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松下康二と駿里のお話
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「…俺がもしやだって言ったらどうするの?」
そんな選択肢は無いかもしれない。けれど聞かなきゃ分からない。だから駿里は期待せずに松下にそう聞いた。
「それはお前が1番分かってんじゃねぇの?」
「…うぅ。」
やっぱりそうか。松下はあんな風に言ったがそもそも駿里には選択肢がない。だったら早くやって終わらせた方がいいのかもしれない。いやでも逃げられる可能性だってある。それなら逃げた方がマシなんじゃ…?と駿里が思っていると松下がそれを見抜いたように話し始めた。
「おい駿里。今甘ったれたこと考えただろ。俺はこんな状況でも死なねぇぐらいには強い。つまり今はもう動けるって訳だ。多少は痛いがな。けどお前の力には勝てるぐらい回復し始めてる。だからよく考えるんだぞ駿里。」
「そんなの俺に選択肢ないじゃんか…。」
「そうだな。いつも通りだ。」
松下が元気になってくれていることは嬉しかったがその反面嬉しくない部分も出てきた。いつも通り…。喜ぶべきなのだろうが駿里は全く喜べなかった。そしてもうこれで松下から逃げられないことがわかった駿里は潔く諦めた。松下の言うことを聞くことにした。
「わかった。けど康二さん元気そうだからそれして俺は帰るね。」
「おう。また数日後には前と同じように毎日のように遊びに行ってやるよ。」
「来なくていいから…っ!」
本当に人よりも傷の治りが早そうな松下のその言葉を聞いて駿里はゾッとした。毎日のように来られたら溜まったもんじゃない。それで寛也が怒って飛び火を食らうのは駿里なのに。だから駿里はムスッとした顔をしたが松下はそんな駿里の顔を掴んで早くしろと急かしてきた。
「おら駿里。そういうのいいから早くしろ。ほら、こっち来い。」
「ちょ、待ってよっ、ほんっとにせっかちだな…!」
身体を引かれ松下に密着する形となった駿里はそう声を荒らげた。そして少し松下から逃げようとしたがそれが出来なかった。松下が足で駿里の体を拘束してきたがだめに。
「早くしろ。それともなんだ。お前は焦らすのが好きなのか?」
「違うから!」
「だったら早くしろ。」
こんなチャンスもう二度とないかもしれない。それを思うと松下は少しでも長く駿里をキスをしたなかった。駿里を感じたかった。駿里の温もりを感じたかったのだ。だからまるで生き急いでいるようにそう言った。そんな松下をみて早くしないと自分に災難が降ってくると思った駿里は腹を括る。
「…わかった。でも康二さんは絶対に動かないでね。俺がちゃんとキスするからその間は何もしない約束も守ってよ。」
「ん?何言ってんだお前。俺はそんな約束してねぇよ。」
「え?さっき言ったじゃんか!」
「違ぇよ。キスしたらちゃんと手を出さずに帰してやるって言ったんだ。何勝手に解釈してんだよ。」
確かにそうだ。松下はそう言った。なぜ駿里は勘違いしてしまったのだろうか。いや人間はこういうものなのかもしれない。自分の都合がいいように解釈をするのが得意な生き物だから。だがそのせいで駿里は苦しむことになってしまった。キスをしている間にもし松下に何かされたらどうしようと駿里は焦り始める。
「…じゃあやらないっ、しない!」
「はぁ?なんでだよ。」
「康二さんもう動けるんでしょっ、だったら俺捕まえられる未来しか見えないもん…!」
「たく、そういうとこだけは察しがいいな。まぁそれがわかったところで逃がさねぇけど。」
そういうと松下は駿里の後頭部を掴み身体をさらに引き寄せた。その力はいつもと同じぐらいだ。怪我をしているのに。だから駿里はさすがに心配で松下を止めようとした。
「なっ、ねぇやめてっ、傷口開いたらどうすんの!」
「大丈夫だ。ここの医者は優秀だからな。つかお前が暴れなきゃ俺は抑えなくていいんだよ。」
松下の言う通り司波が医者だからきっと大丈夫であろう。傷口が誤って開いてしまうという心配も無いはずだ。しかしそれでも心配なのには変わりない。だから駿里は大人しくすることにした。これ以上松下に痛い思いをさせるのも嫌だったから。
「わ、分かったからっ、だから抑えないでっ、ほんとに傷口開いちゃうよ!」
「あ?やけに素直だな。」
「康二さんの傷口開いたら俺責任取れないもん…。」
きっとそうなったら寛也がすごく心配する。それはもっと嫌だ。寛也にとって松下はとても大切な存在だから。だから駿里は寛也を傷つけないためにもその行動を取ったのだ。
「こ、康二さん…。」
「ん?」
「…俺がちゃんとキスしたら離してくれる?」
「ああ。約束する。」
「わかった。」
松下のその言葉を聞いて駿里は動いた。松下の口に自ら唇を重ねた。だがその時病室のドアが空いてしまった。そしてある人物が入ってくる。その人物は言わなくてもわかるだろう。
「…駿里。」
「な、なんでいるの…!」
駿里は最悪のタイミングで病室に入ってきた志方に向かってそう言った。忘れていたのだ。彼が病室から出て医者を呼びに行っていたということを。
「なんでって俺医者呼びに行ったじゃねぇかよ。つか何してんだ。組長に言いつけんぞ。」
そんな選択肢は無いかもしれない。けれど聞かなきゃ分からない。だから駿里は期待せずに松下にそう聞いた。
「それはお前が1番分かってんじゃねぇの?」
「…うぅ。」
やっぱりそうか。松下はあんな風に言ったがそもそも駿里には選択肢がない。だったら早くやって終わらせた方がいいのかもしれない。いやでも逃げられる可能性だってある。それなら逃げた方がマシなんじゃ…?と駿里が思っていると松下がそれを見抜いたように話し始めた。
「おい駿里。今甘ったれたこと考えただろ。俺はこんな状況でも死なねぇぐらいには強い。つまり今はもう動けるって訳だ。多少は痛いがな。けどお前の力には勝てるぐらい回復し始めてる。だからよく考えるんだぞ駿里。」
「そんなの俺に選択肢ないじゃんか…。」
「そうだな。いつも通りだ。」
松下が元気になってくれていることは嬉しかったがその反面嬉しくない部分も出てきた。いつも通り…。喜ぶべきなのだろうが駿里は全く喜べなかった。そしてもうこれで松下から逃げられないことがわかった駿里は潔く諦めた。松下の言うことを聞くことにした。
「わかった。けど康二さん元気そうだからそれして俺は帰るね。」
「おう。また数日後には前と同じように毎日のように遊びに行ってやるよ。」
「来なくていいから…っ!」
本当に人よりも傷の治りが早そうな松下のその言葉を聞いて駿里はゾッとした。毎日のように来られたら溜まったもんじゃない。それで寛也が怒って飛び火を食らうのは駿里なのに。だから駿里はムスッとした顔をしたが松下はそんな駿里の顔を掴んで早くしろと急かしてきた。
「おら駿里。そういうのいいから早くしろ。ほら、こっち来い。」
「ちょ、待ってよっ、ほんっとにせっかちだな…!」
身体を引かれ松下に密着する形となった駿里はそう声を荒らげた。そして少し松下から逃げようとしたがそれが出来なかった。松下が足で駿里の体を拘束してきたがだめに。
「早くしろ。それともなんだ。お前は焦らすのが好きなのか?」
「違うから!」
「だったら早くしろ。」
こんなチャンスもう二度とないかもしれない。それを思うと松下は少しでも長く駿里をキスをしたなかった。駿里を感じたかった。駿里の温もりを感じたかったのだ。だからまるで生き急いでいるようにそう言った。そんな松下をみて早くしないと自分に災難が降ってくると思った駿里は腹を括る。
「…わかった。でも康二さんは絶対に動かないでね。俺がちゃんとキスするからその間は何もしない約束も守ってよ。」
「ん?何言ってんだお前。俺はそんな約束してねぇよ。」
「え?さっき言ったじゃんか!」
「違ぇよ。キスしたらちゃんと手を出さずに帰してやるって言ったんだ。何勝手に解釈してんだよ。」
確かにそうだ。松下はそう言った。なぜ駿里は勘違いしてしまったのだろうか。いや人間はこういうものなのかもしれない。自分の都合がいいように解釈をするのが得意な生き物だから。だがそのせいで駿里は苦しむことになってしまった。キスをしている間にもし松下に何かされたらどうしようと駿里は焦り始める。
「…じゃあやらないっ、しない!」
「はぁ?なんでだよ。」
「康二さんもう動けるんでしょっ、だったら俺捕まえられる未来しか見えないもん…!」
「たく、そういうとこだけは察しがいいな。まぁそれがわかったところで逃がさねぇけど。」
そういうと松下は駿里の後頭部を掴み身体をさらに引き寄せた。その力はいつもと同じぐらいだ。怪我をしているのに。だから駿里はさすがに心配で松下を止めようとした。
「なっ、ねぇやめてっ、傷口開いたらどうすんの!」
「大丈夫だ。ここの医者は優秀だからな。つかお前が暴れなきゃ俺は抑えなくていいんだよ。」
松下の言う通り司波が医者だからきっと大丈夫であろう。傷口が誤って開いてしまうという心配も無いはずだ。しかしそれでも心配なのには変わりない。だから駿里は大人しくすることにした。これ以上松下に痛い思いをさせるのも嫌だったから。
「わ、分かったからっ、だから抑えないでっ、ほんとに傷口開いちゃうよ!」
「あ?やけに素直だな。」
「康二さんの傷口開いたら俺責任取れないもん…。」
きっとそうなったら寛也がすごく心配する。それはもっと嫌だ。寛也にとって松下はとても大切な存在だから。だから駿里は寛也を傷つけないためにもその行動を取ったのだ。
「こ、康二さん…。」
「ん?」
「…俺がちゃんとキスしたら離してくれる?」
「ああ。約束する。」
「わかった。」
松下のその言葉を聞いて駿里は動いた。松下の口に自ら唇を重ねた。だがその時病室のドアが空いてしまった。そしてある人物が入ってくる。その人物は言わなくてもわかるだろう。
「…駿里。」
「な、なんでいるの…!」
駿里は最悪のタイミングで病室に入ってきた志方に向かってそう言った。忘れていたのだ。彼が病室から出て医者を呼びに行っていたということを。
「なんでって俺医者呼びに行ったじゃねぇかよ。つか何してんだ。組長に言いつけんぞ。」
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