「殿下、人違いです」どうぞヒロインのところへ行って下さい

みおな

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番外編

好きなところ《クラン視点》

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「おじちゃま。おじちゃまはシャルお姉様のどこが好きなの?」

 結婚式の控え室で、いきなり可愛い姪っ子から爆弾が落とされた。

 いや。シャルロットの好きなところなんて数えきれないくらいあるけど、それを家族の前で言うのは恥ずかしいというか、それはシャルロットの前でだけ言いたいというか。

 ちなみに、今この控え室にいるのは、僕の両親とマリウス王太子殿下、そして甥っ子と姪っ子である。

 姉上は、1歳になったばかりの甥っ子と共に、シャルロットの控え室にいる。

「ねーっ、おじちゃま。教えて~」

「えーと、マーガレット。それはね、シャルロットにだけ言いたいというか。大体、なんでいきなりそんな事を?」

「だって、お父様は毎日毎日、お母様のここが好きだって言ってるもん。こないだはね、カイもマリアちゃんのどこが好きか教えてくれたの。だから、今日はクランおじちゃまにも聞こうって思ってたの」

 マーガレット。
君のお父様はね、姉上のことが好きで好きで大好きで、家族の僕たちにさえ嫉妬するほどだからね。

 しかも婚約者時代から、甘々の口説き文句を常に言ってたから、そりゃ子供に母親のどこが好きかくらい言えるでしょ。

 そりゃ、僕だってシャルロットのことは、大好きだ。

 シャルロットの慎ましいところも、ちょっと気の強いところも、そのくせ僕の言動に一喜一憂するところも、本当は泣き虫なところも、全部全部大好きだ。

 だけど、僕はマリウス殿下のように、それを周囲の前で口にするタイプではない。
 それに、それを言うとシャルロットがとても恥ずかしがるんだ。
 恥ずかしがったシャルロットの可愛い顔を、他の人間に見せたくない。

「マーガレット。父上は特殊なんだよ。それを他の人に求めたら駄目だよ。クランおじさん、気にしないで下さいね」

「えー。アルは聞きたくないの?」

「僕は、父上の母上自慢だけでお腹いっぱいだよ」

 アークの言葉に、マリウス殿下は苦笑している。

 興味のあることには猪突猛進で、明るく物おじしないマーガレット。
 思慮深くて、年齢よりも大人びた考え方のアーク。

 どちらも姉上にもマリウス殿下にも似ているようで、僕はこの甥っ子姪っ子が大好きだ。

 軽いノックの後、扉が開いて、マルクを抱いた姉上が顔を覗かせた。

「なんだか楽しそうね?クラン、シャルロット様の準備が出来たわ」

「姉上」

「改めて、おめでとう、クラン。幸せになってね」

「ありがとうございます、姉上」

 僕は姉上のことを疎ましいと思っていた時期があったし、どこか変わった姉上にも随分と振り回されてきた。

 だけど、僕は姉上のことが大好きだし、姉上とマリウス殿下のような、幸せな家庭を築いて行きたいと思っている。

 最愛の人シャルロットは、今日僕の妻になる。
 今夜はシャルロットに、彼女のどこが好きか語ってみようかな。

 そんなことを考えながら、僕は控え室を出るのだった。






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