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ゲームの舞台の学園へ
僕と王女《ルイス視点》
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僕がアナスタシア・フォレスト王太女殿下と出会ったのは、学園に入学した時だ。
新入生代表だった僕は、次席のアナスタシア王太女殿下から声をかけられたのだ。
「あなた、アリス・ビスクランド様のお兄様よね?」
どうやら王女殿下はアリスのことを知っているらしい。それもそうか。アリスの婚約者は、セシル・サードニクス公爵令息だ。彼の父親は、現国王陛下の弟だから、王女の従弟だ。
「ルイス・ビスクランドと申します。アナスタシア王太女殿下」
「そんなにかしこまらないで。ずっと前になるけれど、アリス様にうちの愚弟がご迷惑をおかけしてごめんなさいね」
「いえ。婚約者であるセシル殿がアリスのことは守って下さったようですし、アリスもキツいことを言ったようですので。それに、子供の頃の話です。お気になさらずに」
そう言った僕に、王女殿下はとてもとても綺麗な微笑みを浮かべた。
普段、愛らしく可愛い天使のアリスを見慣れている僕だが、その女神のような微笑みに心が射抜かれた気がした。
なんてことはない。
僕はアナスタシア王太女殿下に一目惚れしてしまったのだ。
フォレスト王国は性別に関係なく第1子が後継となる。
つまりアナスタシア王太女殿下は、未来の女王陛下である。
つまりは・・・僕の片想いである。いくらなんでも王配になれるわけがない。
それでも、王女殿下と話をするのは楽しかった。
彼女はとても優秀で、頭の回転も早いし、話術も巧みだ。その上、僕の天使のアリス並みに美しい。
きっと彼女に恋焦がれる人間は多いだろう。
女王陛下になることは決定事項だから、他国に嫁がなければならない相手からの釣書は来ないだろうが、第2王子や公爵令息たちからの申し込みは多そうだ。
いくらビスクランド伯爵家が力があるといっても、さすがに他国の王族より勝るとは言えない。
いや、最近の様子を見てると、フォレスト王国の税収のほとんどをうちが納めている気もするが、うん。気のせいだな。
それに、僕はビスクランド伯爵家の後継だ。
アリスはサードニクス公爵家へ嫁ぐのだろうし。
だから、今だけの夢だ。
学園に通っている間だけ。王女殿下や僕自身に婚約者ができるまでの、わずかな間だけ、夢を見よう。
婚約者ができたら、その人を大切にする。王女殿下のことは、ちゃんと忘れる。
そう決意していたつもりだった。
友達として過ごせるだけで幸せだって、そう思おうとしていた。
だけど、一緒に過ごせば過ごすほど、好きになった。
その声も、笑顔も、全部が僕の心をとらえて離さない。
距離を置かなければと思うのに、離れたくない。
まさか、アナスタシア王太女殿下も同じように思ってくれてるなんて思わなかった。
女神のような彼女が、憂いを帯びた表情で、僕を好きだと言ってくれた。
自分は、いずれ女王にならなければならない。伯爵家の後継の僕に王配になってくれとは言えない。だけど、好きだと言ってくれた。
僕たちは、恋人となったー
新入生代表だった僕は、次席のアナスタシア王太女殿下から声をかけられたのだ。
「あなた、アリス・ビスクランド様のお兄様よね?」
どうやら王女殿下はアリスのことを知っているらしい。それもそうか。アリスの婚約者は、セシル・サードニクス公爵令息だ。彼の父親は、現国王陛下の弟だから、王女の従弟だ。
「ルイス・ビスクランドと申します。アナスタシア王太女殿下」
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そう言った僕に、王女殿下はとてもとても綺麗な微笑みを浮かべた。
普段、愛らしく可愛い天使のアリスを見慣れている僕だが、その女神のような微笑みに心が射抜かれた気がした。
なんてことはない。
僕はアナスタシア王太女殿下に一目惚れしてしまったのだ。
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つまりアナスタシア王太女殿下は、未来の女王陛下である。
つまりは・・・僕の片想いである。いくらなんでも王配になれるわけがない。
それでも、王女殿下と話をするのは楽しかった。
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きっと彼女に恋焦がれる人間は多いだろう。
女王陛下になることは決定事項だから、他国に嫁がなければならない相手からの釣書は来ないだろうが、第2王子や公爵令息たちからの申し込みは多そうだ。
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いや、最近の様子を見てると、フォレスト王国の税収のほとんどをうちが納めている気もするが、うん。気のせいだな。
それに、僕はビスクランド伯爵家の後継だ。
アリスはサードニクス公爵家へ嫁ぐのだろうし。
だから、今だけの夢だ。
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そう決意していたつもりだった。
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だけど、一緒に過ごせば過ごすほど、好きになった。
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まさか、アナスタシア王太女殿下も同じように思ってくれてるなんて思わなかった。
女神のような彼女が、憂いを帯びた表情で、僕を好きだと言ってくれた。
自分は、いずれ女王にならなければならない。伯爵家の後継の僕に王配になってくれとは言えない。だけど、好きだと言ってくれた。
僕たちは、恋人となったー
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