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間章7
間話53 水音、目を覚ます
しおりを挟む煌良がエルバートと戦っていた、丁度その頃、
「う、うーん……」
ルイーズとの戦いの後で、意識を失っていた水音が目を覚ました。
「あ、水音君が目を覚ましたよ!」
と、水音の側でそう叫んだのは、水音の「パワーアップ」に大きく貢献した、ループスの分身1号、イチだった。
イチはあの戦いの時に水音と1つなったのだが、戦い終わって水音が意識を失った後、どういうわけか水音の体から出てきてしまったのだ。後で聞いてみたが、イチ本人も、その理由はわからないという。
水音が目を覚ましたのを知って、
「「「水音!」」」
セレスティア、リネット、アビゲイルはすぐに水音の側に駆け寄った。
一方、目覚めたばかりの水音はというと、
「あ、あれ? イチ? セレスティア様? リネットさんに、アビーさんも……」
と、まだ意識がハッキリしていないのか、ゆっくりと首を動かしながら、集まってきたセレスティア達を見た。その際、
(あれ? 何で僕、ベッドの上にいるんだ?)
と、自身がベッドに寝かされているのに気づき、頭上に「?」を浮かべた。
その後、水音は側にいるセレスティア向かって、
「あの……ここ、は?」
と尋ねると、
「ここはグレアムの家だ。お前はあの戦いに後、急に意識を失ってな、急いでここに運び込んだんだ。勿論、ちゃんと手当をして、な」
と、セレスティアはそう答えた。
次の瞬間、
「戦い……って、そうだよ戦いは……!」
と、水音はそれまでの記憶を思い出してガバッと起き上がったが、
「あう!」
と、激しい痛みに襲われて、思わず自身の胴体を押さえた。
その時、よく見ると上半身は鎧を着ていなくて、代わりに包帯がぐるぐると巻かれているのに気づき、
「あれ? あれ!? 何で、包帯!? え、どうなってんの!?」
と、水音は自身の状況に混乱し出した。
するとそこへ、
「お、落ち着いて水音君!」
と、イチがそう叫ぶと、
「あれ、イチ!? 何でイチが外にいるの!?」
と、驚いた水音はイチに向かってそう尋ねた。無理もないだろう。ルイーズとの戦いの時、自身と1つになったと思っていたイチが、こうして側にいるのだから。
尋ねられたイチはギョッとなりながらも、
「え、えっと、それは僕にもわからなくて、戦いが終わったと思ったら、何故か外に出ちゃったみたいで……」
と、「自分でもよくわからない」と言わんばかりに、幾つもの「?」を浮かべながらそう答えた。
すると、
「あ、それなら……!」
と、何かに気づいた水音は、ゆっくりと目を閉じて、
「……フェイト、聞こえる?」
と、小さく呟いた。
次の瞬間。
ーー聞こえてるよ、水音君。
と、頭の中でそう「声」が聞こえた。
その「声」を聞いて、水音は「ああ、よかった」と小さく呟くと、
「……おい、水音」
と、名前を呼ばれたので、水音は「ん?」とその声がした方へと向くと、
「……あ」
そこには、「ちょっと怒ってます」と言わんばかりに全身から怒りのオーラを放出させた、セレスティア、リネット、アビゲイルがいた。
因みに、そんな彼女達を見て、イチは「ヒィイ!」と体をブルブルと震わせていた。
「私達を無視するとは良い度胸じゃないか。なぁ、水音?」
顔は笑ってはいるが目は明らかに笑ってないセレスティア達を見て、水音はすぐにベッドの上で正座をすると、
「ご心配をおかけして、申し訳ありませんでしたぁ!」
と、深々と頭を下げて謝罪した。
それを聞いて、セレスティアは「やれやれ……」と呟くと、水音の上半身を起こして、その身を優しく抱きしめた。
突然のことに水音が「え?」と首を傾げると、
「本当に、心配したんだからな」
と、セレスティアに耳元で優しくそう言われたので、
「……本当に、申し訳ありませんでした」
と、水音は少し涙目になりながら、再び謝罪した。
その後、少し落ち着いた水音は、
「あの、それでループス様や他のみんなは今どこにいるのですか?」
と、セレスティアに尋ねると、
「ああ、あいつらなら、外で楽しくやってるよ」
と、セレスティアは窓の外を見ながらそう答えたので、水音も「え?」と窓の外を見た。
そこでは、ループスを含めた多くの人達の歓声を受けながら、エルバートと戦う煌良の姿があったので、
「……ああ、なるほど」
と、水音は「ハハ……」と乾いた笑い声をこぼした。
するとその時、
「……で、水音。私達からも質問してもいいか?」
と、セレスティアが口を開いたので、
「? 何でしょうか?」
と、水音がそう返すと、
「お前があの『天使』となった女に斬られた後、一体何が起きたんだ?」
と、セレスティアは真面目な表情でそう尋ねてきた。
その瞬間、どうやらルイーズに斬られた後のことを聞きたいのだと理解した水音は、すぐにイチの方を見た。
イチは最初ビクッとなったが、その後すぐに、
「いいよ、話してあげて」
と、笑って「OK」を出したので、水音はセレスティア達を見て、
「わかりました、全てお話しします」
というと、水音は文字通り、「全て」を話し始めた。
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