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30 元夫の処遇
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『一年Aクラスのディアナ・エイヴォリー嬢、至急生徒会室まで来て下さい。
繰り返します。
一年Aクラスの────』
ある日の放課後。
教室で帰宅の準備をしていると、突然校内放送で呼び出しをかけられた。
(えっ?私、何かやらかしたっけ?)
ビクビクしながら、生徒会室の扉をノックする。
「ディアナ・エイヴォリーです」
「開いてるわよー。入って」
室内から聞こえてきたのは、聞き覚えがあり過ぎる声だった。
「失礼します」
扉を開けると、フルーティーな紅茶と、甘い焼き菓子の美味しそうな香りが漂ってくる。
室内のソファーで呑気にお茶を飲んでいたのは、フィルとローズ様とジョシュア殿下だ。
現生徒会長は、ジョシュア殿下で、会計担当はフィルなのだ。
冷静に考えてみれば、当然のメンバーである。
彼等に促されてフィルの隣に着席すると、私の前にも華やかな香りの紅茶が供された。
「突然呼び出しなんてかけるから、驚いたではないですか。
何か悪事がバレたのかと思いました」
「心当たりがあるのか?」
「あっても絶対に言いませんよ」
私とフィルが軽口を叩き合うと、ローズ様がウフフと笑った。
「驚かせて悪かったな。
バークレイ家の処罰が決まったから、関係者であり協力者でもあるディアナ嬢にも伝えておいた方が良いかと思ってね」
生徒会室では個人情報を取り扱う事も多い為、予め防音の魔道具が設置されていて、密談するには好都合な場所らしい。
生徒会室、私物化されてないか?
ジョシュア殿下のお話によれば、バークレイ元侯爵は、爵位を剥奪されて鉱山での強制労働を十年行った後、市井へと放たれるらしい。
勿論財産は没収され、被害者の弁済に充てられる。
元侯爵夫人も、織物工場で十年強制労働の後、市井へと下る。
画廊の従業員の中で、詐欺に加担していた者達は、それぞれの場所で五年の強制労働に加えて罰金刑も科される。
侯爵家は二階級降格されて子爵家となり、バークレイ元侯爵の遠縁の令息が爵位を受け継ぐ事になった。
「それで、肝心のマーティンの処分だが・・・」
フィルの口からとうとう出て来た腹立たしい名前に、思わず肩がピクリと揺れる。
「まあ、好都合な事に、色々と余罪も出て来てね・・・。
罪人の首輪を着けさせて、鉱山で一生涯強制労働をさせる事になった」
『色々と余罪』の部分で、ジョシュア殿下が意味ありげにニヤリとしながらフィルを見たのも気になるが、それよりも聞き慣れない言葉の方が気になった。
「罪人の、首輪?」
首を傾げて問う私に、フィルと殿下はなんとも言えない微妙な顔つきになった。
ローズ様はコロコロと笑っている。
「ああ、一般人には馴染みがないだろうな。
ローズマリーが開発した魔道具だよ。
タチの悪い罪人に強制労働をさせる際に、逃走防止として着用させるんだ。
予め決められた範囲を一歩でも出ると、首輪が縮んで首が絞まり始め、十歩以上離れると更に急激に縮んで、窒息するよりも先に首の骨が折れるって言う・・・」
「えげつないっっ!!」
こわいこわいこわい。
麗しい笑顔の下で、なんてヤバい物を考案してるんですか?ローズ様っ!
もう彼女の事はマッドサイエンティストにしか見えない!
「ウフフ。
そんなに褒められると照れちゃうわ」
褒めてねぇデスわよっ!?
スーパーポジティブかっ!?
「首輪をつける際には必ずどんな魔道具なのかを説明するんだが、それでも逃げようとする受刑者が一定数居るのが不思議だよなぁ」
「きっと馬鹿なんでしょ?」
殿下の疑問をローズ様が一刀両断する。
命懸けの逃亡劇が『馬鹿』の一言で片付けられた。
まぁ、確かに馬鹿でしか無いけど。
マーティン様もかなりの馬鹿だから、もしかしたら・・・・・・。
ローズ様のヤバい一面には思いっきり動揺してしまったが、マーティン様の処遇に関しては、ホッとした気持ちが大きい。
詐欺組織の末端では大した罰にはならないだろうと予想していた。
彼の釈放後は、再び警戒を強めなければいけないかもしれないと思って、少し怯えていたのだ。
だが、そんなヤバいブツを首に巻かれて一生強制労働ならば、二度と私が彼の顔を見る事は無いだろう。
安心した私は、ローズ様に勧められて、美味しそうな焼き菓子に手を伸ばした。
繰り返します。
一年Aクラスの────』
ある日の放課後。
教室で帰宅の準備をしていると、突然校内放送で呼び出しをかけられた。
(えっ?私、何かやらかしたっけ?)
ビクビクしながら、生徒会室の扉をノックする。
「ディアナ・エイヴォリーです」
「開いてるわよー。入って」
室内から聞こえてきたのは、聞き覚えがあり過ぎる声だった。
「失礼します」
扉を開けると、フルーティーな紅茶と、甘い焼き菓子の美味しそうな香りが漂ってくる。
室内のソファーで呑気にお茶を飲んでいたのは、フィルとローズ様とジョシュア殿下だ。
現生徒会長は、ジョシュア殿下で、会計担当はフィルなのだ。
冷静に考えてみれば、当然のメンバーである。
彼等に促されてフィルの隣に着席すると、私の前にも華やかな香りの紅茶が供された。
「突然呼び出しなんてかけるから、驚いたではないですか。
何か悪事がバレたのかと思いました」
「心当たりがあるのか?」
「あっても絶対に言いませんよ」
私とフィルが軽口を叩き合うと、ローズ様がウフフと笑った。
「驚かせて悪かったな。
バークレイ家の処罰が決まったから、関係者であり協力者でもあるディアナ嬢にも伝えておいた方が良いかと思ってね」
生徒会室では個人情報を取り扱う事も多い為、予め防音の魔道具が設置されていて、密談するには好都合な場所らしい。
生徒会室、私物化されてないか?
ジョシュア殿下のお話によれば、バークレイ元侯爵は、爵位を剥奪されて鉱山での強制労働を十年行った後、市井へと放たれるらしい。
勿論財産は没収され、被害者の弁済に充てられる。
元侯爵夫人も、織物工場で十年強制労働の後、市井へと下る。
画廊の従業員の中で、詐欺に加担していた者達は、それぞれの場所で五年の強制労働に加えて罰金刑も科される。
侯爵家は二階級降格されて子爵家となり、バークレイ元侯爵の遠縁の令息が爵位を受け継ぐ事になった。
「それで、肝心のマーティンの処分だが・・・」
フィルの口からとうとう出て来た腹立たしい名前に、思わず肩がピクリと揺れる。
「まあ、好都合な事に、色々と余罪も出て来てね・・・。
罪人の首輪を着けさせて、鉱山で一生涯強制労働をさせる事になった」
『色々と余罪』の部分で、ジョシュア殿下が意味ありげにニヤリとしながらフィルを見たのも気になるが、それよりも聞き慣れない言葉の方が気になった。
「罪人の、首輪?」
首を傾げて問う私に、フィルと殿下はなんとも言えない微妙な顔つきになった。
ローズ様はコロコロと笑っている。
「ああ、一般人には馴染みがないだろうな。
ローズマリーが開発した魔道具だよ。
タチの悪い罪人に強制労働をさせる際に、逃走防止として着用させるんだ。
予め決められた範囲を一歩でも出ると、首輪が縮んで首が絞まり始め、十歩以上離れると更に急激に縮んで、窒息するよりも先に首の骨が折れるって言う・・・」
「えげつないっっ!!」
こわいこわいこわい。
麗しい笑顔の下で、なんてヤバい物を考案してるんですか?ローズ様っ!
もう彼女の事はマッドサイエンティストにしか見えない!
「ウフフ。
そんなに褒められると照れちゃうわ」
褒めてねぇデスわよっ!?
スーパーポジティブかっ!?
「首輪をつける際には必ずどんな魔道具なのかを説明するんだが、それでも逃げようとする受刑者が一定数居るのが不思議だよなぁ」
「きっと馬鹿なんでしょ?」
殿下の疑問をローズ様が一刀両断する。
命懸けの逃亡劇が『馬鹿』の一言で片付けられた。
まぁ、確かに馬鹿でしか無いけど。
マーティン様もかなりの馬鹿だから、もしかしたら・・・・・・。
ローズ様のヤバい一面には思いっきり動揺してしまったが、マーティン様の処遇に関しては、ホッとした気持ちが大きい。
詐欺組織の末端では大した罰にはならないだろうと予想していた。
彼の釈放後は、再び警戒を強めなければいけないかもしれないと思って、少し怯えていたのだ。
だが、そんなヤバいブツを首に巻かれて一生強制労働ならば、二度と私が彼の顔を見る事は無いだろう。
安心した私は、ローズ様に勧められて、美味しそうな焼き菓子に手を伸ばした。
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