極道の密にされる健気少年

安達

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松下康二と駿里のお話

緊張

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「こ、これにはちゃんと訳があって…!!」



急に現れた志方に混乱していたこともあったが駿里は焦ったようにそう言ってしまった。それはまるで図星ですと言っているようなものなのに。そんな駿里をみて耐えきれなくなったのか志方が笑ってきた。



「はは、分かってるって。そんな焦んなよ。どうせ康二がまたお前の事脅して捕まえてこうなったんだろ?大丈夫だ駿里。俺はちゃんと分かってるから。」



志方はそう言いながら駿里の頭を撫でてくれた。相変わらず優しい。こういう風に不意打ちで優しくしてくれたり駿里のことをちゃんと見てくれていたりしてくれるから駿里はどんなことをされてもどんな酷いことをされたとしても志方の事が嫌いになれないのだ。



「…ありがとう志方さん。」

「あったりめぇだ。組長にも黙っといてやるよ。だが安心しとけ。」



駿里が嬉しくて志方にお礼を言うと志方も嬉しそうに笑っていた。完全に2人の雰囲気だ。それを見て松下がハブてないはずがない。そして案の定松下は不貞腐れている様子だった。



「おいなんだよ志方。まるで俺が悪いみたいな言い方すんな。」

「誰がどう見てもお前が悪いだろ。おら、いい加減駿里を離せ。嫌がってんじゃねぇか。」



志方はそう言うと駿里を松下から奪い取った。そして駿里を自分の腕の中に閉じ込めた。いつもだったらこうしても松下にすぐ奪い返されるだろう。しかし今はそれは無い。その心配はない。何故かって?松下は動けないから。大怪我をしているから。だから松下は悔しそうに志方を見ていた。



「てめぇ…駿里を返せ。」

「後で返してやるから先に診察だ。お前重症なんだからよ。それを忘れんな。傷を治すことを最優先にしろ。」

「…分かってるよ。」

「だったら大人しくしとくんだな。」

「へいへい。」



これまでこんなに志方が頼れると思ったことがあっただろうか。いやなかったかもしれない。駿里は今日の志方はとても頼もしいと思った。だがこれは志方にしてみれば通常運転だ。駿里は中々志方の仕事姿を見ないからこそこうしてみたかっこいい姿をみて頼もしいと思うのかもしれない。駿里がそんなことを思っていると志方がある人物に話しかけた。



「啓司。話は済んだからこいつを見てやってくれ。」

「任せなさい。」



志方が言った聞いたことの無い名前に駿里は緊張した。初めての人だ。聞いたことの無い声。駿里が気になって後ろを振り返るとその啓司と呼ばれている人がいた。その姿を見て駿里は分かりやすく硬直する。志方の腕を掴み怯えている様子にも見えた。そんな駿里をみて啓司は頭をかいた。



「いやぁ、どうやら俺は駿里くんに凄く警戒されているようだね。」

「あ?」



啓司がそう言ったのを聞いて志方がそう言った。そしてその後腕の中にいる駿里を見ると啓司の言った通り駿里は警戒心丸出しにしていた。しかしそんな駿里をみて志方は駿里を攻めなかった。それどころか庇ってくれた。



「悪ぃ啓司。こいつほとんど外に出ねぇ上に俺らとしか関わってねぇからよ。だから警戒心を抱くのも無理はねぇんだ。あんまり人と関わらねぇからな。決まった奴としか喋らねぇしよ。だから頼む。許してやってくれ。駿里もわざとじゃねぇんだよ。」




志方は駿里の頭を撫でながらそう淡々と話した。その話を聞いて駿里は少し嬉しくなった。自分のことを志方がちゃんと見てくれていたから。そしてどうやら啓司という人物もかなりいい人のようで志方がそう言うと微笑んで駿里を見てくれた。



「分かってるよ志方。そもそも寛也さんに捕まった時点で俺は察してたからね。だから駿里くん。少しずつでいいんだよ。少しずつでいいから俺とも仲良くなろうね。」

「は、はい…!」



駿里がそう言うと松下と志方が笑ってきた。駿里が敬語を使うのはかなりレアだからかもしれない。いつも生意気な態度をとることが多い駿里が緊張して敬語を使っている。そんな姿をみて可愛らしいとも思ったのかもしれない。



「強ばりすぎだ駿里。肩の力をぬけ。」

「お前が怖い顔してっからだぞ啓司。」



志方、松下の順にそう言った。志方は駿里の肩を撫でたりして緊張を何とかして解いてやろうとするも駿里の緊張は解けなかった。それほどまでに新しい人と関わってないのだから無理もない。だから急ぐ必要ない。そう思った松下は啓司を責め始めた。そんな松下にも啓司は優しく笑っていた。



「はは、康二だけには言われたくないよ。」

「はぁ?喧嘩売ってんのかよ。」

「やめろお前ら。たく康二、お前はいつもなんでそんなに喧嘩腰なんだよ。あと啓司、お前はさっさと診察を終わらせろ。今は色々と時間がねぇからよ。」

「了解したよ。」



志方の言った意味を理解したのだろう。啓司は急ぐように仕事を始めた。まずベットに横になっている松下にかかっている毛布を退けた。それを駿里はじーっと見ていた。



「どうした駿里。顔怖ぇぞ。」

「…あ、えっと、何すんのかなって思って。」

「大丈夫。あいつは腕がいいから心配すんな。だから安心して見てろ。」


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