完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな

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第二章

お嫌いですか?

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 邸の玄関前へと馬車が止まった。どうやらローゼン家へ到着した様だ。表からデペッシュが馬車の扉を開いてくれたので降りなければならない。

「……ティアナ?」

 俯いて座席に腰掛けたまま一向に立ち上がらないあたしに不思議そうにアルスト殿下が声を掛ける。

「……殿下、お疲れの所大変申し訳ありませんが……少しだけ、お時間頂いても宜しいですか?」
「え?」
「数分で構いませんの」

  殿下は不思議そうにしながらも馬車の扉を閉じる。

「で、どうしたの? ティアナ、何かあった?」

 優しい口調であたしに問いかけてくれる殿下の顔を、あたしは意を決して見上げた。そこには心配そうな表情の殿下のお顔――。

「っ……ど……して…………れ……ださり……せん……の」
「えっ……ティ、ティアナ!?」

 何とか気持ちを絞り出したけど、それは途切れ途切れで情けなくも声も震えてしまっていた。胸が苦しくて涙が溢れそうだったけど、それを押し殺して何とか殿下へあたしの気持ちを伝えたかった。寂しいなんて我儘かもしれない。婚約者とは言え相手はこの国の王太子なのだ。

「わたくしの事、お嫌いになられましたか?」

 もしそうなら、それはそれで仕方ないと受け入れよう。例え愛されない王太子妃になるしかなかったとしても殿下の傍に居られるのなら……。思考はどんどんと悪い方へと向かってしまう。

「ええっ!? なる訳ないだろう、何がどうなったらそんな事になるんだ」

 驚いてアタフタし出した殿下の姿を見てこちらも困惑する。

「違う……の、ですか?」
「天地がひっくり返ってもあり得ない、私はティアナを愛しているよ」
「ですが……全然、わたくしに触れて下さらないじゃないですか」
「えっ」
「いつもでしたら必要以上にスキンシップをされる殿下が、全く触れて下さらない上に会話もあまりして下さらないから……ですから、わたくし、てっきり……」
「“必要以上に”って……」

 殿下は少し困った様子で何かを考えあぐね――言い難そうに弁明を始めた。

「私の行動がそう誤解させてしまったのなら申し訳ない。だがティアナが心配している様な事は全くといって無いから安心して欲しい」
「そう、なのですか?」
「今すぐにでもちゃんと誤解を解きたいのだが、いかんせん今は時間が無い。申し訳ないが明日の朝まで待ってくれないか?」

 そう言い終わるや否やあたしは馬車を下ろされ「明日一番で来るから!! 絶対心配する事はないと約束する!」と叫びながら、殿下の乗る馬車は王宮へと走り去って行った。呆然と玄関前で佇むあたし。

 取り敢えずは嫌われた訳ではなかったという事……でいいのかしら。いまいちよく分からないまま、玄関まで迎えに来たマイリーに「ただいま」と告げた。
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