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間章7
間話54 水音と「家族」
しおりを挟む「……そうか、それが『真実』なんだな?」
水音から「全て」を聞きいて、セレスティアは表情を暗くした。側で聞いていたリネットやアビゲイルも、セレスティアと同じような表情をしていた。
そして、セレスティアに尋ねられた水音が、ゆっくりと頷きながら、
「……はい」
と答えると、セレスティアはすっと右手を伸ばして水音の肩に置いて、
「すまない、辛いことを思い出させてしまったな」
と、申し訳なさそうに謝罪した。
それに対して、水音が「気にしないでください」とセレスティアそう言うと、
「……それで、お前はこれからどうする気なんだ?」
と、アビゲイルが尋ねてきたので、
「……ちょっと、よろしいでしょうか?」
と、水音は何処か恥ずかしそうにそう答えた。
ところ変わって、日本。
水音の実家である桜庭家内の一室に、水音の妹である陽菜がいる。
「……」
その部屋……否、自室ベッドに寝転がっている陽菜は、ギュッと枕に顔を埋めていた。
そんな状態の彼女が考えていること、それは、
(……お兄ちゃん)
エルードにいる兄、水音のことだった。
水音のことを想い、更に枕に顔を埋めていると、突然、枕元に置いてた陽菜のスマホが鳴りだした。
(……こんな時間に誰だろう?)
と思った陽菜がそのスマホの画面を見ると、そこには「水音」と表示されていたので、それを見た陽菜は、
「お兄ちゃん!?」
と、びっくりしたように飛び起きて、そのスマホを持って自室を出た。
その後、陽菜はダダダッと長い廊下を走り、
「お、お父さん! お母さん! お爺ちゃんお婆ちゃん!」
と、両親と祖父母がいる居間へと駆け込んだ。
息をスマホを手に息をきらす陽菜を見て、両親……父・優誓と母・清光、祖父母である洋次郎と福世ギョッとなったが、
「ど、どうしたの陽菜? そんなに慌てて……」
と、すぐにハッとなった清光が陽菜向かってそう尋ねると、清光は鳴り止まないスマホの画面を見せながら、
「お、お兄ちゃんから電話が来た!」
と叫んだので、その瞬間、漸くハッとなった優誓は、すぐに陽菜を居間に招き入れた。
その後、陽菜の側に集まってきた両親と祖父母に、陽菜がコクリと頷くと、恐る恐るスマホを操作して、
「も、もしもし……?」
と、画面向かってそう言った。
次の瞬間、陽菜スマホが眩い光を放ち、その後すぐに光が消えると、陽菜達の目の前に大きな画面が現れて、
「……やぁ、陽菜。あ、父さんに母さん、爺ちゃん婆ちゃんもいたんだ」
そこには、兄である水音が映っていた。
画面越しとはいえ、数日ぶりに見た水音の姿に、
「お、お兄ちゃん!」
と、陽菜は目に涙を溜めながら表情を明るくし、優誓達も「おお!」と小さく驚きの声をあげた。そんな両親達をよそに、
「お、お、お兄ちゃんどうしたの!? 今何処にいるの!? ていうか、お兄ちゃん異世界いるんだよね!? 電話いつの間に出来るようになったの!?」
と、陽菜はもの凄い勢いで水音を問い詰めると、
「お、落ち着いて陽菜。そんなにいっぺんに質問されても、ちょっと困っちゃうから」
と、水音は陽菜に落ち着くようにと促した。
それに従ったかのように、ハッとなった陽菜は
「ご、ごめんなさい」
と謝罪した。
水音はその様子を見た後、
「えっとね、まず電話が出来た訳は、僕が今持ってるこのスマホ、春風が改造してくれたんだ。だから、こうして異世界間で通話が出来るようになったんだ」
と、説明した。そのおかげか、
「そうか、彼が……」
「ふふ。水音、良いお友達を持ったわね」
優誓も清光も、表情を柔らかくした。洋次郎と福世も、「なるほどな」と納得したかのような表情になった。
その様子を見て、水音は「ハハハ」と笑ったが、すぐに真面目な表情になって、
「陽菜、それに父さん達。今日はね、大事な話をする為に電話をしたんだ」
と言ったので、陽菜達は「え?」と首を傾げた。
「だ、大事な話って、何?」
と、陽菜が恐る恐る尋ねると、
「僕ね、思い出したんだよ」
「な、何を……?」
水音は更に真面目な表情になって答える。
「3年前、僕が母さんを傷つけたと思ってた、『あの日』の真実だよ」
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