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間章6
間話50 ジゼルとウォーレン
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*間章6、最終話です。
セイクリア王国側のキャンプ地にて、地球人女子とエルード人女子による「女子会」が行われた、丁度その頃、
「フゥ……」
セイクリア王国側とウォーリス帝国側のキャンプ地から離れたところにある滝の側で、ジゼルは1人、夜空に浮かぶ月を見ながら考え事をしていた。
彼女が考えていたのは、主に昼間でのこと。
そう、「彼岸花」という少女の姿をした精霊に対して、
「私と1つにならない?」
と、尋ねてしまった時のことだった。
(どうして私は、あんなことを言ってしまったのだろう?)
実を言うと、ジゼルがそう言った理由は、ジゼル自身もわからなかったのだ。
「消えてしまう」と言われた精霊を見て、「助けたい」と思ったのか。
それとも、ただ「なんとなく言わなきゃいけなくなった」と思ったのか。
改めて考えてみると、自分でも「何を言ってるんだ私は?」と思い、
(勝手なことを言って、春風様、怒ってるでしょうか?)
と、ジゼルは不安な気持ちになった。
するとその時、
「む、先客がいたのか」
「!」
という声がしたので、ジゼルは驚いて声がした方へと振り向くと、
「久しぶり、というべきかな?」
「……ウォーレン・アークライト」
そこにいたのは、断罪官大隊長のウォーレンだった。
「どうして、あなたがこちらに?」
と、警戒心を剥き出しにしたジゼルが尋ねると、
「ちょっと散歩をしてただけだ」
と、ウォーレンは無表情でそう答えた。
それから少しの間、両者がお互いをジィっと無言で見つめていると、
「……あの、何をジッと見てるのですか?」
と、沈黙に耐えられなかったジゼルが再び尋ねた。
尋ねられたウォーレンはというと、
「いや、まさかこうして、自分が殺した人間と再会出来るとは思わなくてな」
と、無表情のまま答えた。
その答えを聞いて、ジゼルが「そうですか」と小さく言うと、
「ジゼル・ブルーム」
「な、何ですか?」
「貴様はまだ、我々が憎いか?」
と、ウォーレンはやはり無表情のままそう尋ねてきた。
「っ!」
その瞬間、ジゼルの脳裏に浮かんだのは、大切な家族と、自分自身を殺された時の記憶だった。
ジゼルは顔を下に向けたが、すぐにゆっくりと顔を上げて答える。
「そんなの、憎いに決まってるでしょ! 家族を殺されて、あなたに首まで斬り落とされたんですから!」
そう答えて、ジゼルはギロリとウォーレンを睨んだ。
しかしウォーレンは特に気にしてないといっった表情で、再びジゼルに尋ねた。
「ならば何故、幸村春風に私を殺させなかった?」
そう尋ねられた瞬間、ジゼルはカッとなって、
「ふざけないで! そんなの駄目に決まってるでしょ!? そんなことをさせたところで、私も私の家族も生き返るわけじゃないないし、あなたのような人間の血で、春風様の手が汚れるなんて絶対に嫌よ!」
「……」
「それに何より、私の憎しみを、彼に押し付けたくなんてない」
そう言ったジゼルの目は、いつの間にか涙が溢れていた。
それを見たウォーレンは、それでも無表情を崩さずに、
「……そうか」
と、小さく呟いた。
ジゼルはそんなウォーレンを見て、
「というかあなた、春風様に2度もボコボコにされたんですから、いい加減春風様を殺そうとするのはやめなさい!」
と喚くと、
「それは嫌だ」
と、ウォーレンは即答した。
「な、何故ですか!?」
驚いたジゼルがそう尋ねると、
「誰だってやられっぱなしは嫌に決まってるだろう? それに……」
「?」
「奴は我々断罪官の、純情を弄んでのだ。それは絶対に許さん」
真っ直ぐジゼルを見てそう言い放ったウォーレン。
ジゼルはその言葉に思わずズッコケそうになったが、すぐに持ち直して、
「な、ちょ、ちょっと待ちなさい! いつ彼があなた方の純情を弄んだというのですか!?」
と、ウォーレンを睨みながら問い詰めると、
「いつだと? 貴様も見ただろ? 異国の巫女の服を着た時の奴を。エリノーラ皇妃様用意したドレスを華麗に着こなす奴の姿を! 男でありながらあの可憐さと美しさ、どう見ても『罪』と呼べるものじゃないのか!?」
と、ウォーレンは目をカッと見開きながら答えた。
その答えにジゼルは「うぐ! それは……」と体勢を崩しかけたが、またすぐに持ち直して、
「そ、それでしたら、あなたのところのユリウス小隊長はどうなのですか!? あの方だって、男でありながら女性のような美しさを持っていますが!?」
と、再び問い詰めると、ウォーレンは「なんだそのことか」と小さく呟いて、
「悪いがジゼル・ブルームよ」
「な、何ですか?」
「それはそれ! これはこれだ!」
と、真っ直ぐジゼルを見てそう答えた。
「んまぁあああああっ! な、なぁんですってぇえええええええ!?」
その後、ジゼルとウォーレンは激しい言い争いを繰り広げた。
主に、春風の美しさについて。
そして、そんな彼女達の後ろにある森ではというと、
「なぁ、春風にウィルフ」
「な、何ですかギルバート陛下?」
「何だろうかギル?」
「あいつら、どう思うよ?」
「『やれやれ』、という感じだな」
「……同じくです」
と、こんなやりとりがあったのだが、目の前の彼女達が気付くことはなかった。
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どうも、ハヤテです。
というわけで、以上で間章6は終了し、次回からは本編新章となります。
お楽しみに。
セイクリア王国側のキャンプ地にて、地球人女子とエルード人女子による「女子会」が行われた、丁度その頃、
「フゥ……」
セイクリア王国側とウォーリス帝国側のキャンプ地から離れたところにある滝の側で、ジゼルは1人、夜空に浮かぶ月を見ながら考え事をしていた。
彼女が考えていたのは、主に昼間でのこと。
そう、「彼岸花」という少女の姿をした精霊に対して、
「私と1つにならない?」
と、尋ねてしまった時のことだった。
(どうして私は、あんなことを言ってしまったのだろう?)
実を言うと、ジゼルがそう言った理由は、ジゼル自身もわからなかったのだ。
「消えてしまう」と言われた精霊を見て、「助けたい」と思ったのか。
それとも、ただ「なんとなく言わなきゃいけなくなった」と思ったのか。
改めて考えてみると、自分でも「何を言ってるんだ私は?」と思い、
(勝手なことを言って、春風様、怒ってるでしょうか?)
と、ジゼルは不安な気持ちになった。
するとその時、
「む、先客がいたのか」
「!」
という声がしたので、ジゼルは驚いて声がした方へと振り向くと、
「久しぶり、というべきかな?」
「……ウォーレン・アークライト」
そこにいたのは、断罪官大隊長のウォーレンだった。
「どうして、あなたがこちらに?」
と、警戒心を剥き出しにしたジゼルが尋ねると、
「ちょっと散歩をしてただけだ」
と、ウォーレンは無表情でそう答えた。
それから少しの間、両者がお互いをジィっと無言で見つめていると、
「……あの、何をジッと見てるのですか?」
と、沈黙に耐えられなかったジゼルが再び尋ねた。
尋ねられたウォーレンはというと、
「いや、まさかこうして、自分が殺した人間と再会出来るとは思わなくてな」
と、無表情のまま答えた。
その答えを聞いて、ジゼルが「そうですか」と小さく言うと、
「ジゼル・ブルーム」
「な、何ですか?」
「貴様はまだ、我々が憎いか?」
と、ウォーレンはやはり無表情のままそう尋ねてきた。
「っ!」
その瞬間、ジゼルの脳裏に浮かんだのは、大切な家族と、自分自身を殺された時の記憶だった。
ジゼルは顔を下に向けたが、すぐにゆっくりと顔を上げて答える。
「そんなの、憎いに決まってるでしょ! 家族を殺されて、あなたに首まで斬り落とされたんですから!」
そう答えて、ジゼルはギロリとウォーレンを睨んだ。
しかしウォーレンは特に気にしてないといっった表情で、再びジゼルに尋ねた。
「ならば何故、幸村春風に私を殺させなかった?」
そう尋ねられた瞬間、ジゼルはカッとなって、
「ふざけないで! そんなの駄目に決まってるでしょ!? そんなことをさせたところで、私も私の家族も生き返るわけじゃないないし、あなたのような人間の血で、春風様の手が汚れるなんて絶対に嫌よ!」
「……」
「それに何より、私の憎しみを、彼に押し付けたくなんてない」
そう言ったジゼルの目は、いつの間にか涙が溢れていた。
それを見たウォーレンは、それでも無表情を崩さずに、
「……そうか」
と、小さく呟いた。
ジゼルはそんなウォーレンを見て、
「というかあなた、春風様に2度もボコボコにされたんですから、いい加減春風様を殺そうとするのはやめなさい!」
と喚くと、
「それは嫌だ」
と、ウォーレンは即答した。
「な、何故ですか!?」
驚いたジゼルがそう尋ねると、
「誰だってやられっぱなしは嫌に決まってるだろう? それに……」
「?」
「奴は我々断罪官の、純情を弄んでのだ。それは絶対に許さん」
真っ直ぐジゼルを見てそう言い放ったウォーレン。
ジゼルはその言葉に思わずズッコケそうになったが、すぐに持ち直して、
「な、ちょ、ちょっと待ちなさい! いつ彼があなた方の純情を弄んだというのですか!?」
と、ウォーレンを睨みながら問い詰めると、
「いつだと? 貴様も見ただろ? 異国の巫女の服を着た時の奴を。エリノーラ皇妃様用意したドレスを華麗に着こなす奴の姿を! 男でありながらあの可憐さと美しさ、どう見ても『罪』と呼べるものじゃないのか!?」
と、ウォーレンは目をカッと見開きながら答えた。
その答えにジゼルは「うぐ! それは……」と体勢を崩しかけたが、またすぐに持ち直して、
「そ、それでしたら、あなたのところのユリウス小隊長はどうなのですか!? あの方だって、男でありながら女性のような美しさを持っていますが!?」
と、再び問い詰めると、ウォーレンは「なんだそのことか」と小さく呟いて、
「悪いがジゼル・ブルームよ」
「な、何ですか?」
「それはそれ! これはこれだ!」
と、真っ直ぐジゼルを見てそう答えた。
「んまぁあああああっ! な、なぁんですってぇえええええええ!?」
その後、ジゼルとウォーレンは激しい言い争いを繰り広げた。
主に、春風の美しさについて。
そして、そんな彼女達の後ろにある森ではというと、
「なぁ、春風にウィルフ」
「な、何ですかギルバート陛下?」
「何だろうかギル?」
「あいつら、どう思うよ?」
「『やれやれ』、という感じだな」
「……同じくです」
と、こんなやりとりがあったのだが、目の前の彼女達が気付くことはなかった。
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どうも、ハヤテです。
というわけで、以上で間章6は終了し、次回からは本編新章となります。
お楽しみに。
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