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遅咲きの花は大輪に成る
解決の1歩
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「俺、澪司さんに会ってきます。」
海斗はなにかが吹っ切れたようでそう決断したように立ち上がった。だが松下はそんな海斗の腕を掴んで引き止めた。
「まぁそれは少し待て。あいつは今組長と話してるだろうからな。」
「そうでした…っ、もう少し待ちます。」
会いたくて仕方がないだろうに海斗は文句一つ言わずにそう言うとその場に座った。海斗の性格的に我慢することが得意なのか…それともこの半年間で我慢するということが身についてしまったのかは分からないが海斗がいい子なことには変わりない。そんな海斗の頭を松下は少し乱暴に撫でた。
「てかあいつお前にはその呼び名で呼ばれることを許してんだな。」
「…どういう意味ですか?」
これまで澪司と呼ぶななんて1度も言われたことがない海斗は松下のその言葉の意味が分からなかった。分からず駿里の顔を見たが駿里は松下の言ったことが分かっている様子だった。海斗はなんだが悔しくなってしまう。1番長く一緒にいるのは自分なのに知らないことだらけだ…と。
「そんな顔すんな海斗。あいつが言わなかったのには訳がある。まぁ知りたいってなら俺が教えてやるがどうする?」
「知りたいです。」
「よし分かった。あいつはな、澪司って名が嫌いなんだ。」
「ど、どうして?」
聞いたことも無い話。嫌いなのに海斗はこれまで沢山その名前を呼んでしまった。もしかしたら何も知らずに圷を傷つけていたかもしれない。そう思うと海斗はショックを受けざるを得なかった。
「だから海斗、そんな顔しなくていい。いい話だから。圷がその名を嫌うのは親がつけた名前だからだ。あいつは自分の親を心底恨んでる。だから名前が嫌いなんだ。」
「おれ、そんな話聞いたことない…っ、」
「お前に余計な心配を与えたくなかったんだろうよ。だから組長が新しい名を付けようとしたんだがあいつはそれも何故か拒んだんだ。」
松下はそう言いながら駿里を抱きしめまた口に手を当てた。駿里自身なにか口出しをするつもりなんてなかったのにらそんなことをされて少し腹が立った駿里だが全ては海斗のためだ。だから駿里は大人しく松下に抱きしめられることにした。そんな駿里の頭にキスをすると松下は話を続けた。
「圷は圷なりに手放し難かったんだろうな。親の事完全に忘れちまうかもしれねぇから。」
「…………。」
そんな過去があるなんて知りもしない海斗は悔しくてたまらなくなった。いつもあんなに支えてもらっているのに何も返せていない。何一つ支えられていない。海斗は悔しくて悔しくて唇を無意識のうちに噛み締めてしまっていた。
「おい海斗。口開けろ。お前が怪我したら俺が圷に怒られちまう。それにその名をお前に呼ばせるってことはそれだけ圷の中でお前の存在がでかいってことだ。」
「…そんなの分からないじゃないですか。」
「いや分かるよ。俺には分かる。あいつは親の事になると震え上がる。1番酷い時は見ず知らずの親子を見るだけで悔しそうな顔をしてたんだ。それだけ辛かったのにお前にその名を呼ばれても平気でいられるってことは…もう言わなくても分かるだろ?」
さっきまで相当なショックを受けてい海斗の様子が変わった。今度は嬉しくてその嬉しさが溢れでてしまい涙をためている。それもそうだろう。海斗は圷が大好きなのだから。そんな海斗の頭を松下は優しく撫でた。
「お前があいつの中で消えることのなかった深い深い傷を消してくれたって事に俺は感謝してる。俺達にはどう頑張ってもできなかったことだ。特にあいつは自分の本当の感情を外に出さねぇからな。だから俺らにはあいつを救えなかった。海斗、ありがとな。」
「…そんな、俺のほうがお礼言いたいぐらいでっ、」
「海斗はいい子だな。そんで強い子だ。駿里と同じぐらいな。」
松下はそう言うと駿里の口を解放した。やっと解放された口が駿里は海斗に笑顔を向ける。そして話したかったことを話し始めた。
「さすがだね海斗。でも無理したらダメだよ。」
「よく言った駿里。けどお前はお前で海斗の事心配してる余裕ねぇんじゃねぇの?」
「え?」
松下のその発言は感動的な雰囲気が流れていたこの部屋をぶち壊した。それは駿里が松下の言葉の言った意味が分かったからだ。及川が原因で家出をしてしまったこと。その事だろう…。
「忘れたとは言わせねぇよ。まだ俺はお前にお仕置きしてねぇだろ?」
「っ、か、海斗の前で言うなっ!」
「お仕置き?駿里なんか悪いことしたの?」
「してないしてないっ、康二さんたらもう変なこと言わないでよっ!」
「あ?変なこと言ってんのはお前だろ?ほら、こっち来い。」
「やだっ、おろせっ!」
問答無用で抱きかかえられてものすごい力で拘束されてしまう駿里。当たり前に暴れて逃げようとするも松下の力に勝てるはずもなく無駄な抵抗として終わってしまう。その様子を海斗は少し驚いたように見ていた。それもそのはずだ。海斗はこの光景を初めて見たのだから。そんな驚きを隠せない海斗に松下は立ち上がり声をかける。
「海斗、多分そろそろ圷が来るだろうからそこで待っとけ。俺はこいつとやることがあるからよ。」
「わ、わかりました。」
「な、なんで、海斗っ、助けて、お、おねがいだからっ!」
駿里はそういい海斗の方に手を伸ばすがすぐに松下に捕まってしまう。そして海斗に背を向けたことをいいように松下は駿里のペニスを服越しに掴んだ。
「………っ!!」
「まぁ駿里落ち着けって。海斗は圷の事で忙しいんだよ。せっかく仲直りできそうなのに邪魔してんじゃねぇよ。てことだ海斗。あいつを頼むな。」
「もちろんです。」
そう言った時の海斗の顔が気になり駿里は覗き込んだ。その隙間から見えた海斗の顔はとても逞しく男らしかった。そんな顔を見せられてはもう助けを求めることなんて出来ない。邪魔をしたくない。だから駿里は大人しくすることにした。それに満足したのか松下は再び海斗に笑顔を向ける。
「男らしい顔できるじゃねぇか海斗。じゃあ俺らは楽しんでくるからお前はそこにいるんだぞ。」
「はい。」
「よし、行くぞ駿里。」
松下がそう言った次の瞬間彼の顔つきが変わった。怖くなった。いや怖いというよりは悪い顔をしたと言った方が正しいかもしれない。そして駿里はこの顔を知っていた。いつどんな時に松下がこの顔をするのか…ということも。
「たまんねぇなその顔。めいいっぱい可愛がってやるよ。」
海斗には聞こえないように小声でそう言った松下に駿里はたまらず暴れ出す。だが松下は足も止めてくれないし駿里が抵抗すればするほど楽しそうにしていた。
「おい駿里暴れんなって。組長が来る前に済ませてぇんだから大人しくしろ。」
「やだって、いやだっ、はなせ!!」
「いいから言う通りにしろ駿里。」
また遊ばれると思っていたがなんだか違う気がしてきた。その証拠に先程まで悪い顔をしていた松下の顔がまた変わったから。今度は真剣な顔だ。駿里はここで察した。さっきは揶揄っただけであって松下は海斗のためにこうしたんだ、と。海斗と圷を二人っきりにさせるために寝室に移動したんだ。
「…わかった。」
「あ?やけに大人しいじゃねぇか。いい子だな。」
「康二さんが本気の顔してたから。」
「さすがだな。駿里。」
「康二さんとどれだけ一緒にいると思ってんだ。」
「はは、そうだな。だったら話は早い。海斗の身に何かありそうだったら速攻ここを開けて乗り込むぞ。」
「うん。わかった。」
そう返事をすると駿里は寝室のドアに耳を当てた。松下も駿里同様に同じ行為をする。この光景だけを見たら2人は変出者だろう。だがそんな考えにも至らないほど2人は真剣だった。
「いいか?元音立てんじゃねぇぞ。」
「康二さんこそね。声でかいんだから。」
「あ?なんだと。お前最近ほんと生意気よな。」
「うるさいってばっ、静かに…!」
「あ、悪い悪い。」
そんな風に2人がいつも通り口喧嘩をしていると玄関の開く音が聞こえた。圷だ。2人に緊張が走る。だがこの場にいる人の中で1番緊張しているのは間違えなく海斗だろう。そしてついに圷がリビングまで来た。
「海斗。」
「…澪司さん。」
圷は海斗にその名を呼ばれ驚いたような顔をした。それもそのはず。海斗はしばらく圷の名を呼んでいなかった。それは悔しかったから。閉じ込められて好き放題体を触られいたぶられて悔しかったから。でもその悔しさは今はもうない。
「…寛也さんとの話は終わったの?」
「ああ。」
「お酒飲んだでしょ。」
「なんで分かる。」
「お酒臭い。しかも強いやつだこれ。」
「はは、さすがだ。」
「澪司さんがいっぱいお酒飲むから匂いでもう分かっちゃうよ。」
海斗は圷を見上げて微笑んだ。その顔が相当可愛かったのだろう。圷は海斗を強く抱き締めた。
「愛してる海斗。」
「俺もだよ。」
海斗がそう言うと圷から何度も何度もキスが降ってくる。顔全体にキスをされた。でもこのまま流されてはいけない。海斗には言わなきゃいけないことがあるから。だから…。
「ちょ、ちょっとまって澪司さん。」
「嫌なのか?」
「いやとかじゃないっ、そうじやなくて…。俺はやっぱり外に出たい。駿里と話したい。みんなと話したい。セックスばっかりだと身体も辛いからせめて夜だけがいいな…。」
「…………。」
やっと言えた海斗の本音。だけど圷の返事は帰ってこなかった。そんな圷の様子を見て松下は耐えきれず寝室から出てしまう。
「あ、ちょ、バカ康二さんだめだって!」
「うるせぇ。」
「邪魔しないって言ったのに…っ。」
駿里の言葉に耳も貸さず松下は寝室のドアを開けて圷らの所まで行ってしまった。そんな松下を見て駿里はため息を着く。だが当の本人の松下は理由があってその行為をした。駿里も勿論それは分かっている。だけど二人で話したほうがいい時もあるのだ。寛也と過ごしてきた日々がそれを教えてくれた。なのに…だから駿里はバカ康二とボソッと呟いた。そして案の定松下がリビングに出てしまったことで殺伐とした雰囲気になってしまう。
「おい圷。」
「ずっと盗み聞きしていい趣味だなお前は。」
「気づいてたのかよ。」
「気配が消せてねぇんだよ。まだまだだな。」
「それよりお前に俺は言いたいことがあんだよ。」
「俺はない。帰らせてもらう。来い海斗。」
圷は海斗の腕を引き抱きしめると海斗の顔さえも隠した。その行為に堪らず松下が声を荒らげた。
「おい!」
海斗はなにかが吹っ切れたようでそう決断したように立ち上がった。だが松下はそんな海斗の腕を掴んで引き止めた。
「まぁそれは少し待て。あいつは今組長と話してるだろうからな。」
「そうでした…っ、もう少し待ちます。」
会いたくて仕方がないだろうに海斗は文句一つ言わずにそう言うとその場に座った。海斗の性格的に我慢することが得意なのか…それともこの半年間で我慢するということが身についてしまったのかは分からないが海斗がいい子なことには変わりない。そんな海斗の頭を松下は少し乱暴に撫でた。
「てかあいつお前にはその呼び名で呼ばれることを許してんだな。」
「…どういう意味ですか?」
これまで澪司と呼ぶななんて1度も言われたことがない海斗は松下のその言葉の意味が分からなかった。分からず駿里の顔を見たが駿里は松下の言ったことが分かっている様子だった。海斗はなんだが悔しくなってしまう。1番長く一緒にいるのは自分なのに知らないことだらけだ…と。
「そんな顔すんな海斗。あいつが言わなかったのには訳がある。まぁ知りたいってなら俺が教えてやるがどうする?」
「知りたいです。」
「よし分かった。あいつはな、澪司って名が嫌いなんだ。」
「ど、どうして?」
聞いたことも無い話。嫌いなのに海斗はこれまで沢山その名前を呼んでしまった。もしかしたら何も知らずに圷を傷つけていたかもしれない。そう思うと海斗はショックを受けざるを得なかった。
「だから海斗、そんな顔しなくていい。いい話だから。圷がその名を嫌うのは親がつけた名前だからだ。あいつは自分の親を心底恨んでる。だから名前が嫌いなんだ。」
「おれ、そんな話聞いたことない…っ、」
「お前に余計な心配を与えたくなかったんだろうよ。だから組長が新しい名を付けようとしたんだがあいつはそれも何故か拒んだんだ。」
松下はそう言いながら駿里を抱きしめまた口に手を当てた。駿里自身なにか口出しをするつもりなんてなかったのにらそんなことをされて少し腹が立った駿里だが全ては海斗のためだ。だから駿里は大人しく松下に抱きしめられることにした。そんな駿里の頭にキスをすると松下は話を続けた。
「圷は圷なりに手放し難かったんだろうな。親の事完全に忘れちまうかもしれねぇから。」
「…………。」
そんな過去があるなんて知りもしない海斗は悔しくてたまらなくなった。いつもあんなに支えてもらっているのに何も返せていない。何一つ支えられていない。海斗は悔しくて悔しくて唇を無意識のうちに噛み締めてしまっていた。
「おい海斗。口開けろ。お前が怪我したら俺が圷に怒られちまう。それにその名をお前に呼ばせるってことはそれだけ圷の中でお前の存在がでかいってことだ。」
「…そんなの分からないじゃないですか。」
「いや分かるよ。俺には分かる。あいつは親の事になると震え上がる。1番酷い時は見ず知らずの親子を見るだけで悔しそうな顔をしてたんだ。それだけ辛かったのにお前にその名を呼ばれても平気でいられるってことは…もう言わなくても分かるだろ?」
さっきまで相当なショックを受けてい海斗の様子が変わった。今度は嬉しくてその嬉しさが溢れでてしまい涙をためている。それもそうだろう。海斗は圷が大好きなのだから。そんな海斗の頭を松下は優しく撫でた。
「お前があいつの中で消えることのなかった深い深い傷を消してくれたって事に俺は感謝してる。俺達にはどう頑張ってもできなかったことだ。特にあいつは自分の本当の感情を外に出さねぇからな。だから俺らにはあいつを救えなかった。海斗、ありがとな。」
「…そんな、俺のほうがお礼言いたいぐらいでっ、」
「海斗はいい子だな。そんで強い子だ。駿里と同じぐらいな。」
松下はそう言うと駿里の口を解放した。やっと解放された口が駿里は海斗に笑顔を向ける。そして話したかったことを話し始めた。
「さすがだね海斗。でも無理したらダメだよ。」
「よく言った駿里。けどお前はお前で海斗の事心配してる余裕ねぇんじゃねぇの?」
「え?」
松下のその発言は感動的な雰囲気が流れていたこの部屋をぶち壊した。それは駿里が松下の言葉の言った意味が分かったからだ。及川が原因で家出をしてしまったこと。その事だろう…。
「忘れたとは言わせねぇよ。まだ俺はお前にお仕置きしてねぇだろ?」
「っ、か、海斗の前で言うなっ!」
「お仕置き?駿里なんか悪いことしたの?」
「してないしてないっ、康二さんたらもう変なこと言わないでよっ!」
「あ?変なこと言ってんのはお前だろ?ほら、こっち来い。」
「やだっ、おろせっ!」
問答無用で抱きかかえられてものすごい力で拘束されてしまう駿里。当たり前に暴れて逃げようとするも松下の力に勝てるはずもなく無駄な抵抗として終わってしまう。その様子を海斗は少し驚いたように見ていた。それもそのはずだ。海斗はこの光景を初めて見たのだから。そんな驚きを隠せない海斗に松下は立ち上がり声をかける。
「海斗、多分そろそろ圷が来るだろうからそこで待っとけ。俺はこいつとやることがあるからよ。」
「わ、わかりました。」
「な、なんで、海斗っ、助けて、お、おねがいだからっ!」
駿里はそういい海斗の方に手を伸ばすがすぐに松下に捕まってしまう。そして海斗に背を向けたことをいいように松下は駿里のペニスを服越しに掴んだ。
「………っ!!」
「まぁ駿里落ち着けって。海斗は圷の事で忙しいんだよ。せっかく仲直りできそうなのに邪魔してんじゃねぇよ。てことだ海斗。あいつを頼むな。」
「もちろんです。」
そう言った時の海斗の顔が気になり駿里は覗き込んだ。その隙間から見えた海斗の顔はとても逞しく男らしかった。そんな顔を見せられてはもう助けを求めることなんて出来ない。邪魔をしたくない。だから駿里は大人しくすることにした。それに満足したのか松下は再び海斗に笑顔を向ける。
「男らしい顔できるじゃねぇか海斗。じゃあ俺らは楽しんでくるからお前はそこにいるんだぞ。」
「はい。」
「よし、行くぞ駿里。」
松下がそう言った次の瞬間彼の顔つきが変わった。怖くなった。いや怖いというよりは悪い顔をしたと言った方が正しいかもしれない。そして駿里はこの顔を知っていた。いつどんな時に松下がこの顔をするのか…ということも。
「たまんねぇなその顔。めいいっぱい可愛がってやるよ。」
海斗には聞こえないように小声でそう言った松下に駿里はたまらず暴れ出す。だが松下は足も止めてくれないし駿里が抵抗すればするほど楽しそうにしていた。
「おい駿里暴れんなって。組長が来る前に済ませてぇんだから大人しくしろ。」
「やだって、いやだっ、はなせ!!」
「いいから言う通りにしろ駿里。」
また遊ばれると思っていたがなんだか違う気がしてきた。その証拠に先程まで悪い顔をしていた松下の顔がまた変わったから。今度は真剣な顔だ。駿里はここで察した。さっきは揶揄っただけであって松下は海斗のためにこうしたんだ、と。海斗と圷を二人っきりにさせるために寝室に移動したんだ。
「…わかった。」
「あ?やけに大人しいじゃねぇか。いい子だな。」
「康二さんが本気の顔してたから。」
「さすがだな。駿里。」
「康二さんとどれだけ一緒にいると思ってんだ。」
「はは、そうだな。だったら話は早い。海斗の身に何かありそうだったら速攻ここを開けて乗り込むぞ。」
「うん。わかった。」
そう返事をすると駿里は寝室のドアに耳を当てた。松下も駿里同様に同じ行為をする。この光景だけを見たら2人は変出者だろう。だがそんな考えにも至らないほど2人は真剣だった。
「いいか?元音立てんじゃねぇぞ。」
「康二さんこそね。声でかいんだから。」
「あ?なんだと。お前最近ほんと生意気よな。」
「うるさいってばっ、静かに…!」
「あ、悪い悪い。」
そんな風に2人がいつも通り口喧嘩をしていると玄関の開く音が聞こえた。圷だ。2人に緊張が走る。だがこの場にいる人の中で1番緊張しているのは間違えなく海斗だろう。そしてついに圷がリビングまで来た。
「海斗。」
「…澪司さん。」
圷は海斗にその名を呼ばれ驚いたような顔をした。それもそのはず。海斗はしばらく圷の名を呼んでいなかった。それは悔しかったから。閉じ込められて好き放題体を触られいたぶられて悔しかったから。でもその悔しさは今はもうない。
「…寛也さんとの話は終わったの?」
「ああ。」
「お酒飲んだでしょ。」
「なんで分かる。」
「お酒臭い。しかも強いやつだこれ。」
「はは、さすがだ。」
「澪司さんがいっぱいお酒飲むから匂いでもう分かっちゃうよ。」
海斗は圷を見上げて微笑んだ。その顔が相当可愛かったのだろう。圷は海斗を強く抱き締めた。
「愛してる海斗。」
「俺もだよ。」
海斗がそう言うと圷から何度も何度もキスが降ってくる。顔全体にキスをされた。でもこのまま流されてはいけない。海斗には言わなきゃいけないことがあるから。だから…。
「ちょ、ちょっとまって澪司さん。」
「嫌なのか?」
「いやとかじゃないっ、そうじやなくて…。俺はやっぱり外に出たい。駿里と話したい。みんなと話したい。セックスばっかりだと身体も辛いからせめて夜だけがいいな…。」
「…………。」
やっと言えた海斗の本音。だけど圷の返事は帰ってこなかった。そんな圷の様子を見て松下は耐えきれず寝室から出てしまう。
「あ、ちょ、バカ康二さんだめだって!」
「うるせぇ。」
「邪魔しないって言ったのに…っ。」
駿里の言葉に耳も貸さず松下は寝室のドアを開けて圷らの所まで行ってしまった。そんな松下を見て駿里はため息を着く。だが当の本人の松下は理由があってその行為をした。駿里も勿論それは分かっている。だけど二人で話したほうがいい時もあるのだ。寛也と過ごしてきた日々がそれを教えてくれた。なのに…だから駿里はバカ康二とボソッと呟いた。そして案の定松下がリビングに出てしまったことで殺伐とした雰囲気になってしまう。
「おい圷。」
「ずっと盗み聞きしていい趣味だなお前は。」
「気づいてたのかよ。」
「気配が消せてねぇんだよ。まだまだだな。」
「それよりお前に俺は言いたいことがあんだよ。」
「俺はない。帰らせてもらう。来い海斗。」
圷は海斗の腕を引き抱きしめると海斗の顔さえも隠した。その行為に堪らず松下が声を荒らげた。
「おい!」
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