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36.帰還します

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 お父様お母様と久しぶりに過ごして、再び王宮へと戻ることになった。

 家族と過ごせたのは嬉しかったし、アデラを家族に会わせることができたのは良かったけど、ずっとアスラン様と一緒にいたから・・・今ものすごく会いたいわ。

「お父様、お母様、お体には気をつけて下さいませね」

「ええ。アイシュもね」

「リュカ。アイシュのことを頼んだぞ」

「はい、旦那様」

 アデラは、マデリーン王国へ帰すことになった。

 本人は私の侍女として付いてくると言ってくれたのだけど、やっぱり親元にいた方が良いと思うの。

 マデリーン王国にいつ帰れるのか分からない状況だから余計に。

 マデリーン王国に戻れるとしたら、王家が私のことを諦めるか、ウィリアム殿下が王太子妃に相応しいご令嬢と婚約するか、もしくは私がアスラン様と婚姻するか。

 アスラン様との婚姻は、早くても再来年になる。

 王太子殿下とフランチェスカ様の婚姻が成ってからだからだ。

 それにフローレンス公爵家の嫡女である私は、ウィリアム殿下との婚約がなくなった時点で公爵家を継ごうと考えている。

 となると、アスラン様にマデリーン王国に移住していただくことになる。

 だけど、アスラン様はクライゼン王国の第二王子。

 お兄様の王太子殿下がフランチェスカ様と婚姻し、お二人お子を授かるまでは王位継承権を放棄することができない。

 だから、その時までは私も王子妃としてクライゼン王国に住まなくてはならないのよね。

 そのことを考えても、アデラには親元で過ごして欲しいと思うの。

 私付きになるのは、別にもう少し大きくなってからでも良いんだもの。

 私とリュカ、そして護衛の方たちはクライゼン王国の王都に向けて出立した。

 馬車から、マデリーン王国に戻るお父様たちの馬車が見えなくなり、半日ほど進んだ街で今日は泊まることになった。

 次の街までの距離と時間を考慮して、早めに宿を取り、明日の朝早めに出ることにしたのだ。

 貴族の馬車で夜に走るのは危険なのことと、その反面、私が戻りたいだろうというリュカや護衛たちの気遣いからだ。

 取った宿は、いわゆる高級宿というもので、個室にお風呂が付いている。

 その分お値段は、平民ではとても出せない金額なのだが。

 クライゼン王国王都に戻るまでの世話係として、リュカより年上の侍女が同行してくれた。

 護衛の一人の恋人らしい。
残念ながらひとりで湯浴みすることもできない私としては、付いてきてくれることはありがたい。

「お嬢様、明日は早めに出ますので、お食事と湯浴みが終わりましたら早めにお休みください」

「分かったわ、リュカ。みんなにもちゃんとゆっくり休んでもらってね」




 
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