ユニーク賢者の異世界大冒険

ハヤテ

文字の大きさ
上 下
561 / 608
間章7

間話60 春風とルーシー・2

しおりを挟む
*間章7、最終話です。

 それは、春風が「賢者」へとランクアップし、セイクリア王国へ向かうと決めた、その日の夜のことだった。

 「天使」となったモーゼスとの戦いの後、春風達は自分達の拠点に戻った。本当はすぐにでもセイクリア王国へと向かいたかったが、

 「春風君、君ここまでの道のりやらランクアップしたばかりで疲れただろう? まずは一晩しっかり休むように」

 と、フリードリヒに言われてしまい、

 「……わ、わかりました」

 と、春風は渋々その提案を受け入れた。

 その後、春風達は一旦二手に分かれて、春風達「七色の綺羅星」の面々は自分達の拠点に、歩夢、小夜子ら「勇者」達と、冬夜、雪花、静流、そして師匠の凛依冴は、シャーサル内の宿屋に泊まることになった。ただ、その際に、

 「私もハニーの家に行きたい!」

 と、凛依冴がそんなことを言ってきたのだが、

 「絶対に駄目!」

 と、小夜子に叱られてしまい、泣く泣く断念したそうだ。

 さて春風達はというと、またするのかと思っていたが、フリードリヒ曰く、

 「ああ、それなら大丈夫。住人のみんなは『事情』を理解しているから」

 とのことなので、春風達は不安になりながらも、そのまま拠点へと戻った。

 その結果、

 『おかえり、七色の綺羅星!』

 と、フリードリヒが言った通り、住人達は春風達を咎めることなく受け入れていたので、

 「シャーサルの皆さん……」

 『ただいま!』

 と、春風達は笑顔でそう言った。

 その後、でシャーサルに帰ってきた春風達は、それぞれ楽しいひと時を過ごした。

 そしてその夜、

 (……イブリーヌ様)
 
 拠点内の自室にあるベッドの上で、春風がイブリーヌのことを考えていると、トントンと自室の扉をノックする音が聞こえたので、

 「ん? 誰?」

 と、春風が尋ねると、扉がゆっくりと開かれて、

 「い、今、いいですか?」

 と、その隙間からゆっくりとルーシーが顔を出してきた。

 それからすぐに、ベッドから起き上がった春風は、ルーシーを中に招き入れると、

 「し、失礼、します」

 と言って、ルーシーは春風の隣に座った。因みに、ジゼルはというと、

 「では、ごゆっくり」

 と、小さく笑いながら部屋を出ていった。

 その後、部屋にルーシーと2人っきりになって、春風は何故か恥ずかしくなったが、

 「え、えーっと、どうしたんだいルーシー?」

 と、このままではいけないと思い、顔を赤くしながらルーシーに向かってそう尋ねた。

 すると、ルーシーも「ふえ!?」と顔を赤くしたが、すぐに首を横に振るって、

 「そ、その……ハル、兄さん」

 と、真面目な表情で春風を見た。

 春風はそんなルーシーを見て、「な、何?」と戸惑っていると、

 「は、話は、聞きましたけど、改めて、聞きます、けど……兄さんも、『裏スキル』を、手に、入れたんですよ、ね?」

 と、ルーシーは恐る恐るそう尋ねてきた。

 確かにルーシーが言ったように、モーゼスとの戦いの後、春風は仲間達にランクアップの経緯を話した。当然、その中には裏スキル[暴食]についてのことも含まれている。

 しかし、まさかそのことで改めて質問されるとは思わなかったので、

 「あ、ああ、うん。手に入れたけど、どうしたの?」

 と、春風は戸惑いながらそう尋ね返した。

 すると、ルーシーはシュンとなって、

 「あ、あの、オズワルド様との話、覚えて、ますか?」

 と、再び春風に尋ねた。

 「え、オズワルド様……て、あ」

 それを聞いた瞬間、春風はオズワルドから聞いた「裏スキル」についての話を思い出した。

 ーー「裏スキル」を使い続けてた者の多くは、皆悲劇的な最期を迎えていたんだ。

 その言葉を思い出した時、春風はルーシーが何を思ってるのかを理解した。

 (そっか、俺のこと、心配してくれてるんだな)

 そう考えた春風は、「フ……」と小さく笑って、

 「ねぇ、ルーシー」

 「は、はい」

 「もしもだけどさ、ルーシーがまた[憤怒]の裏スキルを使うことがあったら、遠慮なく言ってくれ」

 その言葉に、ルーシーが「え?」となると、

 「その時はさ、俺が[暴食]で、その力、から。なんてね」

 と、春風は冗談混じりに笑顔でそう言った。

 その言葉に、ルーシーはポカンとなったが、すぐに「むぅ」と頬を膨らませて、

 「そ、そんなことしたら、本気で怒る、からね」

 と、プンスカと怒りながらそう返した。

 その後、2人は話がおかしかったのか、「アハハ」とお互い笑い合うと、

 「に、兄さん……」

 と、ルーシーが先に口を開いた。

 「何、ルーシー?」

 と、春風がそう返事すると、

 「わ、私……兄さんが、好きです」

 「……」

 「私、世界が救われても、兄さんと、一緒に、いたい、です」

 と、ルーシーはまっすぐ春風を見つめながらそう言った。

 「……俺、複数の女の子達の影があるんだけど?」

 と、春風もまっすぐルーシーを見てそう尋ねると、

 「そ、それでも、構い、ません!」

 と、ルーシーは更に真剣な表情でそう答えた。

 「……いいよ。世界を救った後も、一緒にいよう」

 拒む理由は、春風になかった。何故なら、この世界で一緒に暮らしていくうちに、春風もまた、ルーシーに対する「想い」に変化が起きていたからだ。

 その答えを聞いて、ルーシーは「うぅ……」と唸ると、ガバッと春風を押し倒した。

 そして、

 「大好き、です、ハル兄さん」

 そう言うと、ルーシーは春風と唇を重ねた。

 春風は最初驚いていたが、すぐにスッと目を閉じて、ルーシーを受け入れた。

 一方、部屋の外では、

 ーーいよっしゃあああああああっ!

 と言わんばかりに、フィオナ、アデル、ケイト、クレイグが、無言でガッツポーズをとり、
 
 「ウフフ、春風様ったら」

 と、ジゼルは穏やかな笑みを浮かべていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 どうも、ハヤテです。

 というわけで、以上で間章7は終了し、次回からは本編新章となります。

 お楽しみに。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

聖女の姉ですが、宰相閣下は無能な妹より私がお好きなようですよ?

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:19,347pt お気に入り:11,951

神に捧げる贄の祝詞

BL / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:133

異世界じゃスローライフはままならない~聖獣の主人は島育ち~

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:10,799pt お気に入り:9,024

奇跡の街と青いペンダント

児童書・童話 / 完結 24h.ポイント:85pt お気に入り:1

ただ、好きなことをしたいだけ

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:42pt お気に入り:42

プラトニックな事実婚から始めませんか?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:6,520pt お気に入り:24

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:846pt お気に入り:3,917

特別な人

BL / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:73

処理中です...