ユニーク賢者の異世界大冒険

ハヤテ

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第11章 断罪官の逆襲

第275話 決戦、断罪官8 アデルチームvsダリア2

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 「……え? な、何を、言ってるの、ですか?」

 ダリアが言った、「自分がルーシーの両親を殺した」という言葉の意味を、ルーシーは理解出来ないでいた。そしてそれは、側にいるフィオナやアデル達も同様だった。

 「わ、私は、お父さんと、お母さんに、捨てられたんじゃ……?」

 震えた声でそう言ったルーシーを見て、ダリアは口を開く。

 「『捨てられた』、か。その様子では、君は何も覚えていないようだな」

 と、冷静な口調でそう言うと、

 「お、おいアンタ、さっきから何を言ってるんだ!? ルーシーの何を知ってるっていうんだ!?」

 と、アデルが苛立った口調で言った。

 ダリアはそんなアデルをチラリと見た後、再びルーシーに向き直り、彼女を指差して落ち着いた態度を崩さずに答える。

 「そこにいる少女は10年前、私が殺す筈だった『異端者』だ」

 『!?』

 驚くルーシー達をよそに、ダリアは静かに説明を始める。

 「10年前、私達第2小隊は異端者討伐の任を受けて、辺境のとある村を訪れた。そして、いつものようにその異端者に関わりのある村人達を全員抹殺したが、肝心の異端者は両親と共に逃げ出した後だった。私は小隊の隊員達を残し、1人逃げた異端者達を追いかけたが、両親によって阻まれたうえにダメージまで負わされて、結局異端者だけは見つけることが出来なかった」

 そう説明すると、ダリアは身に纏っていた黒い胸鎧を外し、着ていた服を脱いだ。

 鍛え抜かれた上半身、その右の脇腹には、明らかに刃物で刺されたかのような刺し傷があった。

 「これが、君の母親につけられた傷だ」

 傷を触りながらそう言ったダリアに、ルーシーが口を開く。

 「ま、まさか、その、異端者が……」

 「そうだ、君だよルーシー・カーリング。君の両親は、君を守る為に私に戦いを挑み、そして私に殺されたんだ。『命にかえても、娘に手出しはさせない』。それが、2人の最後の言葉だったよ。このペンダントは、その時の戦利品だ」

 ダリアが言い終えたその瞬間、ルーシーはとある「記憶」を思い出した。

 (そ、そうだ。『あの日』は、確か……)

 それは、自分がと思い込んだ、「あの日」の記憶だった。

 10年前のあの日、両親から「使うな」と言われていたにも関わらず、いじめっ子から身を守る為に「呪術師」の力を使ってしまった。

 その後、村の外から来た黒い鎧を纏った集団(後にそれが断罪官である事を知った)によって、村人達は皆殺しにされた。

 一方ルーシー自身はというと、両親と共に村の外へと逃げ出した。

 しかし、途中追手の気配を感じた父親が、

 「ここで食い止める! 2人は先に行け!」

 と言うと、母親とルーシーを先に行かせて父親はその場に残った。

 そして、森の中にある廃屋まで着くと、

 「ルーシー、あなたはここにいて! 大丈夫、お母さんがルーシーを守ってあげるからね!」

 その後、「愛してる」と言うと、母親はルーシーをその廃屋に残して、1人来た道を戻った。

 それからルーシーは両親が来るのをずっと待っていたが、どれだけ待っても2人が来ることはなかった。その瞬間、幼い子供だったルーシーは、

 (ああ、そうか。きっと私は捨てられたんだ。お父さんとお母さんの言いつけを守らなかったから)

 という結論に至った。

 更にその後、孤独と空腹と寒さで死にそうになったその時、旅をしていたアイザックに出会い、以降は彼の孫として共に行動するようになったのだ。

 「お、お父さんと……」
 
 「?」

 「お、お父さんと、お母さんを、ほ、本当に、こ、殺したの?」

 全てを思い出したルーシーは、震えた声でダリアにそう尋ねると、

 「ああ、殺した。そして、その後は死体も残らないようにその場で燃やしたりもした」

 と、ダリアは落ち着いた態度と口調を崩さずにそう答えた。

 「っ! アンタ!」
 
 「このぉ……!」

 「……っ!」

 「酷い」

 その言葉を聞いて、アデル、ケイト、クレイグ、フィオナが怒りをあらわにしたその時、

 「……許さない」

 ルーシーの中で、何かが切れた。

 すると、ルーシーの体全体から、どす黒いオーラのようなものが溢れた。

 それを見て、

 「だ、駄目だルーシー! よせぇ!」

 「ルーシー、その力は使っちゃ駄目ぇ!」

 と、アデルとケイトはルーシーに向かってそう叫んだ。少し前に春風から聞いた、「裏スキル」を使う気だと感じたからだ。

 「裏スキル、ふん……」

 そして、裏スキル[憤怒]を発動しようとした、まさにその時、

 「ちょっと待てぇえええええいっ!」

 という叫びと共に、スパァアンという何やら場違いな音が、ルーシーを中心に響き渡った。
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