極道の密にされる健気少年

安達

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遅咲きの花は大輪に成る

仲直り *

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「圷…お前らしくもない。何してんだよ。海斗を離してやれって。ちゃんと話し合うことも大切なんだぞ。組長に言われたんじゃねぇのかよ。」

「黙れ。」

「海斗と俺が同じ空間にいんのが耐えられなくなったのか?」

「何を馬鹿なことを…。」



圷は今すぐにでもこの部屋を出たい様子だった。張り詰める空気に海斗も駿里も口を出すことが出来ない。圷の出す怒りオーラに怖気てしまったのだ。海斗なんて少し震えている。それもそうだろう。今海斗は圷に閉じ込められているのだから。距離が離れている駿里でさえ怖いのだから海斗の恐怖心はとんでもなく大きいはずだ。だが松下は違う。これまで同じように育ってきた事もありあの圷が怖くないようだ。



「また海斗に同じことすんのかよ。」

「お前にそんなことを言われる筋合いはねぇ。」

「あんだよ馬鹿。俺らは兄弟みたいなもんだろ。口出ししていんだよ。」

「…組長にもそう言われた。お前は馬鹿だってな。散々叱られた。」

「だったらなんでお前はそんなことしてんだよ…。」

「だからこうしてんだよ。」

「は?」

「俺はお前のいない所で…海斗と2人っきりで話がしたい。だからここを出る。それだけだ。これは俺達の問題だ。悪いな康二。俺は早くこいつに話したいことがあったから早く出ようとしただけであってこいつを苦しめるつもりは毛頭ない。ただ余裕がなくなってたのは事実かもしれねぇ。」

「………。」

「心配すんなって。そんな顔もすんな。俺はもう羽目を外さない。海斗を大切にする。」



その圷の言葉は嘘じゃなかった。元々嘘をつかない性格の圷。虐待された子供のほとんどは嘘をつく事が多い。なのに圷はそうはならなかった。松下はそんな圷を見て育った。良い奴になりたかった。圷ばかり寛也に褒められ悔しかったから松下も成長できた。だからこの恩を今返したかったけどその必要は無さそうだと分かり松下は下を向き微笑んだ。



「なんだよ。俺の出番なしかよ。」

「相変わらずだな康二。俺はお前のそういう性格が羨ましい。」

「何言ってんだ馬鹿…。」

「お互い様だ。」



松下には松下の良さがあり圷には圷の良さがある。2人とも全く違う性格だからこそお互いの性格が羨ましくなるところがあるのだ。松下はこの時久々に見た気がした。圷の裏のない純粋なこの笑顔を…。



「早く行けよ圷。海斗に話すことがあんだろ?部屋に戻れ。」

「ありがとな康二。駿里、お前にも感謝する。」



圷は松下の後ろに立ち尽くしていた駿里にもお礼をいいこの部屋を後にした。その姿を見ていた駿里は松下を見て話し始めた。



「圷さんってやっぱりよく分かんない。」

「俺もよく分かんねぇよ。」

「…そうなの?」

「あったりめぇだ。あいつは感情を表に出さねぇからな。辛い時は辛いと言えばいいものの…。」



確かにこれまで圷が自分のことで辛い顔をしたのを駿里は見た事が無いかもしれない。松下や駿里、寛也に危険が迫った時は誰よりも早く助けに行き情報を得る。人を助けるのは人一倍早い。だけどその分圷は自分を大切にしていなかった。そんなこれまでの圷を思い出し駿里はなんとも言えない気持ちになった。そんな駿里の頬を松下は摘んだ。



「いたいっ…!」

「でも辛くとも組長の存在があったからあいつは今まで生きてきたんだろうよ。だが今は違う。あいつは自分の意思で生きてる。守るべく存在が出来たからな。結果オーライじゃねぇか。祝福してやろうぜ。」

「そうだね。」



駿里がそういった時リビングに誰かが入ってきた。また圷が戻ってきたのだろう。二人はそう思ったが違った。入ってきた人物を見て松下は一目散に立ち上がり礼をする。



「康二、お前にしては上出来だな。」

「…ありがとうございます。」



いつから居たのだろうか。もしかしたら圷が入ってきた時からいたのかもしれない。それは寛也にしか分からない。だけど松下はその寛也の姿を見るとなんだが泣きそうになった。昔と変わりない。ずっと松下らの成長を見守る寛也の姿に。



「駿里。帰るぞ。」

「うん。康二さんまたね!」

「ああ。」



事が終わり駿里を連れ帰って行った寛也。相変わらず眩しい笑顔で駿里は松下にそう言った。その笑顔に松下はさらに胸を苦しませられた。2人が出ていき、たった1人になったこの部屋が寂しくてしばらく松下はその場に立ちつくした。



「圷、俺はやっぱりお前が羨ましい。愛した奴が振り向いてくれることなんてそうそう無いからな。」



松下はそうボソッと呟いた。松下のこの想いは一生叶うことがない。だけどだからってそう簡単に忘れられるものでもない。毎日のように会ってしまうのだから。だから松下は圷が羨ましい。羨ましくてたまらない。しかし仲間の幸せはやはり嬉しいものだ。これからも何かあったら助けてやる。松下はそう圷にメールをするとお酒を飲み始めた。まるで現実逃避をするように…。そしてその頃圷と海斗は家に着きソファに座って話をしていた。



「すまなかった海斗。」

「俺もごめんなさい。」

「お前は謝らなくていい。」



お互いに謝罪をする2人。だが圷は海斗の謝罪を受け入れなかった。それは海斗が悪くないからだ。だから謝らないで欲しい。そう伝えたのだ。けれど海斗も海斗で思いがあった。



「ううん。俺も悪いから。俺が澪司さんを不安にさせちゃったから…。」



そう言った海斗を圷は強く抱き締めた。そしてキスを落とす。そのキスが心地よくて海斗はされるがままになっていた。



「やはりお前に名前を呼ばれるのは心地がいい。」

「…え?」

「海斗。例えそうだとしても俺が悪い事には変わりねぇんだ。俺がお前を苦しめたことにも変わりない。だから俺が悪い。許してくれるか?」



そう言った圷の顔はどこか苦しそうだった。圷のそんな顔を海斗は久しぶりに見た。半年間見ることの出来なかった顔。いや逆に言えば半年間ずっと我慢させていたのかもしれない。圷は感情を表に出すのが苦手だから。きっと海斗のいない所で1人で苦しんでいた。でももうそんな思い絶対にさせない。



「当たり前だよ。許すに決まってる。」

「ありがとな海斗。」

「…俺の方こそありがとう。」



こうやって向き合って話すのは久しぶりだ。だから海斗は緊張してしまう。そんな緊張を解こうと圷は優しく海斗の頭を撫でた。



「それとこれからは好きにここから出ていい。だが連絡は必ず入れろ。それを約束できるか?」

「うん…!」

「でも悪いがマンション外には出せない。」

「わかってるよ。ありがとう。」



外に出れること。圷が自分を信じてくれたことが嬉しくて海斗は圷を抱きしめた。飛びついた。それを圷は当然のように受け入れ抱き締め返してくれる。暖かい。そんな風に海斗は圷の温もりにひたっていたがここで異変に気づく。圷の手が怪しい。背中を撫でるように動かしていたのにその手が段々と下に降りてゆく。



「…やりたいの?」

「愚問だな。俺はお前と身体を重ねたくないと思った日はない。出来ることならずっと繋がっていたい。それほどまでに俺はお前が好きなんだ。」

「俺も…だけど今日は身体辛いから1回だけね。」

「…1回。」

「身体が復活したらいっぱいしていいから。」

「分かった。」



圷はそう微笑むと海斗の唇に噛み付くように深いキスをした。海斗もそれに応えるように口を開ける。いつものように海斗はキスがぎこちない。だが圷はそれが幸せだった。幸せでたまらない。しかしいつもと違うこともあった。それは海斗が拒まないということだ。あまりにもキスをながくしすぎると海斗は嫌がり始める。だけど今日は嫌がらず必死に応えていた。その健気な姿に圷は思わず笑ってしまう。



「…何笑ってんの。」

「お前が可愛いから。」

「…可愛くないし。」

「お前は可愛い。可愛くて間違えて食べちまいそうな程にな。」

「なんだよそれ…。」

「無駄口はもう叩くな。俺に集中しろ。」



圷はそう言うと海斗をソファに押し倒した。そして服の中に手を入れゆっくりと体を触り始める。もちろん海斗はそれを拒まない。受け入れる。半年ぶりの愛のある行為だ。だから久々のこの海斗の顔に圷は興奮が抑えられなくなってしまう。



「悪い海斗。」

「…?」

「1回じゃ満足出来ねぇ。先に謝っとく。」

「え、うそっ、ダメだって…!」

「悪い。」



圷の顔がいつもと違う。まるで獣のようだ。本当に食い殺されてしまうのではないかと錯覚してしまうほどにその顔は恐ろしかった。海斗は当然逃げようとするが圷が逃がしてくれるはずもなく結局5回戦ほどやられた。明日海斗の足が使い物にならなくなるのは言うまでもないだろう。

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