ユニーク賢者の異世界大冒険

ハヤテ

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第11章 断罪官の逆襲

第277話 決戦、断罪官10 アデルチームvsダリア4

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 フィオナの言葉によって正気に戻ったルーシーが、再びダリアへの戦意を持ち始めたのと同じ頃、服を着終わったダリアも、

 「む、どうやら話は終わったようだな」

 と、こちらも戦う準備をしていた。

 その後、ルーシーの様子を見てホッと胸を撫で下ろしたアデル、ケイト、クレイグも、ルーシーとフィオナに合流し、陣形を整えると、ダリアを見てそれぞれ武器を構えた。

 そして、両者がお互い睨み合うと、最初に動いたのは、

 「み、みんな、いくよ!」

 ルーシーだった。

 ルーシーは静かに両目を閉じて、まるで神に祈るかのように両手を合わせると、「呪術師」の力を発動した。

 使った力は、闇の力を秘めた「のろい」ではなく、それとは真逆の、光の力を秘めた「まじない」だった。

 次の瞬間、アデル達の体を、黄金色に輝くオーラのようなものが包んだ。

 (っ! これは、まずい!)

 と、彼らの様子に危険なものを感じたダリアは、自身の武器である6本の小型剣を構えると、すぐにアデル達に向かって突撃しようとした。

 しかし、

 「無駄だっ!」

 「何!?」

 それよりも早く、アデルとクレイグがダリアのすぐ側まで来ていたのだ。

 2人はダリアに向かって武器を振り下ろした。

 ダリアはそれを受け止めようとしたが、その時、

 (駄目だ、これは避けなくては!)

 という考えが頭をよぎった為、ダリアは受け止めずにその場を飛び退いた。

 すると、振り下ろされた2人の攻撃によって、地面に大きな穴があいた。

 ダリアは避けて良かったと安堵したが、着地した瞬間、そこへケイトが放った何本もの矢が迫ってきたので、ダリアはすぐに真横に転がってその矢を避けた。

 ターゲットを失った矢が矢が地面に突き刺さった瞬間、大きな音と共に爆発した。

 (これは、一体……そうか!)

 その時、ダリアはルーシーを見て、彼女が何をやったのかを理解した。

 そう、ルーシーがやったのは、味方のあらゆる能力を強化する「まじない」だったのだ。

 そうとわかると、ダリアはすぐに、

 「ハァアッ!」

 と、魔力で自身を強化すると、ルーシー目掛けて突進した。

 そして、右手の3本の小型剣でルーシーを貫こうとした、まさにその時、

 「フンッ!」

 と、素早くルーシーの前に立ったクレイグが、大剣を盾代わりにしてその一撃を防いだ。

 「チィッ!」

 すかさず、ダリアは左手の3本の小型剣を振るったが、こちらもクレイグがその腕を掴んで防いだ。

 「くっ!」

 腕を掴まれたダリアはどうにかその場を逃れようとしたが、クレイグはその手を離さなかった。

 次の瞬間、

 「だぁ!」

 と、アデルがダリアの懐に飛び込んで、彼女の腹部に左手を向けると、

 「求めるは“火”、『ファイア』!」

 と、唱えた。

 「何!?」

 ダリアが驚いた次の瞬間、アデルの左手にはめられた指輪の宝石が赤く輝き、そこから赤い魔法陣が展開して、更にその魔法陣から放たれた火属性魔術「ファイア」が、ダリアに直撃した。因みに、その時既にクレイグは手を離していた。

 「グアアッ! ば、馬鹿な、火の魔術だとぉ!?」

 それまで剣で戦っていたアデルが魔術を使ったことに、ダリアは驚きが隠せなかった。

 そんな彼女に向かって、アデルは言う。

 「どうだ、ハルのアニキが作った魔術の威力は!」

 何故アデルが火の魔術を使えたのか?

 実は春風の訓練を受けてしばらくした頃、

 「それじゃあみんな、こいつは俺からのプレゼントだ」

 と、春風に魔術が込められた指輪をプレゼントされていたのだ。当然、アデルだけではなく、七色の綺羅星メンバー全員にだ。

 そして今、その指輪に込められた魔術を使って、ダリアにダメージを与えたのだ。

 「グゥ、ま、まだだ! 私は、まだ終わらないぞ!」

 思わぬダメージを受けて後ろに下がるも、ダリアは諦めてはいなかった。

 だがしかし、

 「いや、アンタはもうだ」

 と、アデルは勝ち誇ったかのようにニヤリと笑ってそう言った。

 その言葉にダリアが「?」を浮かべると、何かの気配を感じてバッと上を向いた。

 そこにいたのは、

 「「勇者登場ぉおおおおおっ!」」

 と叫ぶ鉄雄と詩織だった。

 ダリアはすぐにその場を離れようとしたが、

 「求めるは“土”、のしかかる重圧、『グラビティ・プレス』!」

 という叫びが聞こえたと共に、ダリアの体が重くなった。

 (こ、これは、一体!?)

 そう思ったダリアがふと声がした方向を向くと、そこには左手を突き出した恵樹がいた。

 それを見て、ダリアは恵樹の仕業かと理解したが、それからすぐに鉄雄と詩織の攻撃を受けた。
 
 その後、ダリアから何かが出てきたのを見つけたケイトは、

 「あ、あれは!」

 と呟くと、素早く彼女に近づいてそれを手に取った。

 「ふぅ、やったぜ」

 攻撃を受けて意識を失ったダリアを見て、鉄雄が汗を拭う仕草をすると、アデル達を見て、

 「ワリィな、美味しいとこもらっちまったぜ」

 と、笑ってそう言った。

 そんな鉄雄を見て、アデルはというと、

 「いや、ナイスタイミングだ」

 と、親指を立てた。クレイグとフィオナも一緒にだ。

 その後、アデル達のもとに、鉄雄、彩織、恵樹だけでなく、美羽と彩織も合流した。

 戦いが終わって、ルーシーがホッと胸を撫で下ろすと、 

 「ルーシー」

 と、ケイトが近づいてきて、

 「はい」

 と、ルーシーにダリアから出てきたものを差し出した。

 「あ、それ……」

 それは、ルーシーの母親のペンダントだった。

 ルーシーはそのペンダントを受け取ると、そのペンダントの裏側を見た。

 そこに刻まれていたのは、3人の人物の名前、即ち……。

 ダレン・カーリング。

 メラニー・カーリング。

 そして、ルーシー・カーリング。

 「お父さん。お母さん」

 ルーシーはソッとペンダントを抱き寄せると、

 「やっと、会えたよぉ」

 と、大粒の涙を流した。
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