上 下
30 / 30

最終話:あなただけの聖女

しおりを挟む
 結局、ネモフィラ王国の王太子殿下は、メルキオール王国が聖女を監禁していると各国に訴えたようです。

 そして、ものの見事に各国から無視されたそうです。

 そもそも、魔物よりも強い力を持つ魔族が、わざわざ聖女を監禁すること。

 現在のメルキオール王国は、人間の国が魔物に襲われないように、要請を受ければ魔物討伐をしていること。

 かつて聖女がいた頃のネモフィラ王国が、全くもって他国に協力的でなかったこと。

 それらのことで、ネモフィラ王国王太子殿下の言葉は、他国には信用されなかったみたいです。

 その結果。

 ネモフィラ王国から多くの民が逃げ、近隣諸国から侵攻を受けて、どこかの国の属国になったそうです。

 それが良いことなのか悪いことなのか、私には判断がつきませんけど、属国になったことで魔物の襲撃に民が怯えなくて済むようになったのなら、良かったのではないでしょうか。

 私はというと・・・

「おねぇちゃーん!」

「カナちゃん、おはようございます」

 カナちゃんたち子供が通う学校というところで、私もお勉強を一緒にしています。

 メルキオール王国では、平民の子供も無償で計算や文字の読み書きが学べる、学校というものがあるそうです。

 私はずっと聖女としての務めしかさせてもらえませんでしたから、はっきり言って知識は子供以下です。

 ジッとしているのが申し訳なくて、ついつい回復薬作りに没頭してしまう私に、ノワールさんが提案してくれました。

 勉強をしてみませんか?と。

 王宮でイブリンたちに教わることも出来るのですが、カナちゃんが一緒に通おう?って誘ってくださったのです。

 カナちゃんだけでなく、他の子供たちもみんな私に親切です。

 私がわからないところは、丁寧に教えてくれますし、一緒に遊んでくれたりします。

「おねぇちゃんは、魔王さまのお妃さまになるの?」

「うーん、そうですね。私がもっともっとお勉強して、お妃さまに相応しくなったら、なれたらいいなって思います」

「じゃあ、魔王様が結婚してくれなかったら、俺が姉ちゃんと結婚してやるよ」

「それは駄目だ。ルディアは俺のだからな」

 子供たちとたわいもない話をしていたら、後ろから聞き慣れた声がしました。

「「あっ、魔王様」」

「ヴィンセント様」

「ルディア、迎えに来た。それから、ザビ。ルディアがみんなと学びたいというから妃に迎えるのを我慢してるんだ。だから、お前は他の子を嫁にしろ。ルディアは俺のだ」

「はぁーい」

 ふふっ。ザビくんは、カナちゃんのことが好きなんですよ。

 多分、カナちゃんにヤキモチ妬いて欲しくて言ったんだと思います。

 カナちゃんは可愛いですから、男の子に大人気なのです。

「ルディア、帰ろう」

「はい。じゃあ、みんな、また明日」

「「「また明日ね~」」」

 みんなと手を振って別れます。

 こんな幸せな時間を過ごせるなんて、あの頃の私からは考えられません。

 あれから全然、女神様のお声を聞くことはできませんが、見ていてくれているでしょうか。

 私はこんなにも幸せです。

「ヴィンセント様」

「ん?どうした」

「ノワールさんが合格って言ってくれたら、お妃さまにしてくださいね?ヴィンセント様、大好きです」

「ああ。もちろんだ。これからもずっと一緒にいよう。俺も愛している」

 私の居場所は、ヴィンセント様の隣です。

 私は魔王様の聖女なのですから。


***おしまい***

 
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(5件)

ひのの
2024.07.12 ひのの

面白かったです!自分を貶めた国に対して、ルディアが綺麗ごとを言って変な慈悲を出さないところが特に好きでした。今度は幸せになれよ!
そしてカナちゃんはかわいいわね…

みおな
2024.07.12 みおな

読んでくださりありがとうございます😊
おお!ここにもカナちゃんファンが!
素直な女の子は可愛いですよね。癒し癒し。

解除
夜桜
2024.06.30 夜桜

流れてて更新に気付かず(^_^;)

『勝手なものです』
無と記しますよ→無と帰する

解除
夜桜
2024.06.24 夜桜

ところどころ各回でイフリンかイブリンとありますがどっちが正しいですか?

みおな
2024.06.24 みおな

イブリンです。変換ミスです🙇

解除

あなたにおすすめの小説

【完結】聖女として召喚されましたが、無力なようなのでそろそろお暇したいと思います

藍生蕗
恋愛
聖女として異世界へ召喚された柚子。 けれどその役割を果たせないままに、三年の月日が経った。そして痺れを切らした神殿は、もう一人、新たな聖女を召喚したのだった。 柚子とは違う異世界から来たセレナは聖女としての価値を示し、また美しく皆から慕われる存在となっていく。 ここから出たい。 召喚された神殿で過ごすうちに柚子はそう思うようになった。 全てを諦めたままこのまま過ごすのは辛い。 一時、希望を見出した暮らしから離れるのは寂しかったが、それ以上に存在を忘れられる度、疎まれる度、身を削られるような気になって辛かった。 そこにあった密かに抱えていた恋心。 手放せるうちに去るべきだ。 そう考える柚子に差し伸べてくれた者たちの手を掴み、柚子は神殿から一歩踏み出すのだけど…… 中編くらいの長さです。 ※ 暴力的な表現がありますので、苦手な方はご注意下さい。 他のサイトでも公開しています

私生児聖女は二束三文で売られた敵国で幸せになります!

近藤アリス
恋愛
私生児聖女のコルネリアは、敵国に二束三文で売られて嫁ぐことに。 「悪名高い国王のヴァルター様は私好みだし、みんな優しいし、ご飯美味しいし。あれ?この国最高ですわ!」 声を失った儚げ見た目のコルネリアが、勘違いされたり、幸せになったりする話。 ※ざまぁはほんのり。安心のハッピーエンド設定です! ※「カクヨム」にも掲載しています。

お堅い公爵様に求婚されたら、溺愛生活が始まりました

群青みどり
恋愛
 国に死ぬまで搾取される聖女になるのが嫌で実力を隠していたアイリスは、周囲から無能だと虐げられてきた。  どれだけ酷い目に遭おうが強い精神力で乗り越えてきたアイリスの安らぎの時間は、若き公爵のセピアが神殿に訪れた時だった。  そんなある日、セピアが敵と対峙した時にたまたま近くにいたアイリスは巻き込まれて怪我を負い、気絶してしまう。目が覚めると、顔に傷痕が残ってしまったということで、セピアと婚約を結ばれていた! 「どうか怪我を負わせた責任をとって君と結婚させてほしい」  こんな怪我、聖女の力ですぐ治せるけれど……本物の聖女だとバレたくない!  このまま正体バレして国に搾取される人生を送るか、他の方法を探して婚約破棄をするか。  婚約破棄に向けて悩むアイリスだったが、罪悪感から求婚してきたはずのセピアの溺愛っぷりがすごくて⁉︎ 「ずっと、どうやってこの神殿から君を攫おうかと考えていた」  麗しの公爵様は、今日も聖女にしか見せない笑顔を浮かべる── ※タイトル変更しました

【完結】聖女を害した公爵令嬢の私は国外追放をされ宿屋で住み込み女中をしております。え、偽聖女だった? ごめんなさい知りません。

藍生蕗
恋愛
 かれこれ五年ほど前、公爵令嬢だった私───オリランダは、王太子の婚約者と実家の娘の立場の両方を聖女であるメイルティン様に奪われた事を許せずに、彼女を害してしまいました。しかしそれが王太子と実家から不興を買い、私は国外追放をされてしまいます。  そうして私は自らの罪と向き合い、平民となり宿屋で住み込み女中として過ごしていたのですが……  偽聖女だった? 更にどうして偽聖女の償いを今更私がしなければならないのでしょうか? とりあえず今幸せなので帰って下さい。 ※ 設定は甘めです ※ 他のサイトにも投稿しています

ふしだらな悪役令嬢として公開処刑される直前に聖女覚醒、婚約破棄の破棄?ご冗談でしょ(笑)

青の雀
恋愛
病弱な公爵令嬢ビクトリアは、卒業式の日にロバート王太子殿下から婚約破棄されてしまう。病弱なためあまり学園に行っていなかったことを男と浮気していたせいだ。おまけに王太子の浮気相手の令嬢を虐めていたとさえも、と勝手に冤罪を吹っかけられ、断罪されてしまいます。 父のストロベリー公爵は、王家に冤罪だと掛け合うものの、公開処刑の日時が決まる。 断頭台に引きずり出されたビクトリアは、最後に神に祈りを捧げます。 ビクトリアの身体から突然、黄金色の光が放たれ、苛立っていた観衆は穏やかな気持ちに変わっていく。 慌てた王家は、処刑を取りやめにするが……という話にする予定です。 お気づきになられている方もいらっしゃるかと存じますが この小説は、同じ世界観で 1.みなしごだからと婚約破棄された聖女は実は女神の化身だった件について 2.婚約破棄された悪役令嬢は女神様!? 開国の祖を追放した国は滅びの道まっしぐら 3.転生者のヒロインを虐めた悪役令嬢は聖女様!? 国外追放の罪を許してやるからと言っても後の祭りです。 全部、話として続いています。ひとつずつ読んでいただいても、わかるようにはしています。 続編というのか?スピンオフというのかは、わかりません。 本来は、章として区切るべきだったとは、思います。 コンテンツを分けずに章として連載することにしました。

【完結】「神様、辞めました〜竜神の愛し子に冤罪を着せ投獄するような人間なんてもう知らない」

まほりろ
恋愛
王太子アビー・シュトースと聖女カーラ・ノルデン公爵令嬢の結婚式当日。二人が教会での誓いの儀式を終え、教会の扉を開け外に一歩踏み出したとき、国中の壁や窓に不吉な文字が浮かび上がった。 【本日付けで神を辞めることにした】 フラワーシャワーを巻き王太子と王太子妃の結婚を祝おうとしていた参列者は、突然現れた文字に驚きを隠せず固まっている。 国境に壁を築きモンスターの侵入を防ぎ、結界を張り国内にいるモンスターは弱体化させ、雨を降らせ大地を潤し、土地を豊かにし豊作をもたらし、人間の体を強化し、生活が便利になるように魔法の力を授けた、竜神ウィルペアトが消えた。 人々は三カ月前に冤罪を着せ、|罵詈雑言《ばりぞうごん》を浴びせ、石を投げつけ投獄した少女が、本物の【竜の愛し子】だと分かり|戦慄《せんりつ》した。 「Copyright(C)2021-九頭竜坂まほろん」 アルファポリスに先行投稿しています。 表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 2021/12/13、HOTランキング3位、12/14総合ランキング4位、恋愛3位に入りました! ありがとうございます!

妹に裏切られた聖女は娼館で競りにかけられてハーレムに迎えられる~あれ? ハーレムの主人って妹が執心してた相手じゃね?~

サイコちゃん
恋愛
妹に裏切られたアナベルは聖女として娼館で競りにかけられていた。聖女に恨みがある男達は殺気立った様子で競り続ける。そんな中、謎の美青年が驚くべき値段でアナベルを身請けした。彼はアナベルをハーレムへ迎えると言い、船に乗せて隣国へと運んだ。そこで出会ったのは妹が執心してた隣国の王子――彼がこのハーレムの主人だったのだ。外交と称して、隣国の王子を落とそうとやってきた妹は彼の寵姫となった姉を見て、気も狂わんばかりに怒り散らす……それを見詰める王子の目に軽蔑の色が浮かんでいることに気付かぬまま――

たとえ番でないとしても

豆狸
恋愛
「ディアナ王女、私が君を愛することはない。私の番は彼女、サギニなのだから」 「違います!」 私は叫ばずにはいられませんでした。 「その方ではありません! 竜王ニコラオス陛下の番は私です!」 ──番だと叫ぶ言葉を聞いてもらえなかった花嫁の話です。 ※1/4、短編→長編に変更しました。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。