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番外編
翌朝の新妻《カイ視点》
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隣で眠るマリアの髪を、ゆっくりと撫でる。
今日の予定は、アニエスお嬢様のアドバイス通り、昼からしか入れていない。
朝食も、前もって宿に、ベッドでつまめる軽食と果物を頼んである。
「カイとマリウス殿下は違うとは思うけど」という前置きの後、いくらマリアが可愛いからって、絶対に度を越さないこと!と念を押された。
ちなみに、マリウス殿下からも「カイなら大人だから大丈夫だろうけど、愛しい妻の破壊力は想像以上だから、歯止めが効かなくなる前に眠った方が良いよ」と言われた。
まぁ、聞かなくても分かるが、殿下は相当アニエスお嬢様に無理をさせたのだろう。
どうやら、お嬢様のご機嫌を損ねて、しばらく口を聞いてもらえなかったらしい。
お2人の助言に従って、マリアに無理はさせないようにセーブしたつもりだが、疲れさせてしまっただろうか。
俺の手がくすぐったかったのか、少し身じろぎした後、マリアがその瞼を開いた。
「カイさん・・・おはようございます」
「おはよう、マリア。疲れてないか?もう少し眠るといい」
「でも、もうあんなにお日様が高くなってます。今日は、アニエス様に教えていただいた《わがしや》さんというところへ行きたいのです」
モゾモゾと起き上がったマリアの、その華奢な肩からシーツが落ちて・・・
俺は椅子にかけてあった自分のシャツに手を伸ばすと、それをマリアへと着せた。
「朝から目の毒だ」
「!!」
昨日、マリアが眠りについてしまった後に身は清めたが、さすがに服を着せると起こしそうで、そのままだったのだ。
つまりは、マリアは生まれた時の姿のままで・・・
いや。一応、俺もマリアよりは5歳も年上なわけだから、自制心というものは持っているつもりだ。
さすがに、はじめての夜を過ごしたマリアに無理をさせるつもりはない。
だが、だからといって、男としては、最愛の妻の無防備な姿を見て平気というわけにもいかない。
自分の姿に気づいたマリアは、真っ赤になって慌ててシャツに袖を通す。
「ごっ、ごめんなさい」
「謝ることじゃないが、今日は街を歩きたいのだろう?起きるのなら、軽食を準備してもらうから、シャワーを浴びてくるといい」
「はい」
急いでシャワールームに向かう後ろ姿に、ときめくものがあるが、頭を振って意識を切り替える。
頼んでおいた軽食を受け取るために、俺は鍵を持って部屋を出た。
きっと、一緒に食べる朝食や、街を散策することは、俺に幸せをもたらしてくれるだろう。
これから先、その幸せが1つ1つ増えていくことを思い浮かべることで、俺は男としての衝動を抑えたのだった。
今日の予定は、アニエスお嬢様のアドバイス通り、昼からしか入れていない。
朝食も、前もって宿に、ベッドでつまめる軽食と果物を頼んである。
「カイとマリウス殿下は違うとは思うけど」という前置きの後、いくらマリアが可愛いからって、絶対に度を越さないこと!と念を押された。
ちなみに、マリウス殿下からも「カイなら大人だから大丈夫だろうけど、愛しい妻の破壊力は想像以上だから、歯止めが効かなくなる前に眠った方が良いよ」と言われた。
まぁ、聞かなくても分かるが、殿下は相当アニエスお嬢様に無理をさせたのだろう。
どうやら、お嬢様のご機嫌を損ねて、しばらく口を聞いてもらえなかったらしい。
お2人の助言に従って、マリアに無理はさせないようにセーブしたつもりだが、疲れさせてしまっただろうか。
俺の手がくすぐったかったのか、少し身じろぎした後、マリアがその瞼を開いた。
「カイさん・・・おはようございます」
「おはよう、マリア。疲れてないか?もう少し眠るといい」
「でも、もうあんなにお日様が高くなってます。今日は、アニエス様に教えていただいた《わがしや》さんというところへ行きたいのです」
モゾモゾと起き上がったマリアの、その華奢な肩からシーツが落ちて・・・
俺は椅子にかけてあった自分のシャツに手を伸ばすと、それをマリアへと着せた。
「朝から目の毒だ」
「!!」
昨日、マリアが眠りについてしまった後に身は清めたが、さすがに服を着せると起こしそうで、そのままだったのだ。
つまりは、マリアは生まれた時の姿のままで・・・
いや。一応、俺もマリアよりは5歳も年上なわけだから、自制心というものは持っているつもりだ。
さすがに、はじめての夜を過ごしたマリアに無理をさせるつもりはない。
だが、だからといって、男としては、最愛の妻の無防備な姿を見て平気というわけにもいかない。
自分の姿に気づいたマリアは、真っ赤になって慌ててシャツに袖を通す。
「ごっ、ごめんなさい」
「謝ることじゃないが、今日は街を歩きたいのだろう?起きるのなら、軽食を準備してもらうから、シャワーを浴びてくるといい」
「はい」
急いでシャワールームに向かう後ろ姿に、ときめくものがあるが、頭を振って意識を切り替える。
頼んでおいた軽食を受け取るために、俺は鍵を持って部屋を出た。
きっと、一緒に食べる朝食や、街を散策することは、俺に幸せをもたらしてくれるだろう。
これから先、その幸せが1つ1つ増えていくことを思い浮かべることで、俺は男としての衝動を抑えたのだった。
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