
自分がこんなに負けず嫌いだとは思わなかった。
だけど、どうしても負けたくなくて、こんなことを言ってしまうけど、殿下が僕に投げつけたものは、僕のより多くの魔力を湛えていて、すごく綺麗。魔力の量の違いだろう。僕じゃこんな風にできない。
見上げたロヴァウク殿下は、駅長の頭に乗ったライイーレ殿下をつまみ上げてしまう。
「貴様は余計なことを言うな。もちろん、その男のことも、今すぐに始末する」
「始末しちゃダメだよ!!」
ライイーレ殿下に言われても、ロヴァウク殿下はどこ吹く風で、へたり込んでいる駅長を無理やり立たせた。
「やはり貴様ら、俺を謀っていたのか」
「ち、ちがっ……そ、そんなつもりはっ……」
「来い。俺が直々に話を聞いてやる」
「や、やだっ……た、助けてっ……! そこの嘘つきな人! あなたのせいですよ!! 殿下を止めてください!! し、死にたくないっ……!!」
嘘つきな人って、僕かなぁ……僕、別に彼らの片棒を担ぐとは言っていないのに。
だけど、ロヴァウク殿下が拷問狂いみたいに言われるのは不本意。僕は、ライイーレ殿下を抱き上げて、ロヴァウク殿下について行った。
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