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アザリウム王国の闇

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 そもそも、何故アザリウム王国に聖女や勇者そして魔王が現れるのか。

 その根源は何なのか。

 他国からすれば、疑問なことだ。

 魔王を倒した聖女と勇者が結ばれて国を継ぐ。

 だが、調べようにも情報は完全に隠蔽され、アザリウム王国の貴族にすら分からない。

 疑問に思って調べようとした者は、魔王となり、勇者となった息子に倒された。

 アザリウム王国の王族や公爵家では、調べてはならないこと。
 それが暗黙の了解となった。

 それに、それがあったからといって何か問題が起きたとか、アザリウム王国が有利に立ったとか、そんなことがないのだ。

 つまりは完全に、アザリウム王国内だけの事情である。

 他国はこの時点で、調べることをやめた。

 調べる意味がないからだ。
自分たちに害がないなら、アザリウム王国内で勝手にやっていればいい。

 そう判断した。

 これは半分正しくて、半分は間違いであった。

 アザリウム王国外には害がない。
それは正しい。

 魔王が他国に現れることはない。
そしてアザリウム王国に現れた魔王が、他国に侵攻することもない。

 全てがアザリウム王国内で完結される。

 それは正しい。

 だが、アザリウム王国が他国より有利に立つことがない。

 それに異を唱える者はいるかもしれない。

 そもそも、他国に有利になることもなく、自国に現れた魔王が他国を脅かすこともない。

 なら魔王が現れるのか。

 何故、勇者と聖女が現れ魔王を倒すのか。

 何故、女神がひとりの少女に聖女という力を与え、神託を下ろすのか。

 何故、王家に勇者が、そして聖女と勇者の縁者が魔王となるのか。

 多くの疑問の上に、アザリウム王国には全く災害がないという事実がある。

 地震もなければ洪水もない。
干ばつもなければ、大雨の被害もない。

 多少、寒い季節や地方はあっても、雪が降り積もり農作物が育たないこともない。

 逆に多少暑い季節や地方はあっても、水不足や農作物が暑さで枯れることもない。

 そう。
全くの災害がないのだ。

 そしてその異常性に、アザリウム王国の人間は気付いていない。

 災害がないということは、食に困ることがないということ。

 農作物は無難に育ち、それなりの安価で国民に届く。

 育たなかったりすることがないから、農家も一定の値段で売れれば困ることはない。

 家畜も、特別手をかけなくても普通に育ち、普通に売れる。

 を望まなければ、苦労をせずに、普通に暮らしていくことができる。

 それがアザリウム王国だった。

 そして、それが異常なことに誰も気付かない。

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