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愚かなのは母親似

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「本当に申し訳ございません!」

 平身低頭の侯爵と違って、夫人の方は顔にありありと不満が出ていた。

 離れて見てる私が気付くんだから、目の前の王妃様が気付かないわけがない。

 王妃様はチラリと夫人を見ると、これ見よがしにため息を吐いた。

「悪いと思っているのは、侯爵だけみたいね。それに教育が出来ていないのは令嬢だけでないみたい」

「なっ・・・!どっ、どういう意味でしょうか?王妃殿下といえど失礼ですわっ!」

「ッ!サンドラ!黙りなさい!」

「旦那様?どうしてですの?」

 バッカス侯爵の制止にも、夫人は納得がいかない様子だ。

 どういう意味も何も、そのまんまなんだけど・・・

 心臓強いわね、あの夫人。
間違いなくタチアナはあの夫人の娘だわ。そっくり。

「では聞くけれど、バッカス侯爵夫人。お茶会でも夜会でもなく、招待されたわけでもなく、いきなり王宮に押しかけて、面会許可も取れていない相手を呼べと門番に無理難題を言うのは、常識ある行動なのかしら?侯爵ならともかく、夫人ですら許可なく立ち入りのできない王宮に、ご令嬢がやって来て通されると思うなんてね。で?それのどこが教育が出来ているのかしら?」

「そんなっ。タチアナはラーナに会いに来たのだと聞きましたわ。ラーナは従妹ですのよ。身内に会いたいというのに、どうしてそんな酷いことをおっしゃるの」

 わぁ!理論もタチアナと一緒だ。
そっかぁ。タチアナは母親の遺伝子百パーセントで育ったんだぁ。

「たとえロイドの従兄弟が公爵令息だとして面会を求めたとしても、許可なく面会は出来ないわ。それがなの。感情論は必要ないのよ。キチンと面会許可を取って許可されれば会えるし、取らなければ会えない。それだけのことよ」

「で、でも、あの子は子爵令嬢で・・・」

「身分は関係ないの。王宮に仕えているということは、そういうことなのよ。そして、貴女のいうピスエア子爵令嬢は、王女レーチェルの侍女。つまりはレーチェルの許可がなければ、誰とも会うことは叶わないわ」

 他の国では違うだろうが、ザハード王国ではそういう決まりごとなのだ。

 たとえ一書官だとしても、勤務中は外部の人間と許可なく会うことは出来ない。

 王宮内のことは、些細な噂話にしても外部に漏らすと罪に問われるし、王宮勤務も外される。

 それだけの給金は与えられる代わりに、制約が多いのだ。

 というか、この国に来たばかりの私が知ってることを、何故にこの国の侯爵夫人や侯爵令嬢が知らないのよ。
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