ユニーク賢者の異世界大冒険

ハヤテ

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間章7

間話52 煌良vsエルバート

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 それは、「パワーアップ」を果たした水音が、「天使」となったルイーズに勝利した、少し後のことだった。

 あの戦いの後、「力」を使い果たしたのか、水音はすぐに意識を失った。その後、水音はセレスティア達によって「保護区」の代表であるグレアムの家へと運び込まれ、住人達よって手当を受けた。

 さて、それから少し時間が過ぎると、

 「俺と、勝負してください!」

 と、「地球」から召喚された「勇者」の1人である力石煌良が、住人の1人に勝負を挑んでいた。

 「ハァ、勝負……って、私とですか?」

 挑まれている住人の名は、エルバート。見た目は20代後半くらいの大人しそうな男性だが、その正体はルイーズと神獣との戦いの時に助っ人になってくれた、の獣人だ。因み、今はをしていない。

 それと同時に、煌良がこの「保護区」に来た目的の人物でもある。

 いきなり勝負を挑まれて、エルバートはどうしたものかと困った表情をしていると、

 「スマン、エルバートよ」

 と、グレアムにポンと肩に手を置かれてしまったので、

 「わ、わかりました」

 と、エルバートは観念して煌良との勝負を受けることにした。その際、視界の隅に「よっしゃあ!」と言わんばかりにガッツポーズをとる煌良が見えたのだが、エルバートはスルーすることにした。

 それからすぐに、保護区にある広場にて、煌良とエルバートの勝負が行われた。

 学、麗生、ループス、そしてグレアムを含む大勢の住人達に見守られる中、自身の武器である矛を構える煌良と、既にライオンの獣人の姿に変身していたエルバートが睨み合っている。

 勝負の前に、

 「武器は持たないのか?」

 と、変身後のエルバートが尋ねてきたので、

 「持ってもいいんですか?」

 と、煌良が尋ね返すと、

 「問題ない。やられる前に

 と、かなり物騒な答えが返ってきた。どうやらこのエルバートという人物は、変身前と変身後では口調や雰囲気が異なるようだ。

 そして、お互い睨み合う両者に、

 「それでは、始め!」

 と、グレアムが叫ぶ。

 その後すぐに両者が動き、戦闘が始まった。

 「勇者」である煌良が武器や身につけてきたスキルを活かして攻撃を仕掛けるが、対するエルバートは涼しい表情でそれらを受け流しただけでなく、その隙をついて的確に反撃までしてきた。

 そんな2人の戦いを見て、周囲はゴクリと固唾を飲み、タラリと冷や汗を流していた。

 両者一歩も引かない凄まじい戦いが続く中、

 (く、このままではこっちが不利になるな)

 と考えた煌良は、一旦エルバートから離れて距離をとると、矛を構え直して、

 「ハァアアアアア……」

 と、意識を集中し出した。

 それを見て「何かが来る」とを察したエルバートは、落ち着いた態度でその様子を見ながら身構えた。

 そして、を終えた煌良は、

 「くらえ、『紅蓮大流星』!」

 と、エルバートに向かって自身の最大の技を放った。

 その名の通り、紅蓮の炎を纏った流星が、エルバートに向かって真っ直ぐ突き進むが、対するエルバートはというと、

 「ほう、中々の大技のようだな」

 と、落ち着いた態度を崩さずに、その大技をジッと見つめていた。

 その後、エルバートは右手をグッと握りしめ、それに「力」を込めると、

 「ハァッ!」

 なんと、その大技に向かって「正拳突き」をお見舞いした。

 次の瞬間、その「正拳突き」を受けた炎の流星は、まるで破裂したかのようにボンッと音を立てて消滅した。

 それを見た煌良は、

 「ば、馬鹿な……」

 と、あまりの出来事に絶句していると、

 「良い技だった。だが……」

 すぐ側までエルバートが近づいていたのに気づかず、

 「終わりだ」

 「しま……!」

 と、逃げるまもなく彼から強烈なチョップを受けて、

 「ぐ……あ……!」

 持っていた矛を落とし、その場に膝から崩れ落ちた。

 「くぅ……」

 ダメージが大きかったのか、煌良はその場から動けずにいると、

 「どうした? まだ来るか?」

 と、エルバートに睨まれながらそう尋ねられたので、

 「……いえ、俺の負けです」

 と、悔しそうに自身の負けを認めた。

 それを聞いて、

 「それまで! 勝者、エルバート!」

 と、グレアムがそう叫ぶと、周囲から「ワァアア!」と歓声が上がった。

 その後、エルバートは変身を解いて、

 「えっと、大丈夫ですか?」

 と、煌良に尋ねると、

 「……次は、絶対に負けません」

 と、煌良は真っ直ぐエルバートを見てそう答えた。

 その答えを聞いたエルバートは、

 「楽しみに、待ってます」

 と、煌良にスッと右手を差し出すと、

 「フ……」

 と、煌良は笑みを浮かべて、その手を取った。
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