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第13章 新たな「旅立ち」に向けて
第356話 アデレードとリアナ
しおりを挟むそれは、アデレードがハンターになって暫く経った後のことだった。
その頃のアデレードはハンターとして数多くの仕事をしつつ、時折他のハンターと協力して魔物を討伐していたのだが、
(うぅ。一体いつになったらもっと強い奴と戦えるんだ?)
と思っているように、まだ彼女のランク自体は低かったので、実際にはそれほど強い相手と戦えるわけでもなく、日々不満を募らせていた。
しかし、だからといって仕事自体は手を抜くことはしなかったので、何回か仕事をこなしていく内に、シャーサルの住人からは着実に信頼を得ていた。そしてそんな感じに過ごしていく内に、やがてシャーサルに住むハンター達の間で、
「彼女ならもしかしたら、案外早く白金級ハンターになるんじゃないか?」
と、噂されるようにもなっていた。
そんなある日、アデレードはいつものように仕事を終えてギルド総本部に戻ると、何やら騒がしい様子だったので、「何だろう?」と思って中に入ると、どうやら騒ぎは総本部内にある小闘技場で起こっていることがわかり、すぐにそこに向かった。そして、小闘技場に着くと、そこには大勢の先輩ハンターやギルド職員が集まって、皆、何かを見ていた。
「あの、何を見ているんですか?」
と、アデレードが近くにいた職員にそう尋ねると、
「ああ、最近入ったばかりの新人ハンターの女の子が、『紅蓮猛牛』のメンバーと揉めてしまったらしくて、今そいつらと戦っている最中なんだ」
と、職員はアデレードを見てそう答えた。
その後、アデレードは人混みをかき分けて中に入ると、そのハンターの女の子と紅蓮の猛牛メンバーとの戦いを見つめた。
複数人いる紅蓮の猛牛メンバーに、たった1人で対峙する女の子。
しかし、よく見ると彼女達が戦っている闘技台の端に、数人程人が倒れているのが見えた。
近くにいる人に尋ねると、その人達も紅蓮の猛牛のメンバーで、全員その女の子に倒されたそうだ。
アデレードがそのことを知った次の瞬間、残ったメンバー達と女の子の戦いが始まった。
多彩な技と魔術を放ってきたメンバー達だが、女の子はいとも簡単にそれら全てを回避した。
その後、女の子はその手に握る短めの棒の端に小振りの片刃剣を取り付けたような武器で、次々とメンバー達を倒していった。
そのあまりにも美しくも、何処か獣のようにも見える女の子の戦いぶりに、周囲の人達は勿論、アデレードも「凄い」と見惚れていた。
やがてメンバー達が全員女の子に倒されると、審判役の職員が、
「全員、戦闘不能確認! 勝者、リアナ・フィアンマ!」
と、声高々に宣言し、その宣言を聞いた瞬間、周囲から大きな歓声があがった。
(リアナ・フィアンマ……か)
そんな歓声が上がる中、アデレードは、
(すっごい戦いたい!)
と、目をキラキラと輝かせた。
そして、リアナが闘技台を出ようとしたその時、
「ちょおっと待ったぁあああああっ!」
と、アデレードは今立っている場所からジャンプして、闘技台の上に降りると、
「リアナ・フィアンマ! 次はこの私、アデレード・マリッサ・グレイシアが相手だぁ! さぁ、私と勝負しろ!」
と言うと、背中に背負った大剣の切っ先を、女の子ーーリアナに向けた。
それを聞いた周囲が「オオ!」と歓声をあげたが、肝心のリアナはというと、
「え、嫌だよめんどくさい」
と、即答し、
「え、何こいつ? 超めんどくさいのが来たんだけど」
と言わんばかりの、もの凄く嫌そうな表情になった。
即答されたアデレードは、
「グハァ! 嫌そうな顔で断られたぁあああああ!」
と、ショックと精神的ダメージを受け、周囲の人達も、
『嫌そうな顔で断りやがったぁあああああっ!』
と、皆一斉にショックを受けた。
とまぁ、長くなってしまったが、これがアデレードとリアナの「ファースト・コンタクト」だった。
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