ユニーク賢者の異世界大冒険

ハヤテ

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間章5

間話34 その後の断罪官達

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 それは、春風達「七色の綺羅星」と、ウォーレン達「断罪官」との戦い、そして、アッシュ達への「神の裁き」が終わってすぐのことだった。

 春風達との戦いで負傷した断罪官達は、全員帝城内にある医務室で手当てを受けていた。当然、その中には大隊長であるウォーレンの姿もあった。「炎の神カルド」の分身である、「炎神剣エクスプロシオン」を振るった代償として焼け焦げたかのように黒くなった両腕には何重にも包帯が巻かれていた。

 そんなウォーレンのもとに、1人の男性が近づいてきて、

 「久しぶりだな、ウォーレン」

 と、ウォーレンに声をかけた。

 名前を呼ばれたウォーレンはチラリとその男性を見て、

 「……ラルフか」

 と言った。そう、声をかけたのはモーゼスと共にウォーリスに来た、セイクリアの騎士であるラルフだったのだ。

 ラルフはウォーレンを見て「フフ」と笑うと、

 「随分と元気そうだな」

 と、軽い感じでそう言ったが、

 「……この状態で『元気』に見えるとは、貴様の目は節穴か?」

 と、ウォーレンは包帯でぐるぐる巻きにされた両腕を見せながら、ラルフにそう悪態をついた。

 ラルフはそんなウォーレンを見て、「やれやれ」と言いながら苦笑いしていると、

 「オイオイ、随分なこと言ってくれるじゃねぇか」

 と、ラルフ以上に軽いノリで、皇帝であるギルバートが医務室に入ってきた。

 「……ギルバート皇帝陛下」

 ウォーレンがギルバートを見て小さくそう呟くと、

 「ああそんなにガチガチに固くなるなっての。別にお前さん達をどうこうする気なんざ、これっぽっちもねぇから」

 と、ギルバートは更に軽いノリでそう言った。

 だが、それでもウォーレンは警戒心を緩めることはなく、

 「……我々を裁きに来たのではないのですか? これほどの大人数でここに来た我々を」

 と、ギルバートに尋ねると、

 「だぁから、そんな気はねぇって言ってんだろ。お前さんらの『目的』は知ってるし、その『目的』達成の為に、春風達と正々堂々ぶつかり合い、そんで今に至る。俺にとっちゃもうその『事実』だけで十分だっての」

 と、ギルバートは半ば「メンドくせーなもう!」と言わんばかりの態度でそう答えた。

 それを聞いたウォーレンの側で手当を受ける断罪官の隊員達が、皆一斉に「えぇ?」となっている中、更にギルバートは話を続ける。

 「ま、俺は何もしないが、『こいつ』はどうだろうなぁ」

 そう言ってギルバートが横にずれると、その後ろにいる人物を見て、ウォーレンを含めた断罪官達は、

 『あ……』

 と、小さく声を漏らした。

 「イブリーヌ様!」

 「お久しぶりです、ウォーレン様」

 何故なら、そこにいるのは自分達の祖国であるセイクリアの第2王女、イブリーヌだったからだ。

 ウォーレン達はイブリーヌの存在を確認すると、皆一斉に頭を下げた。出来たらその場で跪きたかったのだが、全員手当てを受けている最中だったので、仕方なく頭を下げるだけになってしまったのだ。

 イブリーヌはそんな彼らを見て、

 「ああ、そんなかしこまらないでください! 傷口に触れてしまいます!」

 と、注意すると、ウォーレンはゆっくりと顔を上げて、

 「……そうですか、あなたが我々を裁くのですね?」

 と、イブリーヌに向かってそう尋ねた。

 すると、イブリーヌは首を横に振るって、

 「いいえウォーレン様。わたくしもギルバート陛下と同じように、あなた方をどうこうする気はありません」

 「な!? し、しかし、我々は……」

 「ウォーレン様達の戦いは、全て見させてもらいました。あなた方とハル様……いえ、春風様達は、それぞれの『誇り』をかけて、正々堂々と戦った。そんなあなた方を裁くなど、わたくしには出来ません」

 『……』

 真剣な表情でそう言ったイブリーヌに、ウォーレン達は何も言うことが出来なかった。

 そんな彼らを見て、イブリーヌは更に話を続ける。

 「まぁ、『裁く』まではしませんが、『お願い』でしたらあります」

 『?』

 頭上に「?」を浮かべて首を傾げるウォーレン達に向かって、イブリーヌはニコリと笑って言う。

 「春風様と戦うのは、もうやめてください」

 イブリーヌにそう言われて、無表情になるウォーレン達。普通だったらそこで、

 「わかりました」

 と、イブリーヌに従うだろう。

 だが、
 
 『お断りします』

 ウォーレン達は、逆らった。

 「えぇ、な、何故ですか!?」

 まさか、逆らわれるとは思わなかったイブリーヌが、驚きの表情でそう尋ねると、

 「申し訳ありませんイブリーヌ様。あの男が『固有職保持者』であることを抜きにしても、我々には、奴をどうしても倒さねばならない『理由』があるからです」

 「り、理由? それは、一体……?」

 ウォーレンの答えを聞いて、イブリーヌだけでなくギルバートとラルフまでもが、タラリと冷や汗を流した。

 そして、ウォーレンはその「理由」を答える。

 「それは……奴が我々の、『純情』を弄んだからです」

 真面目な表情でそう言ったウォーレンを見て、イブリーヌは、

 「……はい?」

 と、首を傾げると、

 「イブリーヌ様は、奴を見てなんとも思わないのですか? 男でありながら、あのような可憐な少女を思わせる顔をした奴を! 奴のあの顔の所為で、隊員達は純情を弄ばれ、ギャレットとダリアは精神的ダメージを受け、そして、私も奴が男だと知って、ショックを受けたのです! これを許さないと言わずして、何と言うのですか!?」

 と、ウォーレンはクワっと目を見開いて力説した。

 それを聞いて、イブリーヌはポカンとなったが、

 「な、なんてことを言うのですか! あのお美しい少女のようなお顔は、ハル様の大事な『魅力』の1つです! そんなハル様の『魅力』を理解せず、まだ戦おうとするなんて、わたくしだって絶対に許せません!」

 と顔を真っ赤にして憤慨し、

 「というか、そちらにいるユリウス様だって、男性でありながら見事に女性的な顔つきではありませんか!?」

 と、ユリウスを指差しながらそう問い詰めると、

 「お言葉ですがイブリーヌ様、それはそれ、これはこれなのです!」

 と、ウォーレンははっきりとそう答えた。

 それを聞いたイブリーヌは、

 「んんんまっ! 何ですってぇ!?」

 と、更に憤慨した。

 その後、イブリーヌとウォーレンの口論は暫くの間続き、ギルバートとラルフはそんな彼女達を見て、

 「やれやれ、だな」

 「……そのようですね」

 と、呆れ顔をするのだった。
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