306 / 608
第11章 断罪官の逆襲
第277話 決戦、断罪官10 アデルチームvsダリア4
しおりを挟むフィオナの言葉によって正気に戻ったルーシーが、再びダリアへの戦意を持ち始めたのと同じ頃、服を着終わったダリアも、
「む、どうやら話は終わったようだな」
と、こちらも戦う準備をしていた。
その後、ルーシーの様子を見てホッと胸を撫で下ろしたアデル、ケイト、クレイグも、ルーシーとフィオナに合流し、陣形を整えると、ダリアを見てそれぞれ武器を構えた。
そして、両者がお互い睨み合うと、最初に動いたのは、
「み、みんな、いくよ!」
ルーシーだった。
ルーシーは静かに両目を閉じて、まるで神に祈るかのように両手を合わせると、「呪術師」の力を発動した。
使った力は、闇の力を秘めた「呪い」ではなく、それとは真逆の、光の力を秘めた「呪い」だった。
次の瞬間、アデル達の体を、黄金色に輝くオーラのようなものが包んだ。
(っ! これは、まずい!)
と、彼らの様子に危険なものを感じたダリアは、自身の武器である6本の小型剣を構えると、すぐにアデル達に向かって突撃しようとした。
しかし、
「無駄だっ!」
「何!?」
それよりも早く、アデルとクレイグがダリアのすぐ側まで来ていたのだ。
2人はダリアに向かって武器を振り下ろした。
ダリアはそれを受け止めようとしたが、その時、
(駄目だ、これは避けなくては!)
という考えが頭をよぎった為、ダリアは受け止めずにその場を飛び退いた。
すると、振り下ろされた2人の攻撃によって、地面に大きな穴があいた。
ダリアは避けて良かったと安堵したが、着地した瞬間、そこへケイトが放った何本もの矢が迫ってきたので、ダリアはすぐに真横に転がってその矢を避けた。
ターゲットを失った矢が矢が地面に突き刺さった瞬間、大きな音と共に爆発した。
(これは、一体……そうか!)
その時、ダリアはルーシーを見て、彼女が何をやったのかを理解した。
そう、ルーシーがやったのは、味方のあらゆる能力を強化する「呪い」だったのだ。
そうとわかると、ダリアはすぐに、
「ハァアッ!」
と、魔力で自身を強化すると、ルーシー目掛けて突進した。
そして、右手の3本の小型剣でルーシーを貫こうとした、まさにその時、
「フンッ!」
と、素早くルーシーの前に立ったクレイグが、大剣を盾代わりにしてその一撃を防いだ。
「チィッ!」
すかさず、ダリアは左手の3本の小型剣を振るったが、こちらもクレイグがその腕を掴んで防いだ。
「くっ!」
腕を掴まれたダリアはどうにかその場を逃れようとしたが、クレイグはその手を離さなかった。
次の瞬間、
「ここだぁ!」
と、アデルがダリアの懐に飛び込んで、彼女の腹部に左手を向けると、
「求めるは“火”、『ファイア』!」
と、唱えた。
「何!?」
ダリアが驚いた次の瞬間、アデルの左手にはめられた指輪の宝石が赤く輝き、そこから赤い魔法陣が展開して、更にその魔法陣から放たれた火属性魔術「ファイア」が、ダリアに直撃した。因みに、その時既にクレイグは手を離していた。
「グアアッ! ば、馬鹿な、火の魔術だとぉ!?」
それまで剣で戦っていたアデルが魔術を使ったことに、ダリアは驚きが隠せなかった。
そんな彼女に向かって、アデルは言う。
「どうだ、ハルのアニキが作った魔術の威力は!」
何故アデルが火の魔術を使えたのか?
実は春風の訓練を受けてしばらくした頃、
「それじゃあみんな、こいつは俺からのプレゼントだ」
と、春風に魔術が込められた指輪をプレゼントされていたのだ。当然、アデルだけではなく、七色の綺羅星メンバー全員にだ。
そして今、その指輪に込められた魔術を使って、ダリアにダメージを与えたのだ。
「グゥ、ま、まだだ! 私は、まだ終わらないぞ!」
思わぬダメージを受けて後ろに下がるも、ダリアは諦めてはいなかった。
だがしかし、
「いや、アンタはもう終わりだ」
と、アデルは勝ち誇ったかのようにニヤリと笑ってそう言った。
その言葉にダリアが「?」を浮かべると、何かの気配を感じてバッと上を向いた。
そこにいたのは、
「「勇者登場ぉおおおおおっ!」」
と叫ぶ鉄雄と詩織だった。
ダリアはすぐにその場を離れようとしたが、
「求めるは“土”、のしかかる重圧、『グラビティ・プレス』!」
という叫びが聞こえたと共に、ダリアの体が重くなった。
(こ、これは、一体!?)
そう思ったダリアがふと声がした方向を向くと、そこには左手を突き出した恵樹がいた。
それを見て、ダリアは恵樹の仕業かと理解したが、それからすぐに鉄雄と詩織の攻撃を受けた。
その後、ダリアから何かが出てきたのを見つけたケイトは、
「あ、あれは!」
と呟くと、素早く彼女に近づいてそれを手に取った。
「ふぅ、やったぜ」
攻撃を受けて意識を失ったダリアを見て、鉄雄が汗を拭う仕草をすると、アデル達を見て、
「ワリィな、美味しいとこもらっちまったぜ」
と、笑ってそう言った。
そんな鉄雄を見て、アデルはというと、
「いや、ナイスタイミングだ」
と、親指を立てた。クレイグとフィオナも一緒にだ。
その後、アデル達のもとに、鉄雄、彩織、恵樹だけでなく、美羽と彩織も合流した。
戦いが終わって、ルーシーがホッと胸を撫で下ろすと、
「ルーシー」
と、ケイトが近づいてきて、
「はい」
と、ルーシーにダリアから出てきたものを差し出した。
「あ、それ……」
それは、ルーシーの母親のペンダントだった。
ルーシーはそのペンダントを受け取ると、そのペンダントの裏側を見た。
そこに刻まれていたのは、3人の人物の名前、即ち……。
ダレン・カーリング。
メラニー・カーリング。
そして、ルーシー・カーリング。
「お父さん。お母さん」
ルーシーはソッとペンダントを抱き寄せると、
「やっと、会えたよぉ」
と、大粒の涙を流した。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
185
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる