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第11章 断罪官の逆襲
第264話 ルイーズ達への「罰」
しおりを挟む「え? ルイーズさん達への、罰?」
春風が言った言葉の意味を、歩夢は理解出来なかった。
それについてはリアナも同様だったが、
「……」
イブリーヌだけは、その意味を理解出来ていた。
そんな彼女達を前に、
(ま、そう反応するのは仕方ないよな)
と、心の中でそう呟いた。
それは、遡ること数日前、煌良達との戦いが終わってから暫く経った後、帝城内にある執務室にて、ギルバートと2人きりの時の事だった。
「……ギルバート陛下、今何と仰いました?」
「いや、だから、お前を暗殺しに来た連中へ与える『罰』を考えてほしいって言ったんだが」
ギルバートの言葉を聞いて、春風は一瞬倒れそうになったが、すぐに持ち直して、
「ちょ、ちょっと待ってください、どうして俺がそんなことを!?」
と大慌てで尋ねた。
それに対して、ギルバートは真面目な表情で答える。
「そりゃあお前がこの一件の『被害者』だからさ。なにせ殺されそうになったんだし」
「そ、それはそうですが、俺は今こうして生きてる訳ですし、殺されそうにになった件につきましては別に怒ってはいませんし……」
「ほう、何故そう言える?」
「……ルイーズさん達があんなことをした原因は、俺にありますから」
「それは、彼女達の親族をぶちのめしたことか?」
ギルバートのその問いに、春風はコクリと頷いた。
するとギルバートは、机の引き出しを開けると、そこから「あるもの」を取り出して、机の上に置いた。それは、掌サイズの小さな箱で、中央に水晶のようなものが嵌め込まれていた。
「何ですか、それは?」
春風がそう尋ねると、ギルバートはその小さな箱に自身の魔力を流した。
次の瞬間、中央の水晶のようなものが光り出し、そこから「とある映像」が映し出された。
「あ、これって……」
その「映像」を見た春風に、ギルバートは告げる。
「そうだ、勇者召喚が行われた、『あの日』の映像だ」
「あ、あの日の……」
春風は冷や汗を流しながら、その「映像」を見続けた。
そう、召喚が実行されてから、春風がこの世界に降り立って、ウィルフレッドから事情を聞き、その後質問して、ブチ切れて、騎士と魔術師達を相手に暴れて、最後はリアナと共に王城を飛び出した、「あの日」の映像を。
黙って見続ける春風に向かって、ギルバートが口を開く。
「こいつを見る限りじゃあ、お前にはなんの非がないことが手に取るようにわかるぜ。お前はあの日、この世界の事情を知って尚、ハッキリと自分の意思を伝えた。それも、国王相手にだ」
「……」
「なのに、騎士の連中はそんなお前に剣を向けた。本来騎士の剣は、『王』と『民』を守る為のものだ。それを、ひでぇこと言われたからといって、自分達の都合に巻き込んだお前達『異世界人』に向けたんだ。まぁ、連中を止められなかったウィルフにも責任がないとは言えねぇけどな」
「それにつきましては、怒ってはいますけど、同時に『やってしまった』っていう後悔もあります」
「ぶちのめしたことをか?」
「……はい」
「なら、黙って連中に斬られれば良かったのか?」
「そんなこと……!」
「そうだ、そんなことあるわけねぇよな? だってお前には、『故郷を救う』っていう大事な使命があるからな」
その言葉を聞いて、春風は黙って俯いた。
そんな春風を前に、ギルバートはさらに話を続ける。
「断言するぞ春風。お前は、何にも悪くねぇ。今回暗殺されそうになった件だって、言ってみればただの『逆恨み』……いや、もっとタチの悪いものかも知れねぇ」
そう言うと、ギルバートはスッと立ち上がって春風の前に近づき、その両肩をガシッと掴んだ。
「いいか春風。お前はこの俺、ウォーリス帝国皇帝、ギルバート・アーチボルト・ウォーリスが、心の底から『欲しい』と思わせた男だ。そんなお前を、よりにもよってこの俺が住む帝城内で殺そうとしやがった。お前が連中をどう思っても、この俺が許さねぇ。俺だけじゃなく、俺の『家族』もだ」
「へ、陛下……」
「なぁ春風。俺達は許さねぇが、お前は、連中をどうする? お前なら、どうしたいんだ?」
真剣な眼差しを向けながらそう尋ねるギルバートに、
「お、俺……俺は……」
春風はそれ以上、何も答えることが出来なかった。
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