お前の尻穴が狙われている! 俺は別にどうでもいいけど……一応、守りに来た

迷路を跳ぶ狐

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4.あいつから?

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 店内に入ると、甘くてとろんとなるような匂いがした。
 ケーキがいくつも並ぶショーケースの隣を通って奥まで行くと、そこは開放的な掃き出し窓から、燦々と太陽の光が降り注ぐ明るいカフェスペースだ。

 アンティークのインテリアとテーブルが並んで、凝ったデザインの椅子が並べられていた。

 店員に窓際の席に通された俺は、椅子に座って、なんだか落ち着かない思いでいた。

 少し前まで、ここにはよく来ていて、俺も店内のことはよく知っていたのに、季節が変わったからか、内装も少し変わっている。他人の縄張りに入り込んでしまったような気分だ。周りは満席。落ち着かない……

 ついでに、背中に大きな銃担いで座っているのが俺だけなせいか、周りの客にやけにチラチラ見られてる。やっぱり落ち着かない……

 しばらく待っていると、店員がケーキと紅茶を持ってきてくれた。フルーツと、フリルみたいに絞られた生クリームで飾られた可愛らしいケーキと、きれいなティーポットが置かれるが、すぐに出て行くつもりだったから、注文なんかしていないぞ。

「……俺は何も頼んでいない。それより、あの馬鹿はいつくるんだよ!」
「これ、オヴズティさんからです」
「え……?」

 目の前に置かれたケーキは、甘いものが苦手な俺でも食べられるようにって、オヴズティがパティシエになるって言い出した頃に、俺に作ってくれたものだ。

 フォークを入れると、出て来たのは俺が好きな果物。
 初めてあいつが作ってくれた時より、ずっと美味しい。だけどちゃんと、オヴズティが作ったんだってわかる。あの時と同じ、ミルクの味がする。

 あいつ、このケーキ、まだ作ってたんだ。なんだか嬉しくて、いつのまにかケーキに夢中になっていた。

 ケーキがなくなった頃、オヴズティが厨房から出て来た。

「待たせたな」
「ズティ! ケーキ美味かったぞ!」

 そいつの顔を見たら、自然と言葉がすぐに出た。だって、それだけうまかったんだ。

 そしたら、そいつはなぜかすぐに俺から顔をそむけた。

「お前……それ食った時だけ素直だな……」
「は? 何言ってんだ? うまいからそう言っただけだぞ」
「…………」

 無言でオヴズティは椅子に座った。

「それで? 今日は尻尾振ってどうした?」
「尻尾なんか振ってない!! 犬じゃねぇんだよ!!」
「……だったら、やっぱり俺が恋しくて来たのか?」
「んなわけねえだろ!! お前の尻の穴守りに来たんだよっっ!!」

 また店内で叫んでしまって、周囲の視線を集めてしまう俺。何してんだ。

 オヴズティにも、呆れたような顔をされた。

「……店内で尻の穴はやめろ」
「……るせえ……け、警備隊の隊長から言われたんだよ。昨日魔物と交戦した時に、屍の術を操る竜がいたらしい。そいつが、お前を狙っているんだ」
「……尻の穴はどうした?」
「だから! その竜がてめえの尻の穴犯してやるって言ったんだよ! 何度も言わせんなっ!」
「……ふーん……」

 オヴズティは、少し考えてから、俺に向き直る。

「それは、お前のもなのか?」
「は……?」
「……竜に狙われているのはお前もなんだろう? さっきそう言った」
「はあ? んなこと、どうでもいいんだよ! 俺は自分でなんとかできるんだからな!」
「……お前に警護はつかないのか?」
「は? だから言っただろ? 俺には必要ないって。俺がお前のこと警護してやるからっ……!」

 いいかけたら、オヴズティが俺の手を強く握る。急に触られんの、嫌いって知ってるくせに。
 普段から魔物とやりあってるせいで、隙をつかれて触られると、防衛本能が働くんだ。

 すぐにその手を振り払おうとしたけど、オヴスティが強く握っていて、離れない。なんだこいつ。いつもなら、こいつがふざけて喧嘩仕掛けて来たって、秒で勝てんのに。なんで振り払えないんだ。
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