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第14章 更なる「力」を求めて
第418話 水音編14 水音と「運命の出会い」2
しおりを挟む時は戻って3年前、水音が「鬼の闘気」を暴走させたうえに、それで母である清光を傷付けてしまってから数日後。
「……」
そのショックからか、水音は心を閉ざしてしまい、1人自室に引きこもるようになっていた。食事にも手をつけていない為、その身は酷く痩せ細っていた。
(ああ。僕は、このまま死ぬんだろうな。でも、仕方ないか)
と、生きることを諦めていたその時、
「お邪魔しまーす!」
という声が家の玄関から聞こえた。
(あれ? 誰だろう? なんか、何処かで聞いたような声だな)
そう思った水音は、痩せ細った少しずつ体を動かしながら自室を出て、玄関へと向かった。
(あ、父さん、母さん、陽菜、それに爺ちゃんに婆ちゃん。よかった、母さん無事だったんだ。ん? あの人は誰だろう?)
玄関に着くと、そこには父・優誓と母・清光、妹・陽菜と母方の祖父・洋次郎と祖母・福世そして、見知らぬ若い女性がいたが、
(あの人って確か、女性冒険家の間凛依冴さん?)
と、その女性の顔を見て、水音はその女性の名を思い出した。その時「あ!」と小さく声をもらしてしまい、それに気付いた女性ーー凛依冴が、
「あれ? 息子さんいるじゃないですか!」
と、表情を明るくした。それと同時に、優誓ら水音家族達も一斉に水音方へと振り向いた。
「あ……っ!」
驚いた水音はすぐにその場を離れようとしたが、力が入らなかったのか、その場に倒れてしまった。
そんな水音を見て、
『水音!』
「お兄ちゃん!」
と、家族達は水音の側に駆け寄った。当然、その後には凛依冴も続いた。
そして、優誓達家族全員が水音に声をかける中、
「ちょとぉおおおおおっ! スンゴイ死にそうになってんじゃないの!」
と、水音の姿を見て、凛依冴が声を荒げた。
その後、凛依冴はすぐに優誓達を押し除けて水音の側に立ち、彼の状態を見ると、
「うん、これね」
と、凛依冴は腰につけた小さなポーチから、何かを取り出した。
それは掌サイズの小瓶のようで、中には何か液体が入ってるのが見えた。そして優誓達が見ている中、凛依冴は小瓶の蓋を外すと、それを水音の口に突っ込み、中の液体を飲ませた。
「んぐ!?」
突然のことに驚いた水音だったが、声をあげる間もなくその液体を飲み込んでしまった。
「ちょ、お兄ちゃんに何をしたの!?」
と、陽菜が凛依冴を問い詰めようとしたその時、
「……あれ?」
水音の体が、緑色に輝いた。
その後、すぐにその光がおさまって、水音だけでなく優誓達までもがポカンとしていると、
「ああ、大丈夫。ちょっと特別な『栄養ドリンク』だから」
と、凛依冴は満面の笑みを浮かべてそう言った。
ーー絶対に嘘だ!
と、水音を含めた誰もがそう思った時、
「あーちょっと失礼」
と、凛依冴は水音をジィッと見つめながら体中を触った。
「これは……。かなり痩せ細ってるし、瞳に生気が感じられないわ」
と、凛依冴は小さくそう呟くと、「うーん」と考え込み、
「……うん。これは、ハニーの出番ね」
と、何かを閃いたかのようにそう言った後、凛依冴はスッと立ち上がり、水音達から少し離れると、ズボンのポケットからスマートフォンを取り出し、
「あーもしもし……」
と、何処かに電話をかけた。
「あの、何処に電話をかけたんですか?」
と、陽菜が凛依冴に尋ねると、
「応援……かな?」
と、凛依冴はふざけた感じでそう答えた。
それから暫くすると、
「ごめんくださぁい」
と、玄関から声が聞こえたので、
「あ、来た来た来たぁ!」
と、凛依冴は浮かれ気分で玄関に向かった。当然、水音達も「何だろう?」と凛依冴の後に続いた。
そして、全員が玄関に着くと、
「いらっしゃい、マイスウィートハニー!」
「あの、師匠。恥ずかしいのでその呼び方やめてほしいんですが」
と、凛依冴が玄関に来た、とある1人の人物に抱きついていた。
それは、男物の服を来た、水音と同い年くらいの短い黒髪を持つ可愛らしい少女だった。
『……どちら様ですか?』
と、水音達が凛依冴に尋ねると、
「紹介するね。この子は春風。私の弟子兼、愛しのマイスウィートハニーよ」
と、凛依冴は水音達に、その少女を紹介した。
『……』
少女の可愛さに水音達が見惚れていると、
「あの……初めまして、幸村春風といいます。『スウィートハニー』は余計ですが、間凛依冴の弟子をしております」
と、少女ーー春風は水音達に向かってそう自己紹介した。
それを聞いて水音達が、
『は、はぁ、どうも』
と、全員更に見惚れていると、
「あ、因みにこの子、男の子だからね」
と、凛依冴が春風を見ながらそう言った。
それを聞いた水音達が、
『……え?』
と、皆、一斉に頭上に「?」を浮かべると、
「……はい。俺、顔はこんなですが、男です」
と、少女……否、少年・春風もそう言った。
次の瞬間、
『な、何だってぇえええええええっ!?』
と、水音達は驚愕の声をあげた。
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