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第11章 断罪官の逆襲
第306話 アッシュ達への「罰」
しおりを挟むアッシュ達に与える「罰」について。
ギルバートの口からその言葉が出た時、春風を含めた謁見の間にいる者達全員の表情が強張った。
ただ1人、星乃香だけは、
「え、何? どうしたのみんな?」
と言わんばかりにオロオロとしていた。
しかし、そんな状況の中でも、ギルバートは春風に向かって、真面目な表情で話を続ける。
「お前もわかってるとは思うが、今回奴らが行ったことは到底許されるものじゃねぇ。王国から古代の兵器なんてものを持ち出してこの国に入り、皇帝であるこの俺と、自分達の国のお姫様であるイブリーヌがいるとわかっていながらその兵器をぶっ放してきやがった。国王ウィルフレッドがどう考えていようが、こいつは下手すりゃあ『侵略行為』もしくは『宣戦布告』に近い行いだ。おまけにイブリーヌに対する『不敬罪』ともとれる発言や、同じ国の騎士であるディックにも怪我を負わせたんだ」
「……ディックさんは、今大丈夫なんですか?」
「ああ、断罪官の連中と一緒に治療中だ。ただ、ちょいと休ませる必要があるがな」
「ありがとうございます。あの、それでアッシュ……さん達は今どうしてますか?」
「お前なぁ、自分を殺しに来た連中を『さん付け』かよ」
と、ギルバートは呆れ顔になったが、すぐに「ま、いっか」と表情を変えて答える。
「連中なら、全員まとめて牢屋にぶち込んどいたぜ。『神の裁き』を受けてから、なんか不気味なくらい大人しくなっちまってるがな」
「……そう、ですか」
そう言うと、春風は顔を下に向けて、左右の拳をグッと握った。きっとアッシュ達とのいざこざを思い出しているのだろうと、周りはそう理解した。
そんな春風に向かって、ギルバートは口を開く。
「幸村春風、お前に改めて問いたい」
「……何ですか?」
「アッシュ達への処罰、お前ならどうする気だ?」
ギルバートがそう尋ねたその時、
「ま、待ってください陛下!」
と、星乃香が春風とギルバートの間に割り込むように入ってきた。
「お、おう、どうした小日向星乃香?」
「どうしたではありません! 『処罰をどうする』とか、幸村君に何を決めさせようとしているのですか!? 彼にそんな酷いことさせないでください!」
「オイオイ、お前さんは連中に酷い目にあわされた被害者だろう?」
「そ、それはそうですが……でも、あの人達の中には、私に優しくしてくれた人もいました! まさか、その人まで処罰しようというのですか?」
「そうは言ってもな、さっきも言ったように、連中は下手すりゃあ『戦争』の引き金になりかねない行為をしたんだ。どんな事情があるにせよ、俺は『皇帝』としてそんな行為を許すわけにはいかねぇんだよ。俺にも、『守りたいもの』があるんでな」
「っ!」
真面目な表情でそう言ったギルバートに、星乃香はそれ以上何かを言うことが出来なかった。
更にギルバートは続けて星乃香に言う。
「ていうか、春風に『処罰』を考えさせたのは、これで2回目なんだよ」
「え、それはどういう意味ですか?」
「実は数日前、連中の親族が帝城に侵入してな、春風を暗殺しようとしやがったんだ」
「な! それは本当ですか!?」
星乃香に問われて、ギルバートはコクリと頷いた。その後、春風にも尋ねようと振り向いたが、春風も何も言わず、ただ申し訳なさそうにコクリと頷いた。
「そ、そんな……」
その反応に、星乃香はかなりのショックを受けた。そして、側にいた彩織と詩織に支えられながら、弱々しくその場を離れた。
その後、再びギルバートが春風に尋ねる。
「で、お前は連中をどうする気だ?」
尋ねられた春風は、顔を下に向けたまま口を開く。
「……それ、俺が決めていいんですか?」
「ああ。連中の最大の狙いは、親族の救出とお前の抹殺だ。ならば、連中をどうするかを決める権利は、お前にあるってことだ」
「……決めても、ルイーズさん達と同じように、すぐに刑を執行するわけではないんですよね?」
「まぁな。その辺に関しては、ウィルフと話し合って決めることになるんだがな」
「そうですか」
春風はその後少しの間無言になると、意を決したかのようにゆっくりと顔をあげて、
「だったら、俺の『答え』は1つです」
と、真っ直ぐギルバートを見てそう言った。
「ほほう、ならば聞かせてもらおうか、お前の『答え』を」
「はい、それは……」
そして、春風はギルバートや仲間達の前で、自身の「考え」を話した。
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