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第7章 襲来、「邪神の眷属」
第142話 かなり強引な招待と、出発
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*第7章最終話です。
「俺を、手に入れに来た?」
「そうだ。水音からお前の話を聞いて是非我がウォーリス帝国に欲しいと思ってな、丁度ここで邪神の眷属討伐作戦が行われると聞いて、それならついでにウチに招待しようと思ったんだ」
春風の問いに対し、威厳に満ちた態度で答えるギルバート。
しかし、その時春風の脳裏に、ある疑問が浮かび上がった。
「……何故、俺がここにいるとわかったのですか?」
ギルバートはチラリと視線をリアナに向けて答える。
「簡単な事さ。お前をセイクリアから連れ出したのがそこにいるお嬢ちゃんだって報告が入ってな、それで一緒にお嬢ちゃんについても調べたのさ、お嬢ちゃんがこのシャーサルを拠点に活動している事をな。それで、活動するならここしかないなって事はすぐにわかったってわけさ」
そう答えたギルバートを、リアナはキッと睨みながら身構えた。
その後、ギルバートは視線を春風に戻す。
「まぁ、それはさておき、お前の戦いぶりは実に見事だった。戦いだけじゃねぇ、心の折れた勇者達を奮い立たせたお前のセリフも、男達の心を一つにした叫びも素晴らしかった。そんなスゲェお前を、俺はますます欲しくなった。だから、お前を我がウォーリスに招待したい。おわかり?」
「それは……」
春風が答えようとした、まさにその時、
「ふざけないで! そんなの駄目に決まってるでしょ!?」
と、怒ったリアナが春風の左腕に抱きついてそう叫んだ。
「お!?」とちょっと驚いたギルバートに、リアナは更に叫び続ける。
「ハルは私達『七色の綺羅星』のリーダーなんです! 幾ら皇帝陛下だからといって、『はいそうですか』と行かせるわけないでしょ!」
ギルバートを睨みながらそう叫ぶリアナを見て、
「うん、そうだね」
と、歩夢が春風の側に近づき、ギュッと右腕に抱きついた。
「私も、フーちゃんを行かせるのは、反対です」
と、リアナと同じ様にギルバートを睨みながらそう言った歩夢。
そんな彼女に続く様に、アデル達レギオンメンバーや鉄雄ら勇者達も、春風の周りに集まってきた。
「おー、こりゃスゲェな」
ギルバートはわざとらしく驚いた表情でそう言ったが、
「ま、想定内だけどな」
と、ニヤリと笑ってそう呟いた。
その時、シャーサル方から何かが近づいてきた。
それは、ウォーリス帝国の紋章が描かれた数台の馬車だった。
そして、その先頭の馬車を引いていたのは、
「え? サイラスさん?」
そう、従者のサイラス・グルーバーだった。
「よう、グッドタイミングだったぞ!」
と、サイラスにそう話しかけたギルバートに向かって、
「お待たせしました、父上」
と、サイラスは答えた。
春風達は全員、『へ?』と間の抜けた声を漏らすと、サイラスは自身の首に手を当てて何か呪文の様なものを唱えた。
すると、ギルバートと同じ様にサイラスも光に包まれた。そして、その光から出てきたのは、
『れ、レイモンド様!?』
そう、そこにいるのは、先程までギルバートが変身していたレイモンドだった。
「改めて、はじめまして。私が本物の、レイモンド・エグバート・ウォーリスです。以後お見知り置き」
まさかの本物の登場に、春風達は開いた口が塞がらなかった。
そんな春風達を無視して、ギルバートは口を開く。
「で、レイ、連れてきたか?」
とギルバートがそう尋ねてきたので、レイモンドは馬車を降りると、馬車の扉を開いた。
その中にいたのは、
「は、ハル君」
「ハル兄さん」
『おねにーちゃーん!』
アリアと妹のフィナ、そしてイアン、ニコラ、マークだった。因みに、ニコラの膝の上には人形になったアイザックもいた。
「あ、アリアさん達!? どうして!?」
驚いた春風に、ギルバートは意地の悪そうな笑みを浮かべて言う。
「コイツらもウォーリスに連れて行くから」
「ハァ!?」
「それと……」
そう言って、ギルバートが指をパチンと鳴らすと、
「キャッ!」
「うわ、なんだ!?」
「は、離して!」
なんと、それまで戦っていたウォーリス帝国の騎士達が、一斉にリアナ達レギオンメンバー全員を取り押さえ出したのだ。
「み、みんな!」
「ソイツらも一緒だからな。それなら文句はないだろ?」
突然の事に困惑する春風に、ギルバートは意地の悪そうな笑みのまま言った。
「ギルバート陛下! こうまでして彼を手に入れたいのですか!?」
あまりの出来事に、怒ったイブリーヌはギルバートにそう怒鳴ると、彼は悪びれもせずに答える。
「勿論だよイブリん、俺が『強欲』なのは知ってるだろ?」
「その呼び方やめてください!」
ギルバートにニックネームの様な名で呼ばれてさらに怒るイブリーヌ。しかし、ギルバートはそんな彼女を無視して春風の方に向くと、
「で、どうする幸村春風? 一緒に来てくれるか?」
と、やはり意地の悪そうな笑みでそう尋ねてきたので、
「……わかりました。行きます」
と、春風は観念した様子でそう答えた。
「よっしゃ! じゃ、行こうか!」
春風の答えに喜んだギルバートは、レイモンドが引いてた馬車とは別の馬車に春風を乗せると、自身も一緒になって乗ろうとした。
だが、
「待ってください! だったら、わたくしも一緒に連れて行きなさい!」
と、イブリーヌが待ったをかけてきたので、
「お、良いよ。じゃ、一緒に行こう!」
と、あっさりギルバートはイブリーヌも馬車に乗せた。
すると、
「あ、イブリんだけじゃなぁ。うーん、あと1人連れてくか」
と、思い立った様にギルバートがそう言ったので、
「ならば、私が行きましょう」
と、ディックが「ハイ」と手をあげた。
「よし、じゃあお前で決まり。他はいいや」
と言うと、ディックも一緒に乗せた。
その後、リアナ達もそれぞれ別々の馬車に乗せると、
「それじゃあ、ウォーリス帝国に向けて、出発だ!」
と叫び、ギルバートも漸く馬車の中に入ると、そのまま宣言通りウォーリス帝国に向けて、全ての馬車が出発した。
そしてその場に残されたのは、ハンター達とディックを除いたセイクリア王国の騎士達だけだった。
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どうも、ハヤテです。
というわけで、以上で第7章は終了です。
次回の第8章は、ギルバートに連れられてウォーリス帝国を訪れた春風君達に、一体どのような展開が待ち受けているのか?
彼らの次の活躍に、ご期待ください。
「俺を、手に入れに来た?」
「そうだ。水音からお前の話を聞いて是非我がウォーリス帝国に欲しいと思ってな、丁度ここで邪神の眷属討伐作戦が行われると聞いて、それならついでにウチに招待しようと思ったんだ」
春風の問いに対し、威厳に満ちた態度で答えるギルバート。
しかし、その時春風の脳裏に、ある疑問が浮かび上がった。
「……何故、俺がここにいるとわかったのですか?」
ギルバートはチラリと視線をリアナに向けて答える。
「簡単な事さ。お前をセイクリアから連れ出したのがそこにいるお嬢ちゃんだって報告が入ってな、それで一緒にお嬢ちゃんについても調べたのさ、お嬢ちゃんがこのシャーサルを拠点に活動している事をな。それで、活動するならここしかないなって事はすぐにわかったってわけさ」
そう答えたギルバートを、リアナはキッと睨みながら身構えた。
その後、ギルバートは視線を春風に戻す。
「まぁ、それはさておき、お前の戦いぶりは実に見事だった。戦いだけじゃねぇ、心の折れた勇者達を奮い立たせたお前のセリフも、男達の心を一つにした叫びも素晴らしかった。そんなスゲェお前を、俺はますます欲しくなった。だから、お前を我がウォーリスに招待したい。おわかり?」
「それは……」
春風が答えようとした、まさにその時、
「ふざけないで! そんなの駄目に決まってるでしょ!?」
と、怒ったリアナが春風の左腕に抱きついてそう叫んだ。
「お!?」とちょっと驚いたギルバートに、リアナは更に叫び続ける。
「ハルは私達『七色の綺羅星』のリーダーなんです! 幾ら皇帝陛下だからといって、『はいそうですか』と行かせるわけないでしょ!」
ギルバートを睨みながらそう叫ぶリアナを見て、
「うん、そうだね」
と、歩夢が春風の側に近づき、ギュッと右腕に抱きついた。
「私も、フーちゃんを行かせるのは、反対です」
と、リアナと同じ様にギルバートを睨みながらそう言った歩夢。
そんな彼女に続く様に、アデル達レギオンメンバーや鉄雄ら勇者達も、春風の周りに集まってきた。
「おー、こりゃスゲェな」
ギルバートはわざとらしく驚いた表情でそう言ったが、
「ま、想定内だけどな」
と、ニヤリと笑ってそう呟いた。
その時、シャーサル方から何かが近づいてきた。
それは、ウォーリス帝国の紋章が描かれた数台の馬車だった。
そして、その先頭の馬車を引いていたのは、
「え? サイラスさん?」
そう、従者のサイラス・グルーバーだった。
「よう、グッドタイミングだったぞ!」
と、サイラスにそう話しかけたギルバートに向かって、
「お待たせしました、父上」
と、サイラスは答えた。
春風達は全員、『へ?』と間の抜けた声を漏らすと、サイラスは自身の首に手を当てて何か呪文の様なものを唱えた。
すると、ギルバートと同じ様にサイラスも光に包まれた。そして、その光から出てきたのは、
『れ、レイモンド様!?』
そう、そこにいるのは、先程までギルバートが変身していたレイモンドだった。
「改めて、はじめまして。私が本物の、レイモンド・エグバート・ウォーリスです。以後お見知り置き」
まさかの本物の登場に、春風達は開いた口が塞がらなかった。
そんな春風達を無視して、ギルバートは口を開く。
「で、レイ、連れてきたか?」
とギルバートがそう尋ねてきたので、レイモンドは馬車を降りると、馬車の扉を開いた。
その中にいたのは、
「は、ハル君」
「ハル兄さん」
『おねにーちゃーん!』
アリアと妹のフィナ、そしてイアン、ニコラ、マークだった。因みに、ニコラの膝の上には人形になったアイザックもいた。
「あ、アリアさん達!? どうして!?」
驚いた春風に、ギルバートは意地の悪そうな笑みを浮かべて言う。
「コイツらもウォーリスに連れて行くから」
「ハァ!?」
「それと……」
そう言って、ギルバートが指をパチンと鳴らすと、
「キャッ!」
「うわ、なんだ!?」
「は、離して!」
なんと、それまで戦っていたウォーリス帝国の騎士達が、一斉にリアナ達レギオンメンバー全員を取り押さえ出したのだ。
「み、みんな!」
「ソイツらも一緒だからな。それなら文句はないだろ?」
突然の事に困惑する春風に、ギルバートは意地の悪そうな笑みのまま言った。
「ギルバート陛下! こうまでして彼を手に入れたいのですか!?」
あまりの出来事に、怒ったイブリーヌはギルバートにそう怒鳴ると、彼は悪びれもせずに答える。
「勿論だよイブリん、俺が『強欲』なのは知ってるだろ?」
「その呼び方やめてください!」
ギルバートにニックネームの様な名で呼ばれてさらに怒るイブリーヌ。しかし、ギルバートはそんな彼女を無視して春風の方に向くと、
「で、どうする幸村春風? 一緒に来てくれるか?」
と、やはり意地の悪そうな笑みでそう尋ねてきたので、
「……わかりました。行きます」
と、春風は観念した様子でそう答えた。
「よっしゃ! じゃ、行こうか!」
春風の答えに喜んだギルバートは、レイモンドが引いてた馬車とは別の馬車に春風を乗せると、自身も一緒になって乗ろうとした。
だが、
「待ってください! だったら、わたくしも一緒に連れて行きなさい!」
と、イブリーヌが待ったをかけてきたので、
「お、良いよ。じゃ、一緒に行こう!」
と、あっさりギルバートはイブリーヌも馬車に乗せた。
すると、
「あ、イブリんだけじゃなぁ。うーん、あと1人連れてくか」
と、思い立った様にギルバートがそう言ったので、
「ならば、私が行きましょう」
と、ディックが「ハイ」と手をあげた。
「よし、じゃあお前で決まり。他はいいや」
と言うと、ディックも一緒に乗せた。
その後、リアナ達もそれぞれ別々の馬車に乗せると、
「それじゃあ、ウォーリス帝国に向けて、出発だ!」
と叫び、ギルバートも漸く馬車の中に入ると、そのまま宣言通りウォーリス帝国に向けて、全ての馬車が出発した。
そしてその場に残されたのは、ハンター達とディックを除いたセイクリア王国の騎士達だけだった。
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どうも、ハヤテです。
というわけで、以上で第7章は終了です。
次回の第8章は、ギルバートに連れられてウォーリス帝国を訪れた春風君達に、一体どのような展開が待ち受けているのか?
彼らの次の活躍に、ご期待ください。
応援ありがとうございます!
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