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第14章 更なる「力」を求めて
第414話 水音編10 闇の中の水音・2
しおりを挟むーー怖い!
ーー近寄るな!
ーー化け物!
(ああ、僕はまた……)
暗い闇の中で、水音は膝を抱えていた。
その耳に入ったのは、幼い頃に自分が周囲から言われてきた言葉だった。
生まれた時から持っていた「力」。
その「力」の所為で、水音は周囲から忌み嫌われていた。
特に幼い子供からは、まるで「お化け」を見るような目で見られてきたので、その所為で水音は、いつも1人ぼっちだった。
しかし、理解のある家族のおかげでその「力」を抑えることが出来るようになり、特に問題なく日常を送ることが出来ていた。
しかし、「あの事件」で水音は、抑えていた「力」を暴走させた。
ただ、大切な家族を助けたかっただけなのに。
(向き合えたと、思ってたんだけどなぁ……)
心の中でそう呟くと、水音は膝を抱える力を強めた。
その時、遠くで何かが聞こえたような気がして、
(もう、聞きたくない!)
と、水音は膝から手を離し、耳を塞ごうとした。
だが、
「大丈夫だよ」
「え?」
その前に、「誰か」に両腕をガシッと掴まれた。
水音は「誰?」と尋ねようとしたが、それを遮るかのように、
「大丈夫。この『声』は、悪いものじゃないから」
と、背後からそう言わたので、
「う、嘘だ!」
と、水音はその言葉を否定しようとしたが、
「彼女達を信じるんだ」
「え?」
その言葉を聞いて、水音は「怖い」と思いながらも、恐る恐るその「声」を聞こうとした。
その結果……。
ーー水音、もう大丈夫よ!
「リネットさん?」
ーーそうだぜ! ここにはあたしらがいるんだ!
「アビーさん?」
ーーああ、そうだ。ここには私達がいる。お前はもう、1人じゃない。だから……もう泣くな。
「! セレスティア様!」
その瞬間、水音の周りで、パリィンという大きな音が鳴り、それまでいた真っ暗な空間は、一気に白なった。
「全く、世話の焼ける人だよ君は」
と、背後から聞こえた言葉と共に。
そして、現実では……。
「あ、見て!」
と、学が目の前を指差しながら言うと、水音から噴き出た青いオーラは少しずつ勢いを弱めていき、終いには完全に消えた。
その後、
「水音、大丈夫か?」
と、水音を抱きしめているセレスティアがそう尋ねると、
「ご心配おかけして、申し訳ありませんでした」
と、水音は抱きしめられた状態で謝罪した。
すると、
「おいコラ、そこは謝罪するところじゃないだろ?」
と、セレスティアはムッとなってそう言った。
水音はそれを聞いて「え?」と頭上に「?」を浮かべたが、すぐにハッとなって、
「あ、ありがとう……ございます」
と、抱きしめられた状態のまま、今度はお礼を言った。
「うむ、よろしい」
と、セレスティアに笑顔でそう言われたのか、水音は安心したかのように両目を閉じて、静かに寝息を立てた。
セレスティアはそれを見た後、
「すまないが、水音を休ませたい」
と、グレアムに向かってそう言った。
それを聞いたグレアムは、
「わかりました。では、私達の家に戻りましょう」
と言うと、その場にいる者達全員を連れて、洞窟を後にした。
「……」
そう、「黒い獣」こと、ループスの分身1号も一緒に。
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