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交流は続く
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「ごきげんよう、レーチェル様」
王宮の薔薇園で休憩しようかと出向いた私は、そこでぼんやりと空を眺めているレーチェル王女を見つけた。
レーチェル王女は、齢八歳の割に聡明で、こんなふうにぼんやりしている姿を見るのは珍しいことだった。
「あ、ローズマリア様。ごきげんよう」
「こんなところでどうされたのですか?」
ここは王族しか入れない居住区だけど、そんなところとはいえレーチェル様がひとりでいるのは珍しい。
周囲を見渡したけど、護衛の姿がないのだ。
「護衛の方は?いくら居住区だとしても危険ですわ」
まぁ、ロイド殿下もジェイド殿下もレーチェル様のことをとても可愛がっているから、親族同士の争いとかないだろうけど。
「少し・・・ひとりになりたくて。大丈夫です。王家の影は付いてますから」
ザハード王国の王家には、影と呼ばれる護衛がいるらしい。
らしいというのは、会ったことがないから。
ロイド曰く、影が表に出るのはおかしな話でしょ?ということらしい。
影の顔を知ってるのは、王族だけだとか。
八歳とはいえ、女の子だし、王族だし、色々とあるのかもしれない。
でも、ハキハキ系の彼女がこんなふうに物思いに耽っているのを見ると、心配になってしまう。
「何かございましたの?私でよければお話を伺いますわ。もちろん、お邪魔のようならすぐに立ち去ります」
「ありがとうございます、ローズマリア様。邪魔だなんて、そんなこと絶対ありません。あの・・・では少し話を聞いていただけますか?」
「もちろんですわ」
私はいそいそと、レーチェル王女の隣に腰掛けた。
ちなみに私は、正真正銘のひとりである。
侍女役のヒルデは現在、サリフィルと交流中である。
まもなくザハード王国を辞する予定なので、ヒルデには逢瀬を楽しんでもらっている。
そろそろ一度、アザリウム王国に帰国する予定なのだ。
サリフィルがマハール王国に帰国するのに合わせて、戻る予定にしていた。
だから、カイルは帰国準備中だ。
タチアナのことも、一度ちゃんとお祖母様と話をしておきたい。
私はクリフトフお兄様とタチアナを、婚約させるつもりはない。
「それで、どうされたのですか?」
尋ねると、レーチェル王女は少し躊躇った後、口を開いた。
「あの・・・多分、あの気のせいだと思うんです。憧れというか、そういうものだと・・・」
憧れ?え?
それってもしかして・・・
「ローズマリア様のお兄様・・・セニヨン様のお姿が頭から離れないんです。私、私はサリフィル・ホリック様の婚約者(役)なのに!」
え、ええー?
王宮の薔薇園で休憩しようかと出向いた私は、そこでぼんやりと空を眺めているレーチェル王女を見つけた。
レーチェル王女は、齢八歳の割に聡明で、こんなふうにぼんやりしている姿を見るのは珍しいことだった。
「あ、ローズマリア様。ごきげんよう」
「こんなところでどうされたのですか?」
ここは王族しか入れない居住区だけど、そんなところとはいえレーチェル様がひとりでいるのは珍しい。
周囲を見渡したけど、護衛の姿がないのだ。
「護衛の方は?いくら居住区だとしても危険ですわ」
まぁ、ロイド殿下もジェイド殿下もレーチェル様のことをとても可愛がっているから、親族同士の争いとかないだろうけど。
「少し・・・ひとりになりたくて。大丈夫です。王家の影は付いてますから」
ザハード王国の王家には、影と呼ばれる護衛がいるらしい。
らしいというのは、会ったことがないから。
ロイド曰く、影が表に出るのはおかしな話でしょ?ということらしい。
影の顔を知ってるのは、王族だけだとか。
八歳とはいえ、女の子だし、王族だし、色々とあるのかもしれない。
でも、ハキハキ系の彼女がこんなふうに物思いに耽っているのを見ると、心配になってしまう。
「何かございましたの?私でよければお話を伺いますわ。もちろん、お邪魔のようならすぐに立ち去ります」
「ありがとうございます、ローズマリア様。邪魔だなんて、そんなこと絶対ありません。あの・・・では少し話を聞いていただけますか?」
「もちろんですわ」
私はいそいそと、レーチェル王女の隣に腰掛けた。
ちなみに私は、正真正銘のひとりである。
侍女役のヒルデは現在、サリフィルと交流中である。
まもなくザハード王国を辞する予定なので、ヒルデには逢瀬を楽しんでもらっている。
そろそろ一度、アザリウム王国に帰国する予定なのだ。
サリフィルがマハール王国に帰国するのに合わせて、戻る予定にしていた。
だから、カイルは帰国準備中だ。
タチアナのことも、一度ちゃんとお祖母様と話をしておきたい。
私はクリフトフお兄様とタチアナを、婚約させるつもりはない。
「それで、どうされたのですか?」
尋ねると、レーチェル王女は少し躊躇った後、口を開いた。
「あの・・・多分、あの気のせいだと思うんです。憧れというか、そういうものだと・・・」
憧れ?え?
それってもしかして・・・
「ローズマリア様のお兄様・・・セニヨン様のお姿が頭から離れないんです。私、私はサリフィル・ホリック様の婚約者(役)なのに!」
え、ええー?
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