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それぞれの事情
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まさか侯爵夫人が、自国の決まり事を理解していないとは思わなかった。
王妃様、どうするのかしら?
これ以上、酷い発言が出れば、バッカス侯爵家ものものを罰せなければならない。
侯爵自身はまともそうだけど、嫁と娘が酷すぎるわね。
「誰か、バッカス侯爵令嬢のところへ夫人を連れて行きなさい」
「はっ!」
控えていた騎士が、すぐに夫人を誘導する。
夫人も何の違和感も持たずに付いて行ったけど・・・貴女の娘、客室で軟禁されてるんだけど。
そしておそらく、貴女も同じ目にあうんだけど。
私は王妃様がどうするつもりなのか、気になって仕方なかった。
今の時点で、タチアナと侯爵夫人を罰することは微妙である。
騒いだことに関しての、注意喚起程度だと思うのよね。
ただ、今のまま変わらない二人だと、三年後にロイドとラーナが婚姻するときに揉めることになりかねない。
それまでにタチアナをどこかに嫁にやる計画だけど、嫁に行ったとしても何か言って来そう。
残ったバッカス侯爵に、王妃様は静かに語りかけた。
「貴方も苦労が絶えないわね」
「・・・申し訳ございません」
「それで?令嬢は修道院にでも入れて教育し直せば、まだ修正できるかもしれないけど、夫人は無理よ。未成年だから許せることも、夫人になれば許容できなくなるわ」
確かにまだ今なら、許容ギリギリなのだろうけど、私やラーナに何かしたら無罪放免というわけにはいかないわよね。
でも王妃様、侯爵にはどこか同情的よね。
「離縁は望まないの?口をきいてあげてもいいのよ」
「いえ・・・父の作った借金を、サンドラのお父上であるアクド侯爵が請け負ってくれたのは紛れもない事実です。あの借金がなくなったからこそ、妹はピスエア子爵に嫁ぐことが出来ました。その恩を仇で返すことはできません」
妹がピスエア子爵に、嫁いだ?
ラーナの母親は侯爵の妹ってこと?
原因はよくはわからないけど、前侯爵が作った借金を肩代わりしてもらう代わりに、バッカス侯爵はあの夫人と結婚したということかしら。
真面目な気持ちは分かる。
でも、あの夫人の態度を見てると、侯爵は普段から相当苦労してるんじゃないかしら。
「ロイドの婚約者は、他国の公爵令嬢よ。つまりは、ザハード王国だけの問題じゃなくなるの。それを理解させられる?次に何かすれば、処罰は避けられないわ。その覚悟はあるの?」
「覚悟・・・しております。サンドラは私の妻、タチアナは私の娘です。最後まで、向き合うつもりです」
「そう。分かったわ。客室に案内させるから、連れて帰りなさい。侯爵、どうしても無理だと思った時は、いらっしゃい。可能な限りは手を貸すから。いいわね?」
王妃様、どうするのかしら?
これ以上、酷い発言が出れば、バッカス侯爵家ものものを罰せなければならない。
侯爵自身はまともそうだけど、嫁と娘が酷すぎるわね。
「誰か、バッカス侯爵令嬢のところへ夫人を連れて行きなさい」
「はっ!」
控えていた騎士が、すぐに夫人を誘導する。
夫人も何の違和感も持たずに付いて行ったけど・・・貴女の娘、客室で軟禁されてるんだけど。
そしておそらく、貴女も同じ目にあうんだけど。
私は王妃様がどうするつもりなのか、気になって仕方なかった。
今の時点で、タチアナと侯爵夫人を罰することは微妙である。
騒いだことに関しての、注意喚起程度だと思うのよね。
ただ、今のまま変わらない二人だと、三年後にロイドとラーナが婚姻するときに揉めることになりかねない。
それまでにタチアナをどこかに嫁にやる計画だけど、嫁に行ったとしても何か言って来そう。
残ったバッカス侯爵に、王妃様は静かに語りかけた。
「貴方も苦労が絶えないわね」
「・・・申し訳ございません」
「それで?令嬢は修道院にでも入れて教育し直せば、まだ修正できるかもしれないけど、夫人は無理よ。未成年だから許せることも、夫人になれば許容できなくなるわ」
確かにまだ今なら、許容ギリギリなのだろうけど、私やラーナに何かしたら無罪放免というわけにはいかないわよね。
でも王妃様、侯爵にはどこか同情的よね。
「離縁は望まないの?口をきいてあげてもいいのよ」
「いえ・・・父の作った借金を、サンドラのお父上であるアクド侯爵が請け負ってくれたのは紛れもない事実です。あの借金がなくなったからこそ、妹はピスエア子爵に嫁ぐことが出来ました。その恩を仇で返すことはできません」
妹がピスエア子爵に、嫁いだ?
ラーナの母親は侯爵の妹ってこと?
原因はよくはわからないけど、前侯爵が作った借金を肩代わりしてもらう代わりに、バッカス侯爵はあの夫人と結婚したということかしら。
真面目な気持ちは分かる。
でも、あの夫人の態度を見てると、侯爵は普段から相当苦労してるんじゃないかしら。
「ロイドの婚約者は、他国の公爵令嬢よ。つまりは、ザハード王国だけの問題じゃなくなるの。それを理解させられる?次に何かすれば、処罰は避けられないわ。その覚悟はあるの?」
「覚悟・・・しております。サンドラは私の妻、タチアナは私の娘です。最後まで、向き合うつもりです」
「そう。分かったわ。客室に案内させるから、連れて帰りなさい。侯爵、どうしても無理だと思った時は、いらっしゃい。可能な限りは手を貸すから。いいわね?」
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