冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる

みおな

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交渉という名の脅し?

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「それならば、我が婚約者殿は聖女ではないのかもしれんな」

 ヴィンセント様の言葉に、ネモフィラ王国の王太子殿下は少し考え込んだ後、そばに控えていた騎士から何かを受け取りました。

「こちらの回復薬。このメルキオール王国で最近になって出回っていると聞きました。王宮の医師が怪我をした子供を救ったとも。その医師とやらが聖女では?」

「医師は男だが、男でも聖女となり得るのか?だが、ヤツは現在休養中だ。子供の治癒で心身共に疲れ果てたのでな。休ませている。会わせることはできるがどうする?」

 カナさんを助けたのは私の回復薬ですけど、聖女の存在を秘匿するために王宮医師が治癒したことにしてあります。

 カナさんたちご家族も内緒にする約束をしてくださり、どうやらその嘘を聞いて来たようです。

「男・・・で、ではこの回復薬は」

「それは我が国の極秘だ。他国に話す筋合いはない。で、どうする?医師を呼ぶか?」

「さ、先ほども申し上げましたが、聖女はネモフィラ王国に在るべき存在です。メルキオール王国が聖女を隠して・・・いや、監禁しているのだと他国に公表したら、この国の立場がどうなるのか、よくお考えになった方がいい。今なら、聖女を引き渡して下されば、聖女をしていたことで幾らかお払いいたしましょう」

 メルキオール王国王太子殿下の言葉に、謁見室の空気が一気に剣呑としたものに変わりました。

 部屋の温度が下がった気すらします。

「それは、我が国とコトを構えるということか?」

 ヴィンセント様の声も冷たく響きます。

 こんなヴィンセント様は見たことがなくて、そのお顔を見上げるとそっと手を握られました。

 お顔は王太子殿下たちに向いたままですし、横顔にいつもの笑顔は見えませんが、その優しく握られた手にホッとします。

「いえいえ、まさか。ただ、私が言っているのは、聖女を受け渡してくれなければメルキオール王国はマズい立場になりますよということですよ」

「そうか。なら、やってみるがいい」

「は?」

「だから、そう公表してみるといい。かまわないな?ノワール」

 ヴィンセント様の確認に、ノワールさんが恭しく頭を下げます。

「陛下のお心のままに」

「お、脅しではないのですよ?魔族が聖女を捕らえているなどと知られれば、国がどうなるかもわからないのですよ」

「俺たちは別に困らん。それに聖女をいない。それは我が国に対する侮辱として受け取るが、ネモフィラ王国はメルキオール王国と戦をするつもりか?」

 困らないとヴィンセント様はおっしゃっていますけど、本当に大丈夫なのでしょうか?
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