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第12章 集結、3人の「悪魔」
第336話 春風vsループス4 決着、そして、「限界」来たる
しおりを挟む「全スキル、オフ!」
そう言い放った春風の言葉を聞いた瞬間、観客席にいる一部の者達が、春風が何をしようとしているのかを理解した。
その中の1人、ギルバートが口を開く。
「あれは、『緋剣・雷斬り』の構えか!」
「何? 秘剣?」
頭上に「?」を浮かべるウィルフレッドに、側にいるイブリーヌが答える。
「あの技は、今ハル様が身につけている全てのスキルを使用不能にすることによって放たれる、ハル様オリジナルの剣技です」
「な、何だと!? 全てのスキルを!?」
すると、今度はギルバートが答える。
「そうだ。だから今のあいつは、スキルの恩恵を全く受けていない状態ということになる」
「つまり、彼が勝つ為には……」
「そう、今日までに春風が身につけてきたスキルに頼らない技術と、剣に秘められた持つ『力』、そして、春風自身の『想い』と『覚悟』、その全てが相手を上回ってなきゃいけねぇ」
そう言ったギルバートの言葉に、横で聞いていた小夜子は、
「そ、そんな!」
と、顔を真っ青にした。それは、翔輝を含めた他のクラスメイト達も同様だった。
観客席がそんな状況になる一方、春風と対峙しているループスはというと、
「ほう、それが『緋剣・雷斬り』、お前オリジナルの技か。だが、スキルの恩恵を自ら捨てた状態で、この俺に勝てると思ってるのか?」
と、春風に向かってそう挑発したが、
「問題ありません、勝つ自信なら十分ありますから。それに、俺は元々ステータスやスキルの概念がない世界の住人ですしね。足りない部分は……ま、精神的な『何か』で補います」
と、春風は構えを解かずに不敵な笑みを浮かべてそう返した。
そんな春風の態度を見て、ループスはニヤリと笑うと、
「『勝つ自信はある』、か……良いだろう!」
そう言って、ループスは更に全身に力を込めた。
「ならばお前のその技、その自信、神であるこの俺に通じるか試してみるがいい!」
その後、ループスは両手でしっかりと長剣を握ると、「いつでも振り下ろせる」といった感じの構えをとった。
「お、オイ、なんかやべえのが来そうって感じしねぇか?」
(お父さん……ハル……)
闘技場の中心で睨み合う春風とループス。
いつでも大技を出せると言わんばかりの荒々しい雰囲気のループスに対し、春風はただ静かにそんなループスを、真っ直ぐ見つめていた。
そして、観客席にいる誰もがゴクリと固唾を飲む中、誰かの冷や汗がポタリと下に落ちた。
その瞬間、
「いくぞ春風、これが『神の一撃』だぁあっ!」
とループスが叫ぶと、力いっぱい長剣を振り下ろした。
放たれたのは、かつてウォーレンが見せた「聖光轟雷斬」よりも大きな、稲妻を纏った斬撃だった。
まともにくらえばただでは済まされないその攻撃が春風に向かって襲いかかってくるが、
「……」
それでも、春風はジッとその場を動かないでいた。
「ゆ、幸村、逃げろ! 逃げてくれぇ!」
小夜子がそう悲鳴をあげる中、春風はというと、
(いいえ、先生。それじゃあ駄目なんですよ。何故ならこの戦い、ループス様に勝つ為に必要なのは、小手先の技なんかじゃない。それは、俺の『想い』と『覚悟』なんです。だから……)
「それら全てを込めて、この戦いに勝つ!」
静かにそう言った春風に迫る雷撃と斬撃。
その2つに向かって、春風は叫ぶ。
「『緋剣・雷斬りぃ』!」
そして、春風は勢いよく彼岸花を抜いた。
真紅の刀身による斬撃と、ループスが放った斬撃がぶつかった次の瞬間……。
ーーパキィンッ!
という大きな音と共に、ループスの斬撃は斬り裂かれ、残された真紅の斬撃はループスに直撃したが、それと同時に、
「ああっ!」
「ひ、彼岸花がっ!」
と、誰かがそう悲鳴をあげたように、折れた彼岸花の刀身が宙を舞った。
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