魔王を倒した勇者

終章 魔王討伐へ

五十八話 英雄がやる気出した

「炎天斬」

アリスが『加速スキル』をフルに使用して剣を振り下ろす。

「カマルを殺したのはお前か？」

魔王が避けながら尋ねる。

「あの氷使ってた奴か？殺したよ」

アリスが笑みを浮かべて答える。

『カマルを一人で屠ったのか……群れると矮小に成るものだと思っていたが、そうでもないようだな』

魔王が斬撃を放つが、切断能力は格段に落ちている。

「痛いけど……問題ない！」

アリスが魔王に突っ込む。

レグルス達も総攻撃を仕掛ける。

「まて！」

アスフェンが叫ぶ。

しかし遅かった。

結界が展開される。

無数の斬撃がレグルス達に浴びせられる。

「まずい……！」

レグルスが女神之時間ディナスタイムで時間を止める。

「急いでアスフェンのところまで皆を逃がさないと……」

レグルスがパンタロンとベルフェゴール以外の人間をジャガウォックに抱えさせて走り出す。

時間が動き出す。

ギリギリで結界の外へ飛び出す。

「威力が落ちているとはいえ、あんだけ浴びたらズタズタになっちゃうわ」

アリスが剣を構える。

「おい、何か来るぞ！」

バルクが慌てる。

魔王が焔の弓をつがえている。

「少々遊び過ぎたようだ」

地面が赤くなっていく。

ブリエッタが歩きだすが、倒れ込んだ。

『出血がひどい、止血するのが遅れたのがまずったな』

倒れたブリエッタの隣をアスフェンが駆け抜ける。

『行けアスフェン！この闘いを終わらせに！』

ブリエッタが意識を失う。

アスフェンが物凄い勢いで魔王に殴りかかる。

鳩尾に拳がめり込む。

「グハッ！」

魔王が血を吐いて吹っ飛ぶ。

「やっとやる気を出したか？俺を倒した英雄よ！」

魔王とアスフェンが死力を尽くしてぶつかり合う。

目にも止まらぬ攻撃が地を砕き、天を震わす。

互いに一歩も引かない。

ひたすらに有効打を叩き込む。

「ぐっ」

魔王が押され出す。

左手が魔王の頸をつかむ。

「なっ、この身体の魂は消えているはず……！」

魔王が驚愕する。

「お前は復活するタイミングが悪かったんだよ、もっと遅かったら十五年前のようなことにはならなかっただろうな」

アスフェンが魔王の目をじっと見る。

魔王の口が動く。

「ちょっとアスフェン、早くこの魔王倒してよ。身体自由にできないんですけど！」

魔王がさらに驚愕する。

「そんなバカな、この身体の人格が、魂が戻ってきているだと？」

魔王がアスフェンから距離をとる。

「あとはお前を殺すだけだな」

アスフェンが肉包丁を構える。

魔王もケラスターゼが使っていた魔剣を顕現する。


⭐⭐⭐

次回、決着