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第13章 新たな「旅立ち」に向けて
第355話 解散と悶絶、そして……
しおりを挟む「はいはーい、色々と言いたいこととかあるかもしれませんけどぉ、一先ずこの場は解散ねぇ」
春風の悲鳴があがった後、エリノーラはそう言って強引にその場を解散させた。
それを聞いて、周囲の人達は色々と突っ込みを入れたい気持ちを抑えると、そそくさと自分達のキャンプへと戻った。
それから少しして、ウォーリス帝国側のキャンプにある皇族専用テントの中では、
「あーいてて、やっと痛いのが治ったぜぇ」
「ああ、そうだな」
と、先程までエリノーラに頭部を鷲掴みにされたギルバートとクローディアが、それぞれ自分達の頭をさすっていた。
しかし、そんな2人を前に、
「自業自得よ、2人共」
と、エリノーラ1人用意されたお茶を優雅に啜っていた。
「悪かったよエリー。てか、何でお前までここにいるんだよ」
ギルバートは不満そうに謝罪しながらエリノーラに尋ねると、
「何って、其方の方が春風ちゃん達に『どうしても会わなければ』と言うものですから」
と、エリノーラはチラリとテントの出入り口付近に立っている黒いローブの女性を見ながらそう答えた。
「何、そうなのか?」
と、ギルバートが女性に向かってそう尋ねると、女性は黙ってコクリと頷いた。
それを見て、ギルバートは「そうか」と小さく呟くと、
「ところで、肝心の幸村春風はどうしているんだ?」
と、クローディアが尋ねてきたので、
「あー。あいつだったら今……」
と、ギルバートは若干気まずそうに答えようとした。
一方、そんな春風は今、
「あああああ、どうしよぉおおおおお」
と、1人昨夜美羽と一緒に語り合っていた滝の側の岩場に座りながら頭を抱えていた。
無理もないだろう。なにせ、ループスとの決闘からガストとの戦いまで、全てギルバートによって記録&配信されていたのだから。しかも、その後更に詳しく聞くと、実はその前日に行われた裁判も、その戦いの後の学級裁判までも、全て記録&配信、それも世界中の人達に見られていたのだから、そのショックも計り知れなかった。
因みに、それを行ったのはギルバートに命ぜられたレイモンドである。
ともあれ、そんな事実を知ってしまい、春風はショックや混乱や後悔といった様々な感情が一気に噴き出てしまって、以後はこうして1人で悶絶することになったのだった。
「ああ、何でこんなことになってんだ。恨むよギルバート陛下もレイモンド様もぉ……」
と、春風が頭を抱えたままそんなことを呟いていると、
「春風君……」
と、不意に自分の名を呼ぶ声が聞こえたので、春風は「ん?」と声がした方へと振り向くと、
「アーデさん?」
そこには、何やら申し訳なさそうにしているアデレードがいて、こちらに向かって近づいてきた。
「どうしたんですかアーデさん?」
と、側に近づいてきたアデレードに向かって春風が尋ねると、
「さっきは、その、お母様が本当に申し訳なかった」
と、アデレードは深々と頭を下げて謝罪した。
それを聞いて、すぐに先程のことかと理解した春風は、
「あー、こう言うのもなんですけど、中々もの凄い方でしたね。ギルバート陛下とかなり言い争ってたし」
と、気まずそうに返した。
するとアデレードは、
「……お母様は普段あーいう感じなのだが、私達家族や国のことをとても大切に想っているんだ。その所為か、かなり厳しいところもあるのも理解出来るし、『我が道を行く』を通しつつも皇帝として頑張ってるギルバート伯父様のことを凄くライバル視していることも理解出来るんだ」
と、更に申し訳なさそうな感じでそう言った。
それを聞いて、春風も若干申し訳なさそうに、
「へ、へぇ、そうなんだ……」
と、返すと、その後、2人の間に気まずい空気が流れた。
やがて、そんな雰囲気に耐えられなくなったのか、
「えっと、取り敢えず、座りますか?」
と、春風は自身の隣をポンポンと叩いてアデレードを誘った。
アデレードはそれを聞いて「え?」となったが、
「……う、うん、座る」
と、恥ずかしそうに顔を赤くすると、そそくさと春風の隣に座った。
それから2人の間に、再び気まずい空気が流れると、また耐えられなくなった春風が口を開いた。
「あ、あの、アーデさん、このタイミングでなんですけど、聞きたいことがあるんですがいいでしょうか?」
「え? な、何かな?」
突然尋ねられてビクッとなったアデレードに、春風は質問した。
「その……アーデさんと、リアナとの関係なんですが。前に語り合った時はなんとなく聞きにくかったものでして……」
「ああ、そういえばその辺の話はまだだったね」
その質問に、それまで申し訳なさそうにしていたアデレードはすぐに真面目な表情になった。
「うん、わかった。もうかなり前のことなんだけど……」
そして、アデレードはリアナに出会った時のことを話した。
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