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終章 魔王討伐へ

五十九話 魔王討伐

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レグルス達がアスフェンと魔王の動向を注視する。

『魔王が剣を、もう限界なんだ』

レグルスが魔王の消耗を感じとる。

『今、私達が一斉に飛び掛かれば……』

チュンチュンが動こうとするが、バルクが止める。

バルクは静かに首を振る。

誰も動こうとせず、アスフェンの背中を見ている。

「飽きてきたか?」

魔王がアスフェンに尋ねる。

「フン、飽きるも何も、最初から楽しくねぇよ。人の身体で派手にやりやがって」

アスフェンが肉包丁を握り締める。

「あの時みたいに一騎討ちといくか?それともそこの人間全員で総攻撃を仕掛けるか?どっちか好きな方を選べ」

魔王が魔剣を軽く振ってウォームアップする。

「一騎討ち以外やらせるつもり無いだろ」

アスフェンも今一度ストレッチを始める。

「なんだ、気付いてたのか」

魔王が笑いを漏らす。

『あと少しで……全てが決まる』

レグルスが固唾を飲んで見守る。

「もしアスフェンが負けたらどうすんのさ」

ベルフェゴールが言うが、アリスがすぐに答える。

「負けないよ」

アリスが確信したように言う。

「師匠は絶対に負けないよ。弟子の私が言うんだから間違いない」

『う、プレッシャーが……』

アスフェンの胃がキリキリ痛む。

『願わくば倒しきりたい。無理だった場合は……アリス達なら大丈夫か』

アスフェンが『白夜』の構えをとる。

「恨みっこなしだぞ」 

魔王も魔剣を構える。

異様な緊張感があたりに立ち込める。

その緊張感は司令官達のいる指令部にも伝わっていた。

『せ、世界の命運が決まる……!』

司令官が帽子を取って跪いて祈りを捧げ始める。


⭐⭐⭐

アスフェンと魔王が睨みあう。

あたりが静寂に包まれる。

魔王が動いた。

アスフェンも動いた。

猛スピードで二人が攻撃を繰り出す。

魔王が魔剣を振り下ろしたが、アスフェンが避けて魔王の腕を切り落とす。

『……また敗けか』

魔王が微笑む。

アスフェンの猛攻が魔王の命を奪い取る。

「た、楽しかった……次こそ倒して……やるよ」

魔王の首から血が吹き出す。

「もう人間を依り代にすることはできない。別の何かに転生するのが関の山だ」

「それで良い……俺の意思を……継ぐものは……いつか現れる」

「いつでも相手してやるよ」

アスフェンが頷く。

「ふ、ふふ……」

魔王身体から青い煙が立ち上る。

アスフェンがレグルスたちの方を向いて頷いて親指を立てる。

「や、やったのか……?」

「やったんだ!俺達の勝ちだ!」

「やったー!」

パンタロンが地べたに座り込む。

「寿命が縮むかと思ったぜ」

「生きている……このイケメソ、生きているぞ!」

イケメソが生の喜びにうち震える。

レグルス達が飛び上がって喜ぶ。

「まだだよ」

アスフェンがケラスターゼの身体を抱き抱えて此方に歩いてくる。

「喜ぶにはあと一人いないとな」

バルク達は困惑するが、アリスとレグルスは笑って頷く。

「『オーディナリー』で」

「お迎えしましょう!」


 

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