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第10章 動き出した五神教会
第257話 モーゼス、哀れ
しおりを挟む「な、何だ!? 左腕から変な音が!?」
突然春風の左腕のガントレットから発せられた音に、モーゼス達だけでなく煌良、学、麗生までもが驚いた。
そんな状況の中、春風はそのガントレット、アガートラームMkーⅡから零号【改】を外すと、画面を操作して、
「はい、もしもし」
とその画面に向かって話しかけた。
すると、
「春風、俺達を呼んでくれ」
と、零号【改】から男性の声がしたので、春風はその声に従い、零号【改】を掲げた。
次の瞬間、画面が眩い光を放ち、その後、大きな魔法陣が描かれると、そこからワイシャツとジーンズ姿をした、男性2人に女性が1人の、計3人の男女が現れた。因みに、全員裸足である。
その中の1人、「ワイルドなお兄さん」風の男性が春風に話しかける。
「よ、春風」
それに続くように、残る2人、「気の弱そうなお兄さん」風の男性と、長い銀髪を持つ凛々しい雰囲気をした女性も、春風に軽く挨拶をした。
その挨拶に、春風は応える。
「お久しぶりです、ゼウス様、アレス様、アルテミス様」
そう、この場に現れたのは、地球の神であるゼウス、アレス、アルテミスだった。その後、春風は仲間達とギルバートら皇族達、そして煌良、学、麗生の3人に、ゼウス達を紹介した。当然、モーゼス達にも紹介した。
まさかの地球の神様の登場に、モーゼスやラルフ、信者と騎士達だけじゃなく、煌良達もポカンと口を開けていた。
そんな中、
「さて、挨拶はこのくらいにして……」
と、ゼウスはそう言うと、モーゼスの方を向いて、
「オイ、モーゼス・ビショップ」
と、恐ろしく低い声でモーゼスの名を呼んだ。
モーゼスは「ひっ!」と小さい悲鳴をあげると、
「誰が、『悪しき存在と同じ』、『殺した方がいい』だって?」
と、ゼウスは先ほど以上の低い声でそう尋ねた。
そのセリフに、強い「怒り」を感じたのか、側にいた春風と春風の仲間達は勿論、ギルバートら皇族達やモーゼス達もビクッと震えた。
だが、
「こ、これは幻、幻だ! み、皆さん、騙されてはいけません!」
と、モーゼスは必死に目の前にいるゼウス達を「幻」だと言い張った。そこには、「絶対に認めたくない」という醜い悪あがきの様なものを、その場にいる誰もがそう感じた。
しかしそんなモーゼスを見て、ゼウスら3柱の神々は「ハァ」と溜め息を吐くと、
「じゃ、コレならどうかな?」
と言って、ゼウスは指をパチンと鳴らした。
すると次の瞬間、辺り一面何もない真っ白な空間が広がった。
(あ、ここってもしかして……)
「え、何!? 急に景色が変わった!?」
突然の事に春風のみを除いた全員が驚いて辺りをキョロキョロと見回すと、上空に1人、また1人と、ゼウス達と同じワイシャツとジーンズ姿の男女が現れた。その数は、数百を軽く超えていて、その全員が自分達、特にモーゼスをジッと見下ろしていた。
因みに、彼らもゼウス達と同じく全員裸足だった。
その瞬間、春風仲間達やモーゼス達は、彼らも地球の神々である事を理解した。
そしてモーゼスもまた、彼らが本当に「神」である事を、今更ながら理解して、その場にペタンと腰を抜かした。
「さてモーゼス・ビショップ。もう一度問うぞ」
そんなモーゼスを見て、ゼウスは尋ねる。
「だ、れ、が、『悪しき存在』だって?」
そう尋ねた瞬間、ゼウスをはじめとする地球の神々は、一斉にモーゼスをギロリと睨んだ。
その後、神々に睨まれたモーゼスは、
「ヒィイヤァアアアアアアアッ!」
と、悲鳴をあげて泡を吹き、失禁して、失神した。
ゼウスはそれを見て「フッ」と鼻で笑うと、再びパチンと指を鳴らして、元の帝城前の景色に戻した。
(あ、元の場所に戻った)
と、全員がホッと胸を撫で下ろすと、ゼウスは春風に向かって口を開く。
「じゃあ春風、後はお前に任せた」
「はい、わかりました」
そう返事した春風に、3柱の神々はニコリと笑うと、また零号【改】を介して、元の場所へと帰った。
春風はそれを確認した後、
「さてと、アレ、どうしたものかねぇ」
と、気を失っているモーゼスを見て、ポリポリと頭をかきながらそう呟いた。
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