そこは獣人たちの世界

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第一章

加護を貰いに

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ゆっくりと意識が戻って来る。ソファーの上で掛布団をかぶって寝ていたようだ。お風呂からそこまで運ばれた記憶がよみがえってきた。
そして体全体、特に腰の付け根にすごい違和感がある。服から出た自分の手を見ると昨日と同じような灰色の毛並みの手になっている。腰の違和感は尻尾がソファーにあたってるせいだ。
あ、でも行為した後って腰が痛くなるんじゃなかったっけ?昨日も今日もその感覚はないんだよね。しっかり慣らしてもらってるからなんだろうか。
朝っぱらから何を考えてるんだか。というか朝なんだよね?体を起こして日の光をみると、軽く差し込んでるけど昨日の寝起きよりは低いようだ。うーん、でも正確な時間を知るためにも時計がほしくなる。スマホにはなぜか時刻表気が消えちゃってるし、というかここまでちがうと自分のスマホなのか今更ながら少し不安になる。
そんなことをしていると上から降りてくる足音が聞こえてくる。頭上についた耳がそっちにピクリと動いちゃうのがわかる。この体は反応すると余計にわかっちゃうんだよね。

「お、起きてるじゃねぇか。んで、やっぱその姿か。」

「うん、そうみたい。僕の仮説で正しかったみたいだよ。」

「そうか、これなら少しの時間なら外に出れそうだな。何か戻る前兆でもわかればすぐに戻ることもできるんだろうが、昨日は何かあったか?」

「そういえば全身が変な感じにムズムズしたけど、それくらいかな?」

あのむずむずする感じの後体が光って人間のからだにもどったんだよね。ほんとよくわからないけど魔法の力って感じがする。

「あぁ、そういえばそんなこと言ってたな。それが前兆ってことか。キオしかわからないのが少し不安だが、いざとなれば全身を隠せるローブをかぶって帰ってくればいいか。」

「もしかしてどこか連れだしてくれるの?」

「あぁ、明日のほうがどの程度その姿で居れるのかわかるだろうが、そろそろ俺もギルドに戻る報告をしないとまずいからな。」

「もしかしてギルドに連れてってくれるの?」

「いや、今日はまず教会へ行く。キオはまず加護を貰わないとだからな。」

おぉ!加護を貰ったもしかして魔法も目の前!?まずは基礎練習とかになるだろうけど、早く使ってみたい!

「じゃあ早くいこう!僕もこの姿いつまで持つのかわからないし、ご飯は帰ってきてからでいいよね?」

「そうするしかないな。」

ガロはマジックポーチだけ持って玄関へと脚を進める。ガロはちょっと買い出しに出てたけど、僕は6日間ずっとこもりっぱなしだったし、そもそも外がどうなってるかは窓からちょっと見える家並みを見るだけ。多分他の人が通る気配のない場所に窓を付けてるのもあって、他の獣人はガロの家に来た時にチラ見して以来一切見なかった。だからいろいろ楽しみなわけだ!
あ、そういえば靴はあのこの世界に来て初めにいた休憩所のようなとこから持ってきたやつだっけ。足のサイズは変わってないし、爪とかも出たりしてないから普通に履けてよかった。
玄関から外に出ると周りにはガロの家くらい大きめの家がいくつか立ってる小通りだった。その通りにつながるすぐ向こうが大通りで、そこはこの距離でも少し見える、種類様々な獣人たち。
一番多いのは犬っぽいひとだ。ただ犬でも普通に服を着てたりガロみたいに上らだったり、毛並みも短い人、長い人さまざまみたいで。

「おい、あんまり人をじろじろ見るもんじゃねぇぞ?」

「あ、そうだよね、気を付ける。そういえば上裸の人って結構多いね。」

「この時期は昼飯時になると結構暑いからな。キオは暑くないか?」

「うーん、そういうのは今のところないかな。」

そんな話をしつつもガロは進んでいくのでそれについていく。今は狼の姿だから当たり前なんだろうけど、特にこちらに視線がきたりはしていない。注目はされないほうがいいから別にいいんだけど。
そう、通り過ぎる人たちはみんな獣顔で、犬、猫、たまに小さい姿の鼠やガロくらいはありそうな熊な人とか結構人通りは多い。ガロとはぐれるほどではないけど。
見つめすぎないように気を付けてたけど一番気になったのは爬虫類っぽい人だった。しっかりした服はきていたけど、ちらっと見ただけだったけど茶緑のような肌色で他の獣人と違って毛が無いわけで、気になっちゃってもしょうがないよね?

「ほら、着いたぞ。顔は動いてなかったが、目はいろいろ向いてたな。」

「うぇ!?前しか見てなかったのに分かったの?」

「すぐ近くにいるやつなら視線をどこに向けてるかくらいはわかる。俺に向けられた視線ならある程度距離があってもわかるしな。」

あぁ、多分職業柄そういうのには敏感なのかな?ギルドの仕事がそういうのもやってるんだろうから。そして目の前にはひときわ目立つ真っ白な教会。ここでも教会には十字架マークなんだな。

「はいるぞ?」

「あ、うん。」

入り口には戸も何もなく素通りできたけど、中に人の気配はなし。来た時も人はいなかったんだよね。でも使われてないってことはないはずだ。壁はどこも真っ白できれいだから。

「人いないんだね。」

「この時間はな。夕暮れごろに教会管理人が来て、それに合わせて熱心なやつが祈りに来る。管理人はそのあと清掃して帰っていくんだ。」

「へぇ、賑わうのは夕暮れってことか。」

「そうだな。だが朝や昼に浸かっちゃいけないなんてことはない。この教会はいつでもだれでも歓迎だ。」

この教会はってことはそうじゃない教会もあるのかな?でもこうやって開放しててもきれいだからこそ誰でも歓迎でやっていけるんだろうな。

「さ、加護を貰うぞ。祈り方はこうだ。」

右ひざをついて胸の前で手を組むって、ほんと無難な祈り方じゃん。まぁわかりやすくていいや。まねるように同じ姿勢をとる。

「よしそしたら目を閉じて、我に加護をもたらせ、というんだ。」

「我に加護をもたらせ。」

本当に加護がもらえるよう真剣に祈る。これで神と呼ばれるような存在が出て来たりするのが小説的な展開だけど。僕にはそういうことは起きず、ただ僕の中で何かが固まったような感覚だけを感じた。

「よし、これで加護を得たはずだ。」

「へ?もう終わり?そのなんか力がこみあげてきたりとかないんだけど。」

「加護はそういうもんじゃなく、自分の中の属性を固めるものらしいからな。だが加護が無きゃ魔法を正常には使えない。」

「うーん、そういうもんか。」

まぁそれで納得しておくしかない。それがこの世界の常識なんだろうから。とにかくこれで魔法の第一歩は踏み出せたわけだ!

「で、体が戻りそうな感じはあるか?」

「うーん、まだ大丈夫そう。」

「そうか、それならここから一人で戻れるか?俺は薬局によって戻る。」

「え?それなら一緒に行くよ?」

「一応いつ戻るかわからないだろ?他のことはまたあしたにしよう。危なそうならこれを着るんだ。」

うーん、確かにいつ戻るかわからないか。ここから家までならムズムズ来てから走れば戻る前には着きそうだし、いざとなったら渡された全身を隠すローブがある。

「わかった、じゃあ先に戻ってるね。」

「悪いな、俺もすぐ戻るからできれば朝食を用意しててくれると助かる。」

「了解!」

教会を出てガロは左側へ、僕は通りを直進する形で一旦分かれて一人でガロの家にと帰る。ちょっと寂しいけど、ずっと一緒ってわけにもいかないか、しょうがないと言い聞かせよう。
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