お前の尻穴が狙われている! 俺は別にどうでもいいけど……一応、守りに来た

迷路を跳ぶ狐

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5.相変わらず勝手な奴だ!

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 いつまでも突き離せないと、今度は恐怖が湧く。焦りも重なって戸惑う俺を、オヴズティは睨みつけていた。

「なんでお前に警護がつかないんだ?」
「はっ……!? し、知るかよ! 警備隊に聞け!!」
「…………俺は俺のことは自分でなんとかする。お前を守る奴がいないなんて、ふざけんな」
「そ、そんなのっ……俺は」
「俺がお前を守る」
「はあ!? 何言ってんだ、店どうすんだよ! だ、大体俺はっ……!」

 言いかけたところで、カフェスペースの方に入ってくる男の姿が目に止まった。人の姿をしているけど、背中には小さな羽がある。竜のものだ。しかも、その羽は骨でできていた。

 あいつ……屍の竜か!!

「ズティっ……!」

 俺は、そいつの手を握って、窓を魔法で消して、外に飛び出した。背後で竜も気づいたらしく、同じ窓から飛び出して追ってくる。

 駐車場に停めた車まで走った俺は、オヴズティを車の助手席に押し込んだ。

 バックミラーに、追ってくる竜の姿が映ってる。こいつの尻穴狙ってるって、本気かよ!

 エンジンをかける俺だが、車が発車する前に、何かが空から降りてきた。骨だけの竜の羽を背中につけた、黒髪の男、さっき俺たちを背後から追って来た男だ。

 嘘だろ……もう追いついて来やがったのか!

 竜は、片手でフロントガラスを割って、助手席のオヴズティに向かって手を伸ばしてくる。

「見つけたぞ……寄越せっ!!」
「断るっ……! 失せろっ!」

 俺はそいつ怒鳴りつけて、銃を構える。魔力を増幅して光線のように放つ、魔力の銃だ。
 猛火が渦巻く音がして、焼けるような光は、フロントガラスを破壊した男に向かって飛んでいく。

 羽を広げた男は空に逃げるが、放たれた光は、フロントガラスを焼いて、ガラスの一部が溶け落ちていた。

 撃ち落としてやりたいが、今はオヴズティを逃すことのほうが先だ。とりあえず、こいつの家まで逃げる!

 思いっきりアクセルを踏むと、車は急発進。

 スピードを上げた車は、古ぼけて誰もいない大通りを突っ切っていく。背後からはもう、あの竜は追ってこない。

 竜の追跡を振り切った俺は、車の中でもう一度、オヴズティに、竜に狙われてるって話をしたが、オヴスティは聞いてるのか聞いていないのかすら分からないような様子だ。

「そんなわけだから、俺がしばらく、お前の警護についてやる! もう少し危機感持て!」
「……それはお前だろ」
「ああ!? 俺は平気なんだよ! 竜なんか怖くない!!」
「俺を守りに来たのは嬉しいが、お前はお前を守れ」
「は!? 言っとくけど、来たくて来たんじゃないからな! お前を守ると金が出る! だから来ただけだ!!」
「……金?」
「お前を守ったら警備隊から金出すから、お願いします! って警備隊長に頭下げられて、仕方なく来たんだよっ……! 勘違いすんな! 俺の警護なんかいらねえ! 俺は一人で俺を守れんだよ! お前と違ってな!」
「…………そーかよ……」

 呟いて、そいつはそっぽを向いてしまう。

 こいつ……俺が真面目に話をしているというのに!!

「聞いているのか!! オヴズティっっ!! そんなことで、屍の竜に尻穴奪われても知らないぞ!!」
「……その、尻穴を奪うって、どういうことか分かってるのか?」
「は!?」

 びっくりして振り向くと、オヴズティは今度は俺の顔をじーっと見ていた。

「どーなんだよ?」
「な、何を言っているんだ……」
「お前だって、屍の竜に狙われているんだぞ」
「……だ、だからっ……俺は別に平気だって言ってんだろ!! そんなの!」
「なぜだ? 尻に竜のちんちん突っ込まれたいのか?」
「はっ!? ふ、ふざけてんじゃねえぞっ……! だ、誰がっ……!」
「お腹が空いた」
「はあ!?」
「お腹が空いた。何か食べたい。そこの店に停めろ」

 オヴズティは、道路に面したカフェを指差している。こいつ……相変わらず、勝手過ぎる! 何が腹減っただ!!

「んなもん我慢しろ!! てめえこそ、竜に犯されてえのか!!」
「そうじゃない。腹が減っていると、いざという時に戦えない。それとも、竜が怖くて飯も食えないのか?」
「ああっっ!?」
「そんな調子で、どうやって屍の竜に勝つんだ? お前のことは、俺が守ってやるから、大人しくしてろ」
「るせえよ!! 腹だな!! ハンバーガー買ってやるから待ってろ! 奢れよクソがっ!! 俺は竜なんか、ぜんっぜん怖くないんだからな!」

 怒鳴りながら怒りを込めて睨むが、オヴズティはまるで気にしてない。

 野郎……竜に襲われても無視してやろうか!
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