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45.俺たちは心配
しおりを挟むそれから駅舎に戻った僕らは、駅長室で駅長の話を聞くことになった。
駅長室には、フィンスフォロースとロティスルートも来ていて、僕らを迎えてくれた。彼らは、ロヴァウク殿下に言われて、線路の方を調べていたらしい。
殿下が穴をあけてしまった列車は、フィンスフォロースが直してくれて、元通りになった。かなり魔力を使ったらしく、駅長室のソファに座った彼は、眠そうな様子で言った。
「殿下は人使いが荒いよー……僕ら、ずーっと線路の上を飛んでたんだよ……もうくたくた……」
「……魔物は……いたんですか?」
僕が隣に座ってたずねると、フィンスフォロースは今にも寝てしまいそうな顔であくびをしながら答えた。
「確かにいたよー。巨大な魔物。それはなんとかしたけど、まだかなり集まってきてる。それに、線路のあちこちにいるみたいなんだ。状況把握と作戦会議のために、一時撤退してきたってわけ」
「……そうだったんですか……」
そんなにたくさんの魔物が、線路に集まってくるなんて……退治にも骨が折れそう。
話し込む僕らのところに、ロティスルートがコーヒーを持ってきてくれた。
「殿下、護衛のはずの竜まで魔物退治に向かわせるから、俺たちは心配でたまらないよ。そのくせ、コーヒーは俺が淹れたものがいいなんて、駄々こねて」
ちょっと怒っているのか、ロティスルートはロヴァウク殿下を睨みつけるけど、ロヴァウク殿下はどこ吹く風。
「コーヒーは、貴様がいれたものが好きだ」
「またそんなこと言って……」
怒ったように見せているけど、ロティスルートは嬉しそう。
湯気を立てるコーヒーを、殿下とフィンスフォロースの前に置いて、去っていった。
フィンスフォロースはまだ眠そう。彼は、魔物が破壊した線路の修復までしていたらしい。
ロヴァウク殿下に聞かれて、駅長は何があったのか話してくれた。
彼らは、伯爵からは本当に何も聞かされておらず「待機、余計なことを話すな」と言われていたらしい。本当は、魔物の件で困り果てていて、殿下に全て話したいが、これまで伯爵の命令で色々見逃してきたこともあり、命令にそむくことが怖かったようだ。
「……ほ、本当に……わ、私たちは、殿下を騙そうなどとは思っておりませんっ……! どうかっ…………!」
「……分かっている。貴様らに、俺に逆らうほどの度胸があるとは思えん。伯爵に言われれば、聞かざるを得ないだろう。貴様はまさか、その程度のことを俺が見抜かないとでも思っていたのか?」
「ひっ……! ち、ちがっ……!! そ、そんなことはっ……」
「……怯えるな。それでよく俺を止めたな」
「だ、だって……き、危険なのは、ほ、本当なんです……本当に、危険なんです! さ、最近本当に多くて……線路の結界も効果がなくて……」
「だが、そんな話は王家にも届いていない。貴様……どういうことだ?」
「は、伯爵にはお話ししたのですがっっ……! ま、全く聞き入れてもらえず……」
「そうか……」
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