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勝手なものです
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「ネモフィラ王国は、我がメルキオール王国と戦をするつもりか?」
ヴィンセント様の問いに、ネモフィラ王国の王太子殿下は顔色を悪くさせます。
聖女の力に頼りきりで、ろくに騎士たちの育成をしていなかった(今は知りませんけど)ネモフィラ王国と、最強と呼ばれる魔王であるヴィンセント様。
戦わずしてどちらに軍配が上がるのかは、私でも分かります。
「・・・ッ!せっ、聖女を監禁した上に戦を仕掛けたなどと他国に知られれば、メルキオール王国は孤立するでしょう!いっ、今までの外交努力は無と記しますよ、よろしいのですか?今、聖女を引き渡せば、その発言もなかったことにして差し上げ・・・」
「くどい」
まだしつこく言い募る王太子殿下を、ヴィンセント様はバッサリと切り捨てました。
「やりたければやればいい。我が国は別に外交したいわけでもない。人が我らを厭うなら、誰もこの国には入れないようにして、静かに暮らしていくだけだ。ノワール、謁見は終わりだ。帰っていただけ」
「かしこまりました」
ノワールさんが恭しく頭を下げ、ヴィンセント様は玉座から立ち上がります。
ヴィンセント様に手を引かれて立ち上がった私に、王太子殿下は手を伸ばそうとしましたが・・・
イブリンとアレッタが立ち塞がり、その手が私に届くことはありませんでした。
言葉を交わすこともありませんでしたけど、何だか過去の王太子殿下と変わらない勝手さですね。
まぁ、どういう人だろうと、全くもってどうでもいいです。
二度と会うこともないでしょうし。
「でも、外交ができなくなってもいいのですか?」
お部屋に戻る途中で、ヴィンセント様に尋ねてみました。
ネモフィラ王国に囚われるのは絶対に嫌ですが、回復薬とかを売るとかなら別に新たに作りますし。
そう思って尋ねると、ヴィンセント様は「平気だ」とお答えになりました。
「元々、魔族と人は相容れなかった。人はあまりに強い魔族を畏れたし、魔物との区別が付かずに攻撃してくる者もいた。だから、人間の国と離れたここに国を築いた。同胞たちを守るために。聖女がいたネモフィラ王国は知らぬが、他の国は魔物に襲撃されることもある。ある時、スタンピードが起きた。助けを求めて来た国を救ったことで、外交が始まったのだ。だから、別段困らない。何よりルディアを引き渡すなどあり得ない」
人というものは勝手なものです。
助けを求めるときだけ媚びへつらい、喉元を過ぎるとそれを忘れるのですから。
ヴィンセント様の問いに、ネモフィラ王国の王太子殿下は顔色を悪くさせます。
聖女の力に頼りきりで、ろくに騎士たちの育成をしていなかった(今は知りませんけど)ネモフィラ王国と、最強と呼ばれる魔王であるヴィンセント様。
戦わずしてどちらに軍配が上がるのかは、私でも分かります。
「・・・ッ!せっ、聖女を監禁した上に戦を仕掛けたなどと他国に知られれば、メルキオール王国は孤立するでしょう!いっ、今までの外交努力は無と記しますよ、よろしいのですか?今、聖女を引き渡せば、その発言もなかったことにして差し上げ・・・」
「くどい」
まだしつこく言い募る王太子殿下を、ヴィンセント様はバッサリと切り捨てました。
「やりたければやればいい。我が国は別に外交したいわけでもない。人が我らを厭うなら、誰もこの国には入れないようにして、静かに暮らしていくだけだ。ノワール、謁見は終わりだ。帰っていただけ」
「かしこまりました」
ノワールさんが恭しく頭を下げ、ヴィンセント様は玉座から立ち上がります。
ヴィンセント様に手を引かれて立ち上がった私に、王太子殿下は手を伸ばそうとしましたが・・・
イブリンとアレッタが立ち塞がり、その手が私に届くことはありませんでした。
言葉を交わすこともありませんでしたけど、何だか過去の王太子殿下と変わらない勝手さですね。
まぁ、どういう人だろうと、全くもってどうでもいいです。
二度と会うこともないでしょうし。
「でも、外交ができなくなってもいいのですか?」
お部屋に戻る途中で、ヴィンセント様に尋ねてみました。
ネモフィラ王国に囚われるのは絶対に嫌ですが、回復薬とかを売るとかなら別に新たに作りますし。
そう思って尋ねると、ヴィンセント様は「平気だ」とお答えになりました。
「元々、魔族と人は相容れなかった。人はあまりに強い魔族を畏れたし、魔物との区別が付かずに攻撃してくる者もいた。だから、人間の国と離れたここに国を築いた。同胞たちを守るために。聖女がいたネモフィラ王国は知らぬが、他の国は魔物に襲撃されることもある。ある時、スタンピードが起きた。助けを求めて来た国を救ったことで、外交が始まったのだ。だから、別段困らない。何よりルディアを引き渡すなどあり得ない」
人というものは勝手なものです。
助けを求めるときだけ媚びへつらい、喉元を過ぎるとそれを忘れるのですから。
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