転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜

みおな

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ルイスと従姉と愛しいアリス《セシル視点》

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「ルイスお兄様が・・・」

 呟くアリスの髪をゆっくりと撫でる。艶やかな銀の髪が指の間をサラサラとこぼれ落ちた。

 はっきり言って、アリスの兄のルイス殿が誰と婚約しようと、従姉のアナスタシア様が誰を王配にしようと、どうでもよかった。

 だけど、それがルイス殿とアナスタシア様となると話は別だ。

 ルイス殿はビスクランド伯爵家の嫡男、つまりは後継だ。その後継が王配になるということは、ビスクランド伯爵家に後継がいなくなるということ。

 僕はサードニクス公爵家の1人息子だから、今のところ僕は後継の予定だ。
 そして、アリスは僕の妻になるのだから、未来の公爵夫人になる。

 だが、ビスクランド伯爵家の後継がいなくなるということは、アリスに婿を取って後を継がせる可能性が出てくる。

 さすがに未来の女王陛下に、彼はビスクランド伯爵家の後継だから王配にするなとは、言えるけど言えない。

 サードニクス公爵家の一員としてなら言えるが、従弟としては言えない。あの従姉は恐しい。

 だが、あの従姉は聡い方だ。自分がルイス殿を望めばビスクランド家に後継がいなくなることも、僕がアリスを手放すわけがないことも分かっているはずだ。

 我が国は血の繋がりを重んじるから、養子を取るという選択は、最終的なものだろう。
 ならば、父上か、ビスクランド伯爵に頑張って弟を生んでもらうのが、ベストだろう。

 母上もビスクランド伯爵夫人もまだお若い。12歳差の弟が出来ても不自然ではない。

 うん。決まりだ。帰ったら早々に父上に進言しよう。
 大丈夫だ。断られたら、僕がビスクランド伯爵家に婿入りすればいいだけの話だ。
後継がいなくなるなら、父上も考えるだろう。

 そう考えていると、生温かい目で僕を見るレイモンドやハロルド殿達と目が合った。

「なに?」

「いや。考えていることが手に取る様に分かるというか。セシルはアリス嬢のこととなると分かりやすいね」

 レイモンドの言葉に顔を顰めた。
すると、膝の上からそっと手が伸ばされ、僕の眉間を細く白い指が撫でる。

「アリス?」

「ふふっ、セシル様。眉間に皺が。だめですわ、そんなお顔なさっては」

 スリスリと皺を伸ばす様に動く指がこそばゆい。
 僕を見上げるアメジストの瞳も、その桜色の頬も、薔薇色の唇も、花が綻んだような微笑みも、全てが愛おしくて、誰にも見せないように閉じ込めてしまいたい。

 僕は、アリスをぎゅっと抱きしめる。
それを見ている周囲は、やれやれという顔だ。
 ランベルト殿がため息混じりにつぶやいた。

「だから、俺たちがいることを忘れてないか?」



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