上 下
116 / 309
第三部 ルートン王国交換留学編

騎士達の後ろに海賊と繋がりがあると黒い噂されている伯爵が現れました

しおりを挟む
遅れてやって来た騎士達は、謝るどころか、あろうことか私に剣を構えたのだ。

このルブラン公爵家の私に。

私に剣を向けるなんて、死にに来たようなものだ。

私にぶっ殺されても文句は言えないはずだ。

やってもいいわよね?

私は爆裂魔術をぶっ放す気満々だったのだ。

「何か言った?」
私は返答いかんによっては魔術をぶっ放そうと思ったのに、

「姉上、早まらないで!」
慌てたジェドが、止めなくて良いのに私を止めてきたのだ。

「貴様ら、頭が高いわ。こちらにおわすお方は、エルグラン王国の第二王子殿下のシルヴァン殿下であるぞ。不敬罪で処刑されたいのか?」
言わなくても良いのに、こういう時に限ってモーリスが前に出て水戸黄門の助さん格さんみたいに印籠を取り出したようにヴァンを紹介したのだ。

「えっ」
流石に王族と聞いて騎士達は少し動揺した。

その騎士たちの前にヴァンが前に出た。

「貴様らどういうことだ? 貴様らの行動が遅いから、仕方なしにルブラン公爵令嬢が助けられたのだ。今までどこにいたのだ。ひょっとして、物陰から高みの見物をしていたのではないだろうな?」
ヴァンが騎士達に向かって言い放った。

「何をおしゃるのです。そのような訳は無いではありませんか」
「ふんっ、どうだか。どのみち貴様らの行いについては、王太子殿下にはっきりとクレームを上げさせてもらおう」
ヴァンが言い切ったのだ。

「いや、少しお待ちいただきたい」
騎士達は慌てだした。

「状況把握するのに手間取りまして」
「ここまで来るのに時間がかかってしまったのです」
なんか必死に口先だけで誤魔化そうとしている。


何かめちゃくちゃ、むかつく。絶対にこいつらアルメリア王国とぐるだ。この場で後顧の憂いをなくすために、爆裂魔術をぶっぱなせたのに! 
私は邪魔したジェドらにも少しお冠だった。

「ふんっ、本当にルートンの騎士はなっていないわね。海賊を恐れているのか終わった頃に出てくるなんて! それも出てきた途端、海賊の味方をしたわよ。ねえ、テオドラ」
私はテオドラに振ってみた。これに騎士どもが怒ってきたら、一撃必殺なのに!

「いや、フラン、私は騎士様をそこまでは疑っていないわ」
テオドラが否定するけれど、

「な、なんだと!」
騎士が乗ってきた。やった、これでやれる!

私は喜んだのに、
「ちょっと姉上、本当に騎士達を挑発するのは止めて」
ジェドに抱きついて止められるし、
「そこの騎士、焼き殺されたいのか?」
ヴァンは挑発ともとれない事を言ってくれるんだけど。

そこへ大きな蹄の音を立てて、馬が駆け込んできた。

「あっ、騎士団長」
騎士達が嬉々として喜んだ。

しかし、騎士団長は私を見ると、直ちに私に跪いたのだ。

「この度は色々ご足労賜り、本当に有難うございました」
騎士団長の態度に騎士達は唖然としていた。騎士達は騎士団長は自分らの味方をしてくれると思っていたのだろう。

「この騎士達、終わった後にのんびりと現れて、海賊を差し置いて私達を犯人扱いしてくれたんだけど」
私がぶすっとして言うと。

「いえ、騎士団長、これには訳がありまして、どう見てもやられていたのは海賊の男たちで、この者たちは全く被害を受けていなかったので、思わず、そちらが犯人だろうと」
「フランソワーズ様は、陛下がお認めになられた海賊退治の英雄であらせられるぞ。海賊風情が太刀打ちできる訳はなかろう」
騎士団長は言い切った。

「しかし、団長」
「お前ら、学園の警備に回していたはずではないか。そもそも何故ここにいるのだ」
騎士団長がきつい目で見出した。

「いえ、不審な者たちの動きが見えたのでそれを付けてきたのです」
何か後付けみたいだ。

「そのようなことが、言い訳として通用すると思うのか。貴様らの動きは怪しいと元々、内偵が進められていたのだ」
「な、なんですと」
「それは濡れ衣です」
「団長は仲間の我々の言うことを聞かずに、外国のエルグランの奴らの言うことを聞かれるのか」
騎士達が文句を言ってきた。

騎士団長も元々怪しい奴を警備に回すのはどうかと思う。
ひょっとして私達を使って不平分子を一掃しようと思っていたのだろうか?
それであればそうと元から言って欲しい。私が騎士団長にも不満を覚えた時だ。

「そうですぞ。騎士団長。この者達はルートン王国に忠実な騎士達ですぞ」
そこに何故かいきなり、後ろからコフレンテス伯爵が現れたのだ。アルメリア王国側だと目される伯爵だ。こいつが黒幕か?

でも、本人が出てくるとはどうしたんだろう? 普通は情勢が悪いと見るととかげの尻尾きりで、手下だけ切り捨てて逃げるはずなのに。この情勢で自ら出てくるなんて、おかしい。

だって、手下の海賊どもは捕まっているのだ。そんな所へのこのこ出てくれば、自分が犯人だと言っているようなものだ。でも、こいつが自ら自首して来るはずは絶対にない。

その上、この伯爵はとても自信たっぷりだ。

何か勝算があるんだろうか?
私はとても不安になった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】薔薇の花をあなたに贈ります

彩華(あやはな)
恋愛
レティシアは階段から落ちた。 目を覚ますと、何かがおかしかった。それは婚約者である殿下を覚えていなかったのだ。 ロベルトは、レティシアとの婚約解消になり、聖女ミランダとの婚約することになる。 たが、それに違和感を抱くようになる。 ロベルト殿下視点がおもになります。 前作を多少引きずってはいますが、今回は暗くはないです!! 11話完結です。

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

【完】前世で種を疑われて処刑されたので、今世では全力で回避します。

112
恋愛
エリザベスは皇太子殿下の子を身籠った。産まれてくる我が子を待ち望んだ。だがある時、殿下に他の男と密通したと疑われ、弁解も虚しく即日処刑された。二十歳の春の事だった。 目覚めると、時を遡っていた。時を遡った以上、自分はやり直しの機会を与えられたのだと思った。皇太子殿下の妃に選ばれ、結ばれ、子を宿したのが運の尽きだった。  死にたくない。あんな最期になりたくない。  そんな未来に決してならないように、生きようと心に決めた。

ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました

杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」 王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。 第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。 確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。 唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。 もう味方はいない。 誰への義理もない。 ならば、もうどうにでもなればいい。 アレクシアはスッと背筋を伸ばした。 そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺! ◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。 ◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。 ◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。 ◆全8話、最終話だけ少し長めです。 恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。 ◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。 ◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03) ◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます! 9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!

【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。

曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」 「分かったわ」 「えっ……」 男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。 毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。 裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。 何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……? ★小説家になろう様で先行更新中

王命を忘れた恋

須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』  そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。  強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?  そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。

とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」 成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。 「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」 ********************************************        ATTENTION ******************************************** *世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。 *いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。 *R-15は保険です。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。