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第14章 更なる「力」を求めて
第417話 水音編13 水音と「運命の出会い」
しおりを挟む「そうでしたか、ご自身の力でお母上を……」
水音の「過去」を聞き終えて、グレアムは悲しそうな表情になった。それは、セレスティアをはじめとした仲間達も同様だった。
沈んだ雰囲気の中、煌良が口を開く。
「そんな結末になったんだな」
「あれ? 見てたんじゃなかったの?」
「見てはいたが、情けないことにお前が同級生を薙ぎ払う様を見て思わず逃げ出してしまってな、最後まで見ていなかったんだ。初めてだったよ、人を心から『怖い』と思ったのは」
そう答えると、煌良は表情を暗くした。よく見ると、微かに体を震わせていた。
そして、
「……僕、そんな辛い記憶を掘り起こしちゃったんだ」
と、分身1号は自分がしてしまったことを理解して罪悪感に陥った後、水音に向かって恐る恐る質問する。
「えっと……お母さん、それでどうなったの?」
「ああ、母は無事ですよ。つい最近向こうと話が出来ましたから」
と、弱々しく笑いながらそう言うと、水音は春風の魔導具の力で地球にいる家族と話が出来るようになったと説明した。そして、「母は今も元気です」と最後に付け加えると、
「そう……なんだ」
と、分身1号は「よかった」と言わんばかりにホッと胸を撫で下ろした。
すると、今度はそれまで黙って話を聞いていた麗生が口を開いた。
「それで、お前はその後どうなったんだ?」
「? どう……って?」
「あ、いや、その……それだけのこを引き起こしたのだから、周りから責められたりとかされなかったか?」
気まずそうにそう尋ねてきた麗生を見て、水音は表情を暗くして答えた。
「……誰も、責めてこなかったよ」
「誰も?」
「うん。母さんは勿論、父さんも、爺ちゃんも婆ちゃんも、そして陽菜も、僕を責めなかった。寧ろ、母さんからは、『あなたは悪くない』って優しく言われちゃったよ」
「そ、そうか、優しい人なんだな」
と、何処か安心したように言う麗生。
しかし、水音は表情を暗くしたまま話を続ける。
「だけど、それでも僕は、自分がしてしまったことを許すことが出来なかった。あれから食事も喉を通らず、訓練をする気にもなれなかった。後悔と罪悪感でいっぱいになって、次第に僕は自分の殻に閉じこもるようになったんだ。それこそ、『もう自分なんてどうなっても良い』って思えるくらいにね」
「そこまで思い詰めていたのか。それで、よくそこから立ち直れたな。一体どうやったんだ?」
と、話を聞いた煌良がそう質問してきたので、その質問に水音が答える。
「そこはまぁ……師匠と春風のおかげかな」
「師匠と春風……だと?」
「うん、さっきも言ったけど、あの出来事の後、食事も訓練をする気にもなれずに、ずっと自室に……自分の殻に閉じこもってたんだ。それこそ、『死んでしまいたい』って思ってたんだ」
「水音……」
「だけど、そんなある日、師匠が僕の家に来たんだ。僕はあれが初めての出会いって思ってたんだけど、父さんが言うには、僕が『鬼の闘気』を暴走させてしまった時、それを止めてくれたのが師匠なんだ」
「何? そうなのか?」
「うん。僕は正直その時のことを、あまり覚えてないんだけどね」
と、「ハハ」と自嘲気味に笑いながらそう話す水音。それを聞いたグレアムと水音の仲間達は、「えぇ?」と若干ドン引きしたような表情になった。
更に水音は話を続ける。
「で、その日は様子を見に来たって師匠は言ってたんだけど、その時の僕の姿を見て……」
ーーちょっとぉおおおおお! スンゴイ死にそうになってんじゃないの!
「って怒鳴った後、何処かに電話をかけたみたいなんだ。そしてそれから暫くすると……」
ーーあ、来た来た来たぁ!
「って、何処か浮かれ気分で家の玄関の行っちゃったんだ。で、その時玄関の向こうから出てきたのは……」
ーーいらっしゃい、マイスウィートハニー!
ーーあの、師匠。恥ずかしいのでその呼び方やめてほしいんですが。
「春風だったんだ」
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